小野哲平+早川ユミ展 vol「哲平さんの器」

 

写真・文 田原あゆみ

 

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*vol2は早川ユミさんの記事。来週掲載します*

 

高知県谷相に住む陶芸家小野哲平氏。
谷間は人の住む山里と動物たちの暮らす自然との境目にある。棚田が広がり私がおとずれた7月には蛙たちが大合唱をしていた。
その田園風景を見下ろすように小野家と工房が並んで立つ。後ろは山で、そこから上に住む人はさらに少なくなる静かな場所だ。

 

土を触っている時の哲平さんは穏やかな集中の中にいる。

 

 

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この写真のカップと湯呑みは3年前に購入して、Shoka:でほぼ毎日、多い時には1日に何度も使っているものだ。使うほどにツヤが出て、手に吸い付くような感触と肌の柔らかさが私たちを呼ぶのだろうか。他にも素敵なカップ類はあるのだが、なぜだか気がつくとまた手が勝手に伸びてしまうのだ。
なぜだろう?と、いつも不思議に感じる。

 

この器を作っている哲平さんには本質を求めるまっとうさと、相手の本質を引き出そうとする激しい一面がある人だ。なのでいろいろな人に挑みかかるような会話をして、喧嘩になったり揉めたりすることも時々起こるらしい。彼を慕う人たちは、その噂を耳にしてふふふと笑う。

 

そんな彼は私の数少ない喧嘩の出来る友人の一人だ。詳しくいうと、お互いに抱いていることをちゃんと本音でぶつけ合うことのできる大切な友人の一人だということ。

 

大人になってそんな友人と出会えることは稀なのかもしれない。
そう、私たちは何度かぶつかっている。ただ闇雲に相手を攻撃をし合うということではなく、お互いが話し合いや相談をしている時に違和感を感じた事柄があったら、それを伝え合う。哲平さんは「それはどういうこと?」とか、「そうじゃなくて、僕はこう思うんだけど」と、目をめらめらと光らせてより本質を掴もうと挑んでくる。ちなみに一番使う言葉は「そうじゃなくて」だ。
その言葉を耳にすると、一瞬否定されたような気持ちになって相手をメラメラと見返し、「じゃあどう思っているんだ?」と火花が散って会話に集中。すると、違う視点から物事が見えて流れが変わることもあるし、彼が気がついていない私の意見が内側からとうとうと湧き出てくることもある。けれど、結局同じようなことを言っていることも多々ある。表現が違うだけだったりする。ははあ、なるほどこれは彼の口癖か、と、最近やっと気がついた。

 

 

きっと私たち二人に共通の性質は「火」なのだろう。窯に火がついた薪をくべられたようになって、自身の考えや思いが明確にあぶりだされるように感じる。だんだんと火が大きくなって、自分でも驚くほど感情と言葉が一緒に燃え上がる。

 

そして、お互いが違いも含めて納得がいくと、すっと平穏がおとずれる。
大体哲平さんはにかっと笑ってお酒をすするか、何かをつまむ。もしくは話題が和やかなところに流れてゆく。

 

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にかっと笑う哲平さんはまるで子供のように無邪気。だからあの激しさも魅力の一つとなって溶けてゆくのだろう。

 

 

そんな血が通っていて、時に熱いやり取りをする時間を重ねていくうちに気がついたことがある。
彼は熱く挑みかかるようなところがあるけれど、相手の熱も受け入れる器があるということ。

 

なんとも深い懐が彼の中にはあるのだった。それはどんな思いで仕事をする人なのかということを知ろうと、対話を重ねた結果分かってきたこと。

 

 

 

優しさはなんでもイエスということではなく、自分の本当の姿を相手に開示し、相手の本当の姿を引き受けることだと今は思う。そう、彼の優しさは暖かく、深い。

 

 

 

 

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ここまできたら気がつく人も多いだろう。
だから彼の作る器は優しいのだ。何を乗せても、その懐が抱き、一緒に過ごす時間を重ねるうちにまるで生きているかのような艶が出る。

 

棚の中に並んでいても、まるで生きているような不思議な生命感があるのだ。なのでいつの間にかそこに手が伸びる。

 

 

 

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旅好きの小野家の食卓にはいろいろな国の食べ物が並ぶ。パスタを載せても、しっくり。
そう、哲平さんの器は毎日の食卓の器。
日常の繰り返しの中で、それをおろそかにできないような存在感がある。

 

 

 

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来客の多い小野家では大皿にどーんと盛り付けて、銘々が取り分けて食べるスタイルがほぼ毎回。奥さんのユミさんが畑から摘んできたバジルやトマトでおおらかなパスタが出来上がり、みんな笑顔でいただきます。

 

 

 

 

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夜はちらし寿司と鰹の皿鉢料理。和・中・洋・アジア料理も家庭料理ならなんでもなぜだかしっくりくる。
ちなみにしつこいので載せないが二日目の夜は手巻き春巻きの夕べ。それもしっくりと食卓に並び、みんなで巻き巻き。不器用な私が作った不恰好な春巻きを思いっきり大きな口を開けてほうばった。

 

 

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このお皿は前回私が個人的に購入して、ほぼ毎日使っているもの。器好きの私のコレクションは多種多様で、このサイズの皿はけっこう多い。が、やはりこの皿ばかりを使ってしまう。
扱いやすく、手にしっくりくる重みと肌。
何を載せても暖かく、そして美味しそうに食べ物を引き立ててくれる。それなのに、じっと器も見てしまう。
解明しても未だに不思議な哲平さんの器には、息づくものが確かにあるのだ。

 

 

今日は気取ってみたい、とか。背筋を伸ばすための特別感を出したい時の器とも違う。けれど哲平さんの器には、日常の食卓に厚みを出すような生命力がある。
今という瞬間が流れ去って行くものではなくて、ちゃんと食べること飲むことにすっと入り込める。おろそかにできないような存在感。言葉にすると暑苦しいけれど、だからこそ無意識に手が伸びるのだと感じている。

 

ああ、哲平さんの器の不思議のことを書いてしまったら、他に何もいうことがない。
彼の存在そのままの器。

 

是非是非一人でも多くの方に触れて欲しい。哲平さんの器は本州では人気であっという間になくなってしまうという。沖縄ではまだ知らない人も多いだろう。
チャンス。
この機会にぜひ彼の器に触れにShoka:までどうぞ。
企画展詳細は以下の通り。

 

小野哲平 + 早川ユミ企画展
「土がある 布がある」
 2017年10月6日(金)~10月15日(日) 12:30~18:00(会期中無休)

 

 

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◉小野哲平 + 早川ユミお話会◉
「ものつくりの根源」

哲平さんは本質的なところに挑んでくるところがある。なので時に私は彼と火花を散らして語り合う。それをユミさんがしょうがないわね、ふふふと、寄り添っているように見せて、じつは自分のことを考えているのだった。そんな三人で本気トークいたします。

 

 

日時:2017年10月7日(土)17:30~19:00(開場17:00)
場所:Shoka: 沖縄市比屋根6-13-6
参加費:無料
申し込み:event@shoka-wind.com まで

 

 

 

※参加者全員 のお名前・連絡先・車の台数をご記入の上お申し込みく ださい。
尚お話に集中していただきたいため、参加者の 年齢は13歳以上とさせていただきます。

 

 
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◉早川ユミチクチクワークショップ◉ 
ちくちくワークショップ 「 つくるわたしへ 」
「ちいさなくらしのたねレシピ」出版記念

 

日時:2017年10月7日(土)10:00~12:30(開場9:30)
場所:Shoka: 沖縄市比屋根6-13-6
制作:たねまきエプロン(たねポケットつき) 持ち物 糸切りばさみ
会費:3800円(エプロンはお持ち帰りいただけます)
申し込み:event@shoka-wind.comまで※参加者全員 のお名前・連絡先・車の台数をご記入の上お申し込みく ださい。

 

 

高知県谷相の人里と自然のちょうど境界線に住んでいる早川ユミさんはいつも少しだけ微笑んで、何か話したそうに口をつんと尖らせている。布作家という肩書きだけれど、エッセイスト、畑人、日本ミツバチの養蜂家でもあるのです。自分の興味のあることにえいやっと飛び込んでどれも楽しげにこなしている。ソフトで可愛らしいボイスで話す、勇猛果敢な探検家。アジアを旅して大好きな布を集めては、一つ一つ手作りの服や雑貨を作っている。そんなユミさんの作る服たちはくらしの中の仕事着。女性のお肚の中の太陽が目覚めるような元気な衣服。今回の企画展にはお洋服の他に彼女が書いた本や、夫である小野哲平氏の旅茶碗を包む布、ちくちくもんぺ種まきエプロンも並びます。彼女の元気がたくさんの人に届きますように。ワークショップも楽しいですよ。
 

 

 

 

 
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オーナー田原あゆみによるエッセイ
「大人読本」がはじまりました
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http://otonadokuhon.jp

 

 

常日頃から人生そのものが旅のようだと感じています。 なのでカテゴリーは大きく分けて「日々」の旅と、ホームを離れる「旅」。 その中に、人との出会いや別れ、選ぶこと手放すこと、仕事、動物や自然との触 れ合いの中で感じること、暮らしの中の愉しみをエッセイ仕立てで発信してゆきます。
ユーモアと笑いを信条に、自称小心者の冒険家の旅を楽しんでいただけたら嬉しいです。始まったばかりのサイトなのでこれからいろいろ変化して行くとは思い ますが、皆さまの生活の潤いになることを願っています。

 

 

 

 

 

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暮らしを楽しむものとこと
Shoka:
http://shoka-wind.com

 

沖縄市比屋根6-13-6
098-932-0791(火曜定休)
営業時間 12:30~18:00