渡辺満里奈/著 新潮文庫 629円(税別)/OMAR BOOKS
―旅のおともに。「食」と「茶」の国台湾―
日に日に陽射しが強くなるこの時期、
そろそろ夏休みの予定が気になる頃。
そこで今回は旅本を一冊。
旅は計画を立てているときが一番楽しい、とはよく言われること。
だからこそ巷にはガイドブックが溢れているけれど、
紹介するのはただ情報が載っているだけのガイドブックではなく、
そのサイド本的な
「満里奈の旅ぶくれ―たわわ台湾―」。
だいぶ前に出た、台湾好きなら一度は通る(とは言いすぎかな)この本、
台湾の観光大使を務めたこともある彼女の旅の記録なので
知っている人も多いはず。
台湾の北から南まで現地の人々と交流を重ねながら食べ歩いた様子を
写真とともにまとめた一冊。
この本を読むときは注意事項が一つ。
絶対に空腹時に読むべからず。
とにかく彼女(とその仲間たち)の食べることに対する執着、
よく言えば情熱に驚かされる。
大人気の小龍包のお店では
細切れにされたたっぷりのしょうがと一緒に小龍包をほおばったり、
極上スープや屋台の焼餅、
具だくさんのお粥、ちまき、おこわ、豆花などなど
ほんと呆れるほど食べる食べる。
気持のいいほどの食べっぷりなのだ。
また中国茶に関する記述も豊富で、
楽しみながらお茶の種類や茶うけのお菓子、
茶藝館の知識に詳しくなれる。
老若男女がお湯がこぽこぽ沸く中、
何杯もお茶を飲みながら静かに語り合う光景が見られる茶藝館。
日本でいえば喫茶店のような存在。
本の中で紹介されている志が高い茶藝館、「紫藤廬」は魅力的。
台湾で一番古い茶藝館で、
日本統治時代に建てられたハイカラな日本建築風のこのお店で、
優雅にお茶するのも乙なもの。
また茶うけでは、「茶梅」と呼ばれる
烏龍茶と砂糖や甘草液で梅をつけて干したものが個人的には好き。
お茶に関してだいぶツボを押さえているので、
旅のお供に持って行ったらけっこう役立った。
私自身、最初は単行本で読んだのだけど
後で文庫に買い替えた。
この片手で持てるコンパクトさがいい。
実際この本が出た後、
これを片手に台湾を旅する女子が多かったらしい。
この本を読むと実際にあの台湾の熱気に触れたように不思議と元気になる。
人と話したり、おいしいものを食べたり、親しい人とお茶を飲むことは生きることの基本。それが見えにくくなっている昨今、
まだしっかりとそれが息づいている国「台湾」の魅力が存分につまった一冊。
ああ、また台湾熱がぶり返しそう。
OMAR BOOKS 川端明美
OMAR BOOKS(オマーブックス)
北中城村島袋309 1F tel.098-933-2585
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駐車場有り
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