ドミニック・ローホー 原秋子・訳 幻冬舎 ¥1,000/OMAR BOOKS
―ただ雨を眺めること―
夏、到来。
西瓜、花火、蝉の声。
夏の風物と言われる中で好きなものに「夏の夕立」ははずせない。
真っ青な空に、じりじりと陽が照りつけ雨の気配など微塵も感じられないときでも、いつのまにか雲が現れ、あっという間に暗くなる。何かが割れるような音がしたかと思うと、地面を叩くようにして大粒の雨が昼間の熱を一気に冷やす。ジューと音が聞こえてきそうだ。足元からは雨とアスファルトの入り混じった匂いが立ち上る。そしてそれも束の間。夕立はさっと現れ、さっと消えていく。
「夕立つ」という日本語の持つ響きの妙。
夏の雨の唐突さがこの言葉一つで言い表わされている。
今回ご紹介する本はフランス人作家によるもの。
古今東西の雨にまつわる詩や俳句を引用しながら人生に重ね合わせ、雨の愉しみ方、味わい方を綴ったエッセイです。
簡単に言ってしまうと「ただ雨を眺めましょう」というのがこの本で著書が伝えたいこと。
自然の雨の降る様を眺めることはイコール、私たち自身の内面を見つめること。「内観」の一つの方法として提案している。
このドミニクさん、日本滞在の経験も長く、文中に引用されているのは松尾芭蕉、小林一茶、永井荷風、正岡子規など日本文化にも造詣が深い。
彼女は禅の思想や道教なども学んでいたことから、彼女の哲学にはその影響も大きく見られる。日本人的な感性が随所に散りばめられ、抵抗感なくとても読みやすいこの本
―巷に降る雨、人生の途中で必ず遭遇する雨、雨を避けては通れない。それならば、いっそのこと雨を好きになってみては?―(帯文より)。
雨の日、ただぼーっと何もせず部屋で過ごすことは怠惰なことではない。
雨音を聞きながら、一人で思いを巡らすことの大切さを見直させてくれる。
晴れているのに降っている。
夏の光の中、きらきら降り注ぐお天気雨のようなことは人生にだってある、そう思わせてくれる味わい深い一冊です。
OMAR BOOKS 川端明美
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