フリオ・ゴヤ展仮面に見つめられ、アルゼンチンを感じる個展


 
壁一面の仮面と、
兼六園の樹木からインスピレーションを受けたというインスタレーション。
 

 



 
「アルゼンチンでは小さな子どもも遊びの一環でよく仮面を作ります。お祭りの時にもよくかぶる、とても身近なもの。」


特にモデルがいるわけではなく、気の向くままに作ったという仮面。
男がいて女がいて、若者がいて年配の人もいる。
色はなく、立体的な切り紙のようなフォルムだが、
ひとつひとつにちゃんと表情がある、
視線は、眼前の「何か」をしっかりと捉えている。
「仮面」といえど、それは人そのもののようでもある。



 

 
十二支の漢字をモチーフにし、リボン状に表現したものと、動物たち。
真鍮(しんちゅう)を腐食させて出した独特の色あいが、
深い海の色のようでもあり、宇宙にぽっかりと浮かぶ地球の色のようでもある。



 
人体をモチーフにした作品も多い。
身体の曲線が美しいフォルムを作り出しているカトラリーと、
ユーモラスな形状のブックエンド。
家に持ち帰れば、お客様に
「これ、面白いわね」
と水を向けられ、きっと会話が弾む。
生活の中に芸術を持ち込めば、そこには必ず対話が生まれる。
芸術はなにも、私たちと縁遠い高尚な存在というわけではないのだと、
手を伸ばせばすぐに触れられる、身近なものなのだと、教えてくれている。



 
シルバーと鮮やかな赤のコントラストも美しいオブジェは、トンボをモチーフに作られたもの


てだこ交流文化センター、浦添市庁舎、国立劇場おきなわ・・・
フリオ・ゴヤ氏のオブジェは県内の様々な施設でも見ることができる。
アルゼンチン生まれの日系二世で、1985年に来沖、移住。
ロダン大賞や美ケ原高原美術館大賞など数々の賞を受賞、
精力的に作品をうみだし続けている。



 

 
大胆なデザインと鮮やかな色彩の版画。
激しさと静けさがせめぎ合うような、
額から外に飛び出してくるような画の持つ勢いに圧倒され、
ハッと目と心を奪われる。


作品が人を表していると、言えるかもしれない。
穏やかなたたずまいと物腰、話す声は優しく、言葉はゆるやか。
しかし、まっすぐに向けられる視線には静かな激しさが秘められている。


身体には沖縄の血を受け継ぎ、アルゼンチンで生まれ育ったフリオ氏の表現する世界は、
国という枠を越え、のびやかに自由に広がり、静かに語りかけてくる。
開催期間中はご本人も在廊、
作品の物語を訊き、感じてみては。

写真・文 中井 雅代

 

フリオ・ゴヤ展
パレットくもじ7階 美術サロン
沖縄県那覇市久茂地1-1-1
098-867-1171
〜1月17日(月)
10:30〜19:30(最終日は17:00まで)
HP:http://ryubo.jp/event/?eid=00229&floor=3