N+(エヌプラス)『裂き編みによる手仕事』素材や編み方の違いから生まれる表情が楽しい小物たち。

裂き編みによる手仕事 ナカソネサチヨ
 
もこもこした見た目が魅力的な編みバッグ。
ふんわり軽やかな手触りかと思いきや、編み目がぎゅっと詰まっていて意外にも堅実な感触。少々重量のあるものを入れても、よれたり伸びたりすることもないほど丈夫なつくりだ。
 
それにしても、普通の編み物ではなく「裂き編み」とは?
 
「ハサミでテープ状に切った布を、かぎ針を使って編んでいくんです。
基本的には手で裂くので『裂き編み』といいますが、私はだいたいハサミで切っています」
 
と、作家のナカソネサチヨさん。
 
裂き編みによる手仕事 ナカソネサチヨ
 
裂き編みによる手仕事 ナカソネサチヨ
 
裂き編みによる手仕事 ナカソネサチヨ
 
一つのバッグを編むのには相当な大きさの布が必要になるため、テープ状にカットするのも一苦労。作業中はストイックにならざるをえないという。
 
「一旦始めちゃうと6時間ぶっ通しでカット、その間1回トイレに行くかな、というくらい。面白いので無心でやっちゃうんです。
わたし、食いしん坊なので普段はすぐお腹が空くんですけど、これをやっているとご飯がいらなくなってしまう。製作中は体重も2kgくらい減っちゃうんですよ。裂き編みを始めるまでは、『何かに夢中になって食事をとるのも忘れる』なんてドラマのセリフで、実際にはあり得ないって思ってましたけど(笑)」
 
布を手で裂かずハサミでカットするようになったのも、使用する布地の多さが関係している。
 
「手で裂いていたときは、あまりの量に繊維が空気中に充満しちゃって。一通り作業が終わってあたりを見回すといろんな色の繊維だらけ。お掃除するのも大変でした」
 
裂き編みによる手仕事 ナカソネサチヨ
 
裂き編みによる手仕事 ナカソネサチヨ
 
サチヨさんが裂き編みを始めたきっかけは、自分の服に合うトートバッグが欲しかったから。
 
「色々と探したのですが見つからなくて。じゃあ自分で作っちゃえーと。
購入した服についてくる共布(ともぬの)がたまっていたので、ちょうどいいとそれを裂いて作りました。
初めてできた作品は今でもかなりお気に入り。周りの人に褒めてもらったのもすごく嬉しかったんです。大人になってから褒められることってなかなかありませんから」
 
生地のほつれのかわいさや素材の違いによって生まれるおもしろい感触はいずれも偶然の産物。一作目のトートを製作した2012年2月以降、その魅力にとりつかれて意欲的に作り続けている。
 
裂き編みによる手仕事 ナカソネサチヨ
 
驚くのは使用されている布地の種類の多さ。
紺、白、グレーの三色に見えるこちらのバッグは、上からキャプラ、コットン、リネン、エステル、二重ガーゼと五種類に分かれており、持ち手はジャージーを使用。
素材にとことんこだわって作られているのだ。
 
「素材によって全然違う表情が出てくるのが、裂き編み作品の魅力だと思います。キュプラだとあたりがやわらかくてほつれ方も可愛い。二重ガーゼは色合いが優しい。どの部分を何の素材で編むかと考えるのも楽しいんです」
 
裂き編みによる手仕事 ナカソネサチヨ
 
裂き編みによる手仕事 ナカソネサ1チヨ
 
「下描きが嫌い」というサチヨさんは、デザインをデッサンすることもなく、作り始めの段階ではどれくらいのサイズでどんな形にするか、ほとんど決めずに作ると言う。
 
「一段目を編んでいるときに『これくらいでいいかな〜』と、気分で幅を決めます。編み進めていくと生地の柄や色によってだんだん模様が浮かび上がってくるので、『わ〜、こんな柄になった〜』って(笑)。自分では意図しない柄が自然と出てくるところが面白いんです。バッグの長さもあらかじめ決めず、作りながら考えます。
 
実は、布をハサミで切るときにもラインは引かないんです。精密にではなく、およそこれくらいという感じでカットします。
でも、たとえテープの幅を均一にカットしたとしても、編むときの力加減で仕上がりはだいぶ変わるんです。今日と昨日でも全然違う、ということも。そういう変化も楽しんでいます」
 

裂き編みによる手仕事 ナカソネサチヨ
「二重ガーゼのタータンチェックの生地だったのですが、編んでいくと…」 
 
裂き編みによる手仕事 ナカソネサチヨ
「斜めのラインが偶然出てきてびっくりしました」
 
ナカソネサチヨ
「バッグや携帯ケースに『トサカ』をつけるのが自分の中で流行ってます(笑)」
 
サチヨさんは裂き編みについて語ると止まらなくなる。作品への愛情がひしひしと伝わってくる。
 
「ここの部分、色合いが素敵でしょう?」
「トサカがマイブーム。すごくかわいくて気に入ってます」
「ほら、触ってみてください。ここはキュプラ、こっちはジャージー。感触が面白くないですか?」
 
と、ご本人が心から作品づくりを楽しんでいるのが伝わってくる。
ニコニコしながらハッピーな気持ちで作られたバッグやコースターは、やはりどれもルンルン鼻歌が聞こえてきそうな、ごきげんなものばかり。
 
裂き編みによる手仕事 ナカソネサ1チヨ
「下の白い部分はコサージュについているリボンと同じ素材なんです。編んだ状態と比べると、布の表情が全然違いますよね」
 
「次はつけ襟とかも編んでみたいですね。実は、最初はトートバッグ以外のものを作る気はなかったのですが、携帯ケースを作って欲しいと依頼されて作ってみたらすごく楽しかったんです。なので、これからは色々なものを裂き編みで作ってみたいと思っています。バッグもアシンメトリーにしたりトサカをつけたりと変化しているので、どんな作品が生まれるか楽しみです」
 

写真・文 中井 雅代

 
裂き編みによる手仕事 ナカソネサチヨ
N+(エヌプラス)
平面から立体的なのもへ新たに生まれる表情を楽しむ、をコンセプトに
そのときどきに生まれ出たアイディアを形にしています。
繰り返される作業から少しずつ変化していくアイテムたちは、偶然性を日常に
プラスし新しい世界を広げてくれます。
遊び心を織り交ぜた材料や色の組み合わせを楽しんで下さい。
 
ブログ http://nplus.notu.org
 

裂き編みによる手仕事
2012.9.15(sat)~10.31(wed)
@LEQUIO
宜野湾市喜友名2-28-23
tel&fax:098-893-5572
open 11:00~20:00
年中無休
駐車場有り 
HP:http://www.lequio-r.com
ブログ:http://lequiojapan.ti-da.net