うつわ+喫茶 BONOHO(ボノホ)「これは何?」 シンプルではないという魅力。無造作で愛らしいスイーツと刺繍。

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果物がごろごろとのったタルト。

 

キウイやリンゴなど大ぶりな素材はだいたい判別がつくが、細かく刻んであるものやフルーツの下に敷かれたものが何なのかははっきりしない。

 

「フルーツあんこの手びねりタルトです。
有機・無農薬農家を営んでいる友人から仕入れた県産無農薬黒豆、ラム酒漬けレーズン、いちじくをペースト状にし、あんこを作ります。それをタルトのベースにし、その上に果物を乗せて焼いているんです。

 

味はもちろん大事ですが、ぱっと見たときに『これ何? 一体何が入ってるの?』って不思議に感じるようなお菓子が好きなんです。
『あ、あれねー!』ってすぐにわかるようなシンプルなものよりも、ちょっと考えちゃうような見た目が私の好み。
ヨーロッパを旅行したとき、市場で見た食べ物のイメージが強いんだと思います。ご飯もお菓子もばっちり準備した素材を使うんじゃなくて、冷蔵庫の中にあったものでぱぱっと作ったような、無造作な雰囲気が素敵だなーと思ったんです」

 

BONOHO の真琴さんが作るスイーツには、卵、乳製品、バターは使われていない。
それだけを聞くと、さっぱりとした食感やヘルシーな味わいを想像するが、食べてみると意外にもこってりとしていて、お菓子然とした食べごたえがあるので驚く。

 

「うちのお菓子は全然あっさり系じゃないんですよ(笑)。
バターは使っていませんが、かわりになたね油はしっかり使っていますし、牛乳のかわりに豆乳を使っているのですが、ヘルシー感が強くなりすぎないようココナッツミルクでコクを出しているんです。
こってりしたお菓子が大好きなので、好物のチョコレートも使っています」

 

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パッションフルーツとコーングリッツのスコーン

 

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手前から、パッションフルーツとレーズンとクルミのケーキ、リンゴとココアのキャラウェイケーキ

 

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卵を使わない理由も独特だ。

 

「別にアレルギーの家族がいるわけじゃないので、最初は卵も使っていました。でも、大量の殻が残飯として出てしまうのが気になって。
卵のかわりにコクを出せる食材を入れれば卵を使う必要はないんだと気づいてから、入れなくなりました。
バナナをほんの少し入れるとコクが出ることに気づいたのが良かったですね」

 

いろんな人に食べてもらいたいからと、卵、バター、乳製品不使用であることを全面的には押し出していない。
とは言え、使用する素材にはこだわり、安全性にも気を配っている。

 

「小麦粉は伊江島産の全粒粉、油はなたね油、豆乳は九州産の無調整豆乳を使用し、砂糖にはヴィフラン社のオーガニックメープルシロップや沖縄県産きび砂糖、北海道産てんさい糖、種子島の洗双糖、カナダ産蜂蜜を使っています。

 

なるべく体に負担をかけないお菓子を作りたいとは思っていますが、一番大事にしたいのはおいしいこと!
だから、チョコレートやクリームチーズを使うことも。
アレルギーをお持ちの方やヴィーガンの方は店頭でお尋ねください」

 

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真琴さんは、陶芸・彫刻家である夫の佐藤尚理(なおみち)さん(関連記事:彫刻と陶芸。ジャンルを超えて、自由な表現を。)とともに2013年2月に BONOHO をオープンさせた。
自宅の一角をギャラリーとして使用しているため、尚理さんの作品を見にきた人にお茶を出したいと考えたのが始まりだった。

 

「最初は matte pan さん(関連記事:麦の味わいそのままに。食事に合わせる、自家製酵母の手ごねパン。)のパンをメインで置こうと思っていたのですが、今は私が焼いているマフィンやスコーン、タルト、クッキーなどの焼き菓子も並んでいます。色んな種類があったほうが、市場のような雰囲気が出るかなと思って」

 

ランチメニューのカレーも好評だ。

 

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「タイ風のグリーンカレーなのですが、ペーストも自分で考案しました。
イタリアンスイートハーブを始め、さまざまなハーブ栽培に取り組んでいらっしゃる大原農園さんから取り寄せたバジルに、レモングラス、パクチー、コブミカン、ニンニク、玉ねぎなどを使って作るんです」

 

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「大原農園さんのバジルは特別。葉っぱが肉厚というか、すごく立派なんですよ。
そして香りが濃厚!
他の素材も南城市や佐敷といった近所の野菜店や農家から調達、その時期に旬を迎えている野菜やハーブを使った食事メニューをお出ししています。
調味料は沖縄県産の塩と自家製の塩麹が中心で、時期になれば島ニンニクも使います」

 

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「最初は毎回自分でペースト作りから行っていたのですが、大量のハーブを使って仕込むので、3~4ヶ月経った時に『このままではこの先続かない…』と。
そのころ、ビンfood (関連記事:「自分たちが食べたいもの・みんなに食べさせたいもの」を追求した、おいしい幸せをビンに詰めて。)ののぞみさんがこのカレーを食べて『おいしい!』と気に入ってくださったので、商品化していただくことにしたんです」

 

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県産ハーブをふんだんに使用したグリーンペーストは、1瓶で4人分。チキンと一緒に炒め、昆布だし、セロリ、人参、玉ねぎとともに煮込めば完成だ。

 

他にもキッシュとサラダのプレートや、トマトと季節野菜のピーナッツ煮込みなど、週替わりでさまざまなメニューが味わえる。

 

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ひよこ豆と季節の野菜を、スパイス・トマト・ピーナッツバターで煮て、クスクスと和える。

 

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クッキー生地に詰めてキッシュに。

 

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コーヒー担当は尚理さん。焙煎器を自作するほどのコーヒー好きで、淹れ方も玄人はだし。

 

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尚理さんの器で食事や飲み物が楽しめるのは、ギャラリーを兼ねた喫茶ならでは。

 

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広々としたテラスで食事を楽しむこともできる。

 

真琴さんが料理好きなのは、幼いころから。
中学生になるとお菓子作りにも夢中になり、部活に励むかたわら焼き菓子も作っていたと言う。

 

「早く難しいのが作りたくて、基本をすっ飛ばしてタルトなんて焼いてました(笑)」

 

沖縄県立芸術大学を卒業後、一般企業に2年ほど勤めたあと、那覇市のイタリアンレストランで働き始めた。

 

「会社という組織の一員として働くよりも、何かを作ることがやっぱり楽しいと感じたんです」

 

2年ほど勤めたころに尚理さんと結婚、約1年のドイツ滞在を経て帰国した後は、南城市のタイ料理レストランに勤めた。

 

「もともとタイ料理は大好きでしたし、タイ人オーナーの作る本格的なタイ料理のファンだったんです。
子どもが生まれるまでそこの厨房で働きました」

 

飲食店での勤務歴が長い真琴さんだが、得意としているのは料理やお菓子作りだけではない。

 

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真琴さんがすべて手作業で作る布小物も好評だ。

 

「渋柿の実を砕いて絞り、発酵させた汁で染める『柿渋染め』の布に刺繍しています。
きっかけは、柿渋染め作家・冨沢恭子さんのバッグの展示会に伺ったこと。
色合いがすごく素敵で一目惚れしました。
もともと洋服を作ることも好きではあるんですが、あまりにも工程が多いし、仕事にするには私には向かない。
でも、刺繍なら楽しく続けられると思ったんです。一旦始めると夢中になって縫い続けちゃうくらい好きなので」

 

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紅型作家・縄トモコさんの作品とのコラボレーションも。

 

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ポケットへの刺繍など、注文も受け付けている。

 

「何かの模様や柄を刺繍で表現するのではなく自由に作っているので、柄の注文はお受けできないのですが…(笑)おまかせのご注文は承っています」

 

真琴さんの料理やスイーツ同様、刺繍の柄が一体なんなのか判別するのは難しい。
でも、見た瞬間に心を奪われる。
いかなる制約も受けない、のびのびとした作風が魅力的だ。

 

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自作のポケットを縫い付けたパンツは、尚理さんの母親が縫い上げ、藍染めを施したもの。「藍も義母が自分で育てているんですよ」

 

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自宅と同じ敷地内にある工房で作られる尚理さんのうつわ。新作もすぐに手にとることができる。

 

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今後は刺繍に力を入れていきたいと真琴さんは言う。

 

「作ることが好きだから、お菓子づくりもご飯作りも楽しい。
でも、布に触っている時間が今はすごく幸せなんです。
実用的な小物だけでなく、タペストリーのように壁に飾るような作品も作りたいですね」

 

本人が好きでやっていることは、こんなに素敵な成果となって実を結ぶのだなぁと、BONOHO に来るといつも感じる。
幸せな心持ちで作っているのだから、見ている私たちに伝わらないわけがない。
技術や経験が必要不可欠であることもまた確かだが、一番大切なのは心に素直に従うことではないだろうか。
そうすることは、簡単そうに見えて実はとても難しい。大人になると、そう感じてしまう。

 

スイーツ、料理、布小物、うつわ。
佐藤夫妻が自身の心に従って作ったモノたちで溢れる BONOHO 。
幸せが詰まった空間だ。

 

写真・文 中井 雅代

 

BONOHO
うつわ+喫茶 BONOHO(ボノホ)
南城市佐敷手登根65番地
0989476441
08068181428
open 土、日のみ(11時〜18時)
close 月〜金

 

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