『 人とつながる表現教室。 』書くことで自分を表現してみよう。心から人とつながるために。

 
山田ズーニー・著  河出書房新社   ¥588/OMAR BOOKS
 
― 小さな石を探し続ける人 ―
 
「希望は身体を動かしながら作っていく。」
 
ある好きな小説家の言葉。
 
今回紹介する『人とつながる表現教室。』(山田ズーニー・著)を読んで、
ずっと前にノートに書き留めて実践しているこの言葉を思い出した。
身体を動かしながら、というところ、
ズーニーさんにとってそれは「書く」ということだった。
 
この一度聞いたら忘れられない名前の山田ズーニーさんは、
表現力・考える力・コミュニケーション力の育成を中心に活躍している文章の専門家。
この本は彼女が「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載していた
「大人の小論文教室」の人気コラムを文庫化したものです。
 
一言で言えば、書くことで自分を表現してみよう、という本。
読むとその内容の深さにびっくり。
 
誰にでも仕事やプライベートにおいて、いい時もあれば悪い時もある。
それはもう避けられない。
潮の満ち引きのようにくり返し訪れる。
それはもうなくならない。
 
なら「悪い時」をどうやり過ごすか?その方法は人それぞれ。
 
そんな時、この本を読むのもまた有効だと思う。
ズーニーさんも彼女なりの方法できつい時期をくぐり抜けてきているから、
その説得力は生半可じゃない。
例えば、長く続けた仕事を辞めたばかりのころの無力感がとてもリアルで痛々しい。
  
この「悪い時」の中にも実はきらきら光る石が転がっていたりする。
それを見つけられるかはその人次第なわけで、
ズーニーさんは膝をついて泥だらけになっても
目をこらしてその小さな光る石を探し出すことの出来る人だ。
 
その根底にあるのは心から人とつながりたい、という気持ち。
この本に限らず、他の作品も含め全てに一貫しているのはそんなシンプルな、
だからこそ大切なもの。
 
彼女の言葉で言うと「理解がほしい」。
じゃあ、その為には?
 
彼女は「書く」ことにした。
書くことで、表現することで孤独な自分を受け入れ、他人とつながろうとしたのだ。
 
この本の中の24のレッスンには
彼女のもがき、苦しみと、それでも手を動かし続けることで作られる喜びと、希望が詰まっている。
  
またこの本が伝えたいのは、どんな形であれ表現に成るんだということ。
それが「書く」こと以外のことでも、
家族においしいご飯を作ることでも、
ただ誰かの話を黙って聞くことでもいい。そう何でも。
 
作品を作るとか、難しいことじゃなくて、
その人らしさというものはどんなところにも滲み出てくるから、
それがもうすでに表現なのです、と。
  
誰かとつながろうともがき続ける私たちを肯定してくれる著者の優しい眼差しにあふれた、心の栄養をたっぷりとチャージ出来る一冊。


OMAR BOOKS 川端明美




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