坂本大三郎・著 リトルモア ¥1,365/OMAR BOOKS
― 現代人が山に入ったら ―
涼しくなって秋の気配が日に日に深まっていく。
お店の窓から見える木々や空の色を見ていると、定点観測のようにそれがよく分かる。
お店では12月に向けて企画展を準備中。テーマは「冬の森」。
そのせいあって今、植物や自然に関する本となると、とりあえず気になったものは手に取るようにしている。そんな中で最近出会ったのがこの本。
『山伏と僕』。これは気になる。
山伏って聞いたことあるけれどどんな人たちなんだろう?
この本の帯を見るとイラストレーターの著者も同じ疑問を持ち、ふと思い立って山伏修行に飛び込んだ体験を記したのが本書。
いつの時代の人たちなのか、実際どんなことをするのか、どこで活動しているのか。疑問はあとからあとから湧いてくる。
そして素人である著者の体当たりの修業を通してそれらの疑問にしっかりと答えてくれる。
こんなとき本ってありがたい。著者がふんどし姿で冷たい水に打たれているのを温かいお茶を飲みながら疑似体験出来るのだから。
冒頭、山形県・羽黒という場所に早朝バスで降りたったところから始まる。
まったく未知の世界に飛び込む心細さが伝わってくる。
前日までいたコンビニや音楽や情報のあふれる都会から離れて、今では少なくなりつつある手付かずの山(自然)の中に入っていくのは勇気がいる。
意を決して入っていった、さあ、その世界は?
あとは読んでのお楽しみ。
古来から伝わる日本文化、神道と仏教の違い(山伏の文化はこれに陰陽道が混じり合って出来た修験道からなる)、自然の荒々しい姿、読みどころはたくさんあるものの、著者の関心は「自然と人々の暮らし」に向かう。
また共感できるのがこの本でも言っているように、行ってちゃんと帰ってくることが大事。秘境などに行って何か異質な体験をした人がときに傲慢になってしまうことがある。すごいものを見た私は偉い、と勘違いをしてしまうことに気を付けなければならないと。だから彼は修行の時期が過ぎるとまた普通の生活に戻っていく。それは正しいと思う。
何かを知るとその後、目に映る世界が豊かになる。
自然と人との関わり方を見直すきっかけになってくれる本。
あらゆる世代に今読まれるべき一冊です。
OMAR BOOKS 川端明美
OMAR BOOKS(オマーブックス)
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駐車場有り
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