柳宗民・著 三品隆司・画 ちくま学芸文庫 1050円/OMAR BOOKS
― ノアザミ、ヨモギ、ヒメジョオン 決して地味なわけじゃない ―
雨の多い季節。
梅雨のこの時期、ちょっとした晴れ間を歩いていると、
道端の瑞々しい草花の生き生きとした姿が目に入るはず。
こんなとき一冊あると便利なのが、
今回ご紹介する柳宗民・著「雑草ノオト」。
この“雑草”ってところが(花じゃなくてね)ポイント。
地味な本だと思うなかれ。
春・夏・秋の60の草花の特性と由来を
園芸家の著者が丁寧に分かりやすい文章で解説してくれる。
その解説にはそれぞれ水彩画の挿絵が挟まれ、
ページをめくる度にその淡い色合いにほっとさせられる。
ナズナ、スミレ、ヘビイチゴ、ノアザミ、ヨモギ、ヒメジョオン。
こうして名前を上げるだけで魅力的な響きに聞こえるのは私だけ?
一般に雑草だと言われている草花に優しい光を当てる著者、柳宗民さんは
民芸で有名な柳宗悦の四男で、
兄はデザイナーの柳宗理(バタフライスツールはどこかで見たことあるはず)。
園芸研究家として活躍した彼のこの本は
ガーデニング人気のせいもあってか根強いロングセラー。
専門的過ぎず、かといって軽すぎない
絶妙なバランスが他の園芸本と一線を画している理由。
そもそも雑草に対するわたしたちのイメージって
はっきり言ってあまりいいものではない。
でもこの本を読むとその厄介者のような雑草が
強く、たくましく、
でも可愛らしさを合わせ持っていることに気付かせてくれる。
またそれぞれ薬効があったり、
その由来(ペンペングサとか)を知るのも面白い。
こういうささやかな、慎ましいものに価値を見いだせる人は
幸せなんじゃないだろうか。
華やかなものに目を奪われがちなわたしたち。
自分の周りを柳さんのように見ることが出来たら、
そうすればもしかしたらもうちょっと幸せになれるかも、
そう思ってしまわせる力がこの本にはある。
またそれが、一見わからないさりげない佇まいなのがいいんだな。
そして、本がこのサイズなのもはずせない。
手にしてみると分かるけれど、文庫ながら適度な重みがある。
確認してみたら普通の文庫と比べて紙が若干厚い(気がする)。
だから、持ち歩いて何度開いても持ちがいい(気がする)。
というわけで、カバンの中に忍ばせて散歩に出かけたくなる。
持っているだけで楽しい気分になってくるから不思議。
個人的にプレゼント本の上位にランクインしているこの本。
ちなみに『雑草ノオト2』も出ていて全2巻。
もちろん一冊でも楽しめます。
初夏を迎える頃には、まぶしい日差しを浴びた草花が、
きっと前よりももっと身近な存在になってあなたの目の前に。
OMAR BOOKS 川端明美
OMAR BOOKS(オマーブックス)
blog:http://omar.exblog.jp