画廊沖縄 インテリアコーディネーター・田原美野生活空間でアートを愉しむスタイルを提案

画廊沖縄
 
「作品を購入しても上手に飾ることができないというお客様の声を耳にするにつけ、お手伝いしたいと思うようになりました。
生活空間でアートを楽しむ人が増えたら良いなという思いもあって」
 
画廊沖縄に10年間勤める田原美野(みの)さんは、ギャラリーでの作品展示に携わってきたが、作品購入者が自宅に作品を設置する際のコーディネートも手伝いたいと、3年前にインテリアコーディネーターの資格を取得した。
 
「生活空間とギャラリーはまったくの別物ですから、ギャラリーにコーディネートするのとはまた別の価値観でのぞみます。
『どこに飾れば良いかわからない』という方でも、ここに飾りたいという思いは誰しも持っています。でも、例えばそこがテレビの上だとちょっと難しいですし、生活動線も考慮しなければなりません。
これまでの経験から、一般のお宅でも『ここに飾ればびしっとはまる』という場所がわりとすぐに特定できるので、飾る場所が決められずにお困りの方のお役にたてるようになり、とても嬉しいです」
 
画廊では展示や販売だけでなく、絵画のレンタルサービスも行っている。
 
「設置する空間やお好みに合うものを何千という作品の中から厳選、作品の魅力が生かされるように設置致します。
作品をコーディネートした空間を喜んでいただくと、『やってきてよかった!』と強く思います」
 

作品設置の際には、インテリアコーディネーターとしての知識だけでなく、幼いころからアートに囲まれて育った経験もいかされている。
美野さんが物心ついた時から父親は画廊オーナー、母・上原美智子さんは染織家として活動していた。 

 
画廊沖縄
 

沖縄で現代アートを扱う老舗、画廊沖縄がオープンしたのは30年前。
美野さんの父で画廊沖縄のオーナー上原誠勇さんは、画家を志した時期もあったが、画塾で学んだあと出版業界の道へ進んだ。
 
「沖縄の作家を紹介する特集記事を担当した際、ギャラリーを開くヒントを得たと父は言っていました。
30年前の沖縄には画廊は殆どありませんでしたし、ビジネスとして成立するという確信もなかったと思います。
でも、父はアートの力を信じていたし、何より好きだったのでしょう。
沖縄の作家を世界へ送り出す一翼を担いたいという気持ちも強いようです。
 
家の中には普通に彫刻や絵が飾られていましたし、私自身も小さい頃は制作することが好きでした。
5歳くらいの時に自分で絵本を作っていたくらいです」
 
しかし小学生のとき、美野さんがその後アート制作を避ける原因となる出来事がおこった。
 
画廊沖縄
 
「学校で『赤瓦の風景』をテーマにスケッチ大会が行われたのですが、私は屋根瓦を赤ではなく様々な色に塗りました。
カラフルな方がいいと思ったし、素敵な作品に仕上がると思ったのです。
でもその絵は誰からも評価されず、大きなショックを受けました。
私の渾身の作品だったからです。
その出来事以降、絵を描くことが怖くなった気がします」
 
その後歴史に興味を持ち、大学卒業後に上海へ留学して歴史学を専攻したが、小さい頃からそばにあったアートへの思いが完全に消えてしまったわけではなかった。
 
「当時は中国アートバブル前夜のようなかんじで、今ほど活気はありませんでしたが、人気の画廊に足繁く通い、画廊主と仲良くなりました。
画一的に統制された中国の社会思想の中で生まれる自由な表現を目の当たりにし、だんだんと興味が湧いたんです。
いつか沖縄の作家の作品展を中国で行えたら、などと考えるようになりました。
もちろん、父の仕事を手伝いたいという気持ちも根底にあったと思います」
 
帰国後、美野さんは画廊を手伝うようになったが、結婚、出産を機に働き方を見直すことになった。
 
画廊沖縄
 
「仕事、育児、家庭の間でいっぱいいっぱいになっていたんですね。
色々と考えるところがあり、1年間だけ勤務時間をフルタイムから13時までに変更してもらうようお願いしました。
夕方まで預かってくれる保育園をやめさせ、14時に帰宅する幼稚園に入園、午後は子どもとしっかり向き合って過ごすことにしたのです。
その1年を経てはっきりしたのは、主婦の仕事はやっぱり立派な仕事であるということ、そして自分はやはり社会と関わっていたいということでした」
 
一生懸命なときこそ、俯瞰して広く見渡すことが大事だと美野さんはいう。
 
「毎日が選択の連続ですから、本当にそれが自分にとっての最善かどうかを見極めなければなりません。
今でも毎日のように迷いますし、何が良いのかという価値観自体も変化しますが、画廊の仕事に10年間携わってきて見えてきたこともたくさんあります。
今はアートに関わる仕事から離れることは考えられないですね。」
 
画廊沖縄
 
 
画廊沖縄
 
「ずっと目指しているのは、生活のなかでアートを楽しみ、豊かに暮らすというスタイルを提案できる人になること。
また、いつか中国でも展示会を行いたいという夢もあります。
でも、『この夢は必ず実現させるぞ〜!』って、こぶしをあげて息巻くような感じではないんです。
昔はそうだったんですよね、だからいつも焦っていました。
仕事以外のことに時間をとられて思うように進めないとジレンマを抱えていましたが、最近はとてもゆるく考えるようになりました。
どんなことでも自分が選んだことだから後悔しない、と。
 
今は自分にとっては種まきの時期。
10〜20年後には子育ての経験が生かされ、いい意味で女性らしいモノの見方、社会との関わりがもてたらいいなと思います」
 
画廊沖縄
場所:「豊里友行展」会場の画廊沖縄
 

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美野さんは幼い頃も今も、両親からアートの道に進むよう言われたことは一度もないと言う。
学生時代や人生の節目にアートから距離を置いたこともあったが、美野さんはその都度、自ら道をたどって戻ってきた。
仕事に対して誇りを持ち、常に上を目指すその姿勢は、強い信念を持ってアートを追求する両親の熱い血を継いでいるからこそなのだろう。
 
ひたむきな美野さんの挑戦は、これからも続いていく。
 
画廊沖縄
画廊沖縄
南風原町神里373
098-888-6117
HP:http://www.galleryokinawa.com