mon chouchou(モンシュシュ)オーダーメイドのケーキ、一口で魅了される焼き菓子。「大事」が伝わるお菓子店。

モンシュシュ

 

「できる範囲のオーダーメイド、と言うのでしょうか。例えば 『トロピカル系のケーキで』とご注文いただいたら『パッションフルーツのムースの上にマンゴーを飾った夏らしいケーキはいかがでしょう?』。誕生日ケーキのご注文で『桃が好き』とうかがったら『生地に紅茶を入れて香りをつけてみましょうか?』 という風に、お客様のご要望をうかがって作り方をご提案することも多いです」

 

ケーキ屋として店を構えているわけではないのに熱烈なファンを数多く持つmon chouchou(モンシュシュ)。やましろあけみさんに目指すお菓子をきくと、

 

「食べたあとに疲れないお菓子」

 

と予想外の答え。思わず「えっ?」ときき返してしまった。

 

「甘いものを食べたあとに胃がもたれたり、やめときゃよかったな〜って思うことありませんか? 私はほっとした感じが続く味わいのお菓子をつくりたいなと思っています。複雑なものよりシンプルなお菓子、お店の味よりもカフェのケーキのような手づくり感のある味が好きです」

 

 

モンシュシュ・パッションフルーツムース

 

モンシュシュ・チーズケーキ

 

mon chouchou をオープンさせて6年。以前はプログラマーとして活動していた。

 

「とにかく忙しくて。
本当は暮らすことにすごく興味があったし、丁寧に暮らしたいと思っているのに余裕がありませんでした。実践できないものだから、せめて見るだけでもと当時は雑誌ばかり買っていましたね。お菓子作りも好きだったのに、そのことも忘れて…」

 

思い返すと、子どものころから料理に興味があった。

 

「両親は自営業で忙しくていたので、調理師免許取得を目指していた叔母の家に、友だちを引き連れてよく遊びに行きました。叔母が作って私たちにふるまってくれたものを、見よう見まねで友だちと一緒に作ってみたりもしていましたね」

 

成人し、プログラマーとして忙しい毎日をすごしながらも、あけみさんはお菓子教室に通い始めるようになった。

 

「仕事をしながら2年間くらい、読谷のお菓子教室で学びました。お菓子づくりはもちろん楽しかったのですが、すぐにはそれを仕事にしようとは思えませんでした。華やかに見えるぶん、内情は厳しいんじゃないだろうか? 自分にできるだろうか?と不安もあって。でも、何か捨てたら得るものもあるかな? と思うようになり、仕事を辞めて通信でお菓子作りを勉強し始めました」

 

モンシュシュ・パイナップルタルト

 

モンシュシュ・ドームケーキ

 

最初は身近なひとたちのためにお菓子を作っていた。

 

「友だちや知人がみんなおいしいと喜んでくれるものだから調子にのっちゃって(笑)。2007年に開業しました」

 

あけみさんのこだわりは「完成したものだけを提供する」こと。

 

「最初お出ししていたのはショートケーキ1種類のみ。
でもそのうち『チョコケーキも食べたいな〜』と言ってくれるひとが出て来て。
試作を続けながら、チョコケーキ、チーズケーキ、焼き菓子…と、徐々に種類を増やしていったんです。当時も今も、レシピはほとんど変わりません。それくらいちゃんと納得できるものが完成してから、商品としてお出しするように心がけています」

 

モンシュシュ

 

モンシュシュ

 

モンシュシュ

 

あけみさんがお菓子をつくる間、作業台が汚れることは殆どない。台の上に何かが落ちた瞬間に、きれいな布巾で素早く拭き取るからだ。作業と作業の合間には、特に汚れていなくてもさっとひと拭き。ステンレスは常に輝きを保っている。

 

また、機具も容器も美しい。普段から丁寧に手入れされていることが一目でわかる、清潔なアイテムたち。それらは洗われるときを待つ必要もなく、使われている最中も輝いている。

 

文句のつけどころが見当たらないキッチンで、あけみさんはてきぱきと動く。粉をふるいにかけたかと思うと、さっとかがんで冷蔵庫から材料を取り出し、いつの間にか握られている泡立器で小気味よい音をたてながら手早く、しかし丁寧にボウルの中身を混ぜる。

 

そんな一連の動作が、ほんの一瞬の躊躇も見せずに行われる。

 

美しい仕事をする人は、使う道具も美しいのだ。

 

「几帳面? そう言われることは多いかもしれません。意識してそういう風にしているところもあると思います。食べた方が損をしたような気持ちにならないようにつくりたいんです。そのためには、ちゃんとすべき部分はちゃんとしたいなって。例えばクッキーに入れているアーモンドはカリッとした食感が失われることのないように、焦がし砂糖でコーティングしてから入れます。そうするとかりかり感が残るから。こうしたほうがおいしいとわかっていることはすべてやるようにしています。わかっているのに、できるのにやらなかったとしたら、きっと罪悪感を感じると思うんです。
食べた方に満足していただくためなら、できることは全部やりたいんです」

 

モンシュシュ クッキー、ビスコッティ

 

モンシュシュでは「お茶の友 定期便」と名付け、申し込みがあった人に月1回、お菓子の詰め合わせを3ヶ月間発送している。

 

「定番のお菓子に季節の素材も取りいれてお作りします。お受け付けする人数に限りはありますが、その名の通り、お客様のティータイムに彩りを添えるお菓子をお届けしたいと思っています」

 

ブログで募集の告知があると、すぐに定員に達してしまうほどの人気だ。

 

「奥様や彼女さんの為に男性から注文があることも。『彼女がずっとインターネットで見ているのを知っていたので、代わりに注文しました』という方がいらして。素敵ですよね。すごくうれしかったのでよく覚えています」

 

モンシュシュ

 

さくさくとした繊細な食感と、京都の濃厚な抹茶の香りに魅了される抹茶のサブレをはじめ、モンシュシュの焼き菓子をひとつつまめば、みんながとりこになる気持ちがすぐに理解できる。

 

不思議な感覚なのだが、お菓子を口に入れた瞬間、他のことが考えられなくなる。舌触り、風味、香り…そのすべてを丁寧に味わいたくて。

 

「私はシンプルなお菓子が好きですが、クセのある材料を使ったり、全粒粉やメープルシュガー、ココナッツ、ナッツ類など素材感のあるものを使うのが好き。
注文くださったお客様に、『エネルギーがいっぱい入ってるね』『噛むほどに味わいが出ておいしい』と言っていただいたことがあって、すごく嬉しかったです」

 

モンシュシュ

 

モンシュシュ

 

モンシュシュ・抹茶チーズケーキ

 

モンシュシュ・抹茶チーズケーキ

 

モンシュシュ
冷蔵庫の中はすっきりと整頓されて

 

毎月行うお菓子作りの教室も好評、イベント出店やお茶の友定期便の発送をこなしながら個々のオーダーも受け付け、あけみさんは多忙な毎日を送っている。

 

「つくっているときももちろん楽しいのですが、やっぱりその後が一番の楽しみ。私がつくったケーキや焼き菓子を喜んでいただけると、仕事を詰め込みすぎていたとしても『やって良かった!』と思うので、また詰め込んじゃう(笑)。あまり未来のことは考えず、毎日とにかく一生懸命お菓子をつくりつづけていこうと思っていますが、いつかできる時がいたらお菓子とお茶をたのしめるカフェを開けたらいいなというのが夢です。自分がつくったお菓子を、お客様が目の前でおいしそうに食べていらっしゃるところが見られたらいいなー、幸せだなーって」

 

モンシュシュ
取材中にさっと作ってくれたプラムのドリンク。くらしを大切にしていることが伝わる一杯

 

モンシュシュ・パインタルト

 

モンシュシュ・パイナップルタルト

 

優しい物腰や話し方からおっとりとした第一印象を受けるが、キッチンに立つと一変、話に受け答えしながらも、あけみさんの動きが止まることはない。

 

「普段の私を知っているひとがお菓子作りしているところを見ると、みんな『思ったよりちゃきちゃきしてるんだね』って驚くんですよ(笑)」

 

あけみさんの携帯電話が鳴った。電子音ではない。

 

「おーい、もんしゅしゅ〜、でんわよぉ〜」

 

かわいい甥っ子さんの声が着信を知らせる。

 

「仕事用の電話番号にかかってきたらこの声が流れるように設定しているんです。忙しくてあわてて電話をとらないように、ひと呼吸置いてゆったりした気持ちで出られるように、甥っ子にお願いして録音しました(笑)」

 

気配りの人でもある。電話をかけてきてくれた人のこと、定期便を楽しみにしてくれている人のこと、教室に通ってくれる生徒のこと、今日、自分のケーキで誕生日を祝ってもらう人のこと、モンシュシュに関わる人すべてに、あけみさんは気を配る。

 

「ちゃんと大事にしてるっていうことが伝わるお店が好き。そういうお店にしたいんです」

 

その想いはもうすでに、多くのひとに伝わっている。 

 

モンシュシュ
mon chouchou(モンシュシュ)
中城村(詳しい住所はお問い合わせください) 
090-8661-0696
http://monchouchou.ti-da.net