写真・文/D’spec沢岻 久子
都市部でも育てる可能性を求めて
首里のちいさな畑で
種をまき 育て 土と暮らす
家族のつながりを紡ぎ直し
島の暮らしを つないでいく
育てる楽しみ 実るよろこび
食べる幸せをみんなで分かち合い
その輪が どんどん広がっていきますように
これは「うえのいだ」の玉城さんの名刺にあることば
広がっていきますように・・・
両手を広げて空に放つようなイメージで、じんわり広がる余韻が心地よい。
この手書き文字から見えてくる玉城さんの想い。漢字とひらがなのバランス。ことば選びと余白。間違いなく言い切れるのは、やさしくてあたたかい。
玉城さんと私たちディ・スペックは、大家さんと管理会社という関係。古くなったアパートをリノベーションして「うえのいだ」という名前で再出発したアパートの、入居者募集から管理までをお手伝いしています。
ディ・スペックのサイト「沖縄不動産文庫」では、契約者のその後を取材したページを掲載していますが、毎度の取材時に感じるのは、考えも出来事も人それぞれで、違えば違うほどおもしろいということ。
十人十色とはよく言ったもので、これまでの入居者も「住人十色」でありました。
そろそろ次の取材をと考えた時に、おもしろい人ならば大家さんでもいいじゃないか!と思ったのです。
入居者にいろいろなストーリーがあるように、大家さんだってストーリーがある。そこで真っ先に思いついたのが「うえのいだ」
大家さんと管理会社という関係を抜きにしても、きっと巡りあっていたに違いないと思える玉城さん。玉城さんという人間、「うえのいだ」という響き、そもそも「うえのいだ」って何ぞや?おもしろい匂いがぷんぷんします。
「うえのいだっていうのは屋号。親戚同士で呼び合う名前のことで、本当はいだ(伊田)ですね。この先にはムートゥヤ(本家)があって、それぞれの伊田に大(うふ)、上(うえ)・中(なか)・下(した)を付けて、うふいだ、うえのいだ、なかのいだ、したのいだ。この一帯が親戚で、玉城ばっかりなんですよ。」
なるほど・・・屋号っていうのは知っていましたが、大・上・中・下とはおもしろい。続けて「うえのいだ」を名乗る理由をこう話します。
「公私混同なんですけど(笑)。自分が畑したり、家庭を持つようになってからの動きとか。自分で、ストレートにひらがなで「うえのいだ」のロゴをリデザインして、新たな視点で見るというか。そうする事でいろいろ変わってくるように、家族を再構築しようって名付けた感じです」
リノベーションする前は、普通に「玉城アパート」だった「うえのいだ」
それまではあまり親戚付き合がはなく、首里のアパートがある事は知ってはいながらも、玉城さん自身は全く関与してはいませんでした。数年前、同時期に3室空いた時に「ぼろぼだから直せないか?」とお祖父様から言われた事がリノベーションのきっかけとなりました。
「おじぃはその時、89歳ぐらいで。アパートの事は近所のおばあちゃんにずっと任せっきりで、近くの不動産屋には空いたら声をかける程度。親戚の人を住まわせている様なぼろぼろの建物を、俺がただペンキを塗って補修する程度で終わるつもりだったんです(笑)。そしたら、設計事務所の方から5部屋のうち、ここの上下2部屋をぶち抜いてメゾネットにしようって面白い提案があって。じゃここに住もうって感じでしたね」
設計事務所に相談しているうちに、玉城さん自身もアパートに住むという話になり。その頃、玉城さんが始めた畑にも「うえのいだ」を名付けた事で、徐々に関わりが大きくなって行くのです。
取材で使った部屋も、もともとは駐車場だった所へ増築。現在の「うえのいだ」に至るまでに3度の改装工事を行ってきましたが、この増築子にに関してはほとんどの作業を玉城さん自身で行ったのだそう。
1期目工事、2期目工事は通常通り、工務店へ依頼しましたが、3期目の増築工事は、見積もりが高かったので、友人である木工職人に相談したところ、玉城さんが手元を手伝う事で内装費用を半分くらいまで落とすことが出来ました。
さすがにコンクリートブロックの積上げは工務店へ依頼しましたが、設計事務所の設計・監理のもと、ほとんどの作業を玉城さんと友人の木工職人とでやったのだといいます。
今では、リノベーションや内装工事などもする「うえのいだ」ですが、玉城さんがそういった作業をする事になったきっかけは「うえのいだ」の畑の小屋作りを友人である杉浦さんへ依頼した事でした。以前より知人だった木工職人の杉浦さんに、木造の小屋をお願いしたのですが、少しでも費用をおさえたいと思い、手元作業をするアルバイトとして雇って欲しいとお願いしたのです。それから日雇いアルバイトとして、いろいろな現場で作業をしているうちに、シェアスペースの工事やリノベーションなどを依頼されるようになり、今の活動に繋がってきました。
「初めは、俺は大工でもないし出来ないかも、と思ったんだけど、杉浦さんと一緒ならできるかなって。安直な考えで、杉浦さんの手元作業のバイトが始まったんです。時には自分が請負で、杉浦さんに発注するという逆の感じになったりもして。(笑)」
「うえのいだ」の畑でとれた有機栽培のだいこんと人参とたまねぎ
玉城さんの住居部分は上下のお部屋をぶち抜いたメゾネットの2LDK。開放的な空間の主役とも言えるキッチンは、第1期のリノベーション工事にLITTAI METAL WORKSに造作してもらったもの。「うえのいだ」のとれたて有機野菜と、ずらりと並んだ料理好きだとわかるキッチン用品たち。
乾燥させたレモングラスは、カットして袋詰めにして出荷する「うえのいだ」のお茶用レモングラス
ひとくちに「うえのいだ」と言っても、活動の幅はどんどん広がり続けています。
いちばん知られている畑をはじめ、アパートでもあり、リノベーションや内装工事、美術講師やデザインまで。枠にとらわれず、何事も楽しみながらチャンレンジする玉城さんは、大家さんとしても柔軟なスタンスで考えます。
「もしシングルマザーで、子供を家族に預けられない場合なら、自分たちは家にいる時間が多いので、夜はその子供と一緒にご飯を食べたりして、お母さんは安心して働いてられるとか。例えばシングルだったら、床を土間にしたい、天井を取っ払いたいとかの改装工事を自分も一緒に手伝うし、土いじりも一緒にするとか。いい距離感って難しいかもしれないけど、こんなちいさなアパートでは毎日顔を合わすわけだから、都心のアパートとは違う形で関われるような感じが良いのかなって。」
もちろん、入居してきた人にそういうのを押し付けるのではありません。できれば、畑や土や食に興味があって、むしろ人と関わりたいと思っていたり、一緒に土いじりもできれば嬉しいな、という具合。
貸室が3戸と、大家さんである玉城さんの住居で、合計4世帯のちいさなアパート「うえのいだ」
玉城さん自身、子供が産まれてから考えや生活が大きく変わり、人との関わりやバランスが大切と思うようになったといいます。
聞けば聞くほど面白く、驚きの連続で、時間の経過を忘れてしまうほどに濃い2時間半の取材。私の耳にした事は、ほん一部に過ぎずないのかもしれません。でも、玉城さんという愛情深い人が、少し古い建物だけど、空間を楽しみながら家族と豊かに暮らしている様子は、間違いなく伝わってきました。
こんな大家さんに出会えた事、こんな賃貸物件を紹介できることがあらためて嬉しいし、たのしい。
それこそ、首里という土地を肌で感じて暮らしたいと思っている方にはぴったりの「うえのいだ」
どんな方が名乗りでてくれるのだろう・・・大家さんと入居者のて手をつなぐ喜びを、改めて考える良い機会となりました。
ディ・スペックでは「うえのいだ」の入居者を募集しています。
都会の生活に寂しさを感じる方、土いじりや畑に興味がある方、大家さんとの程よい人付き合いが嬉しいと感じる方。
「うえのいだ」で暮らすという選択があります。興味のある方は、ディ・スペックまでお問い合わせ下さい。
大家さんの玉城さんってどんな人?
「うえのいだ」ホームページ
http://uenoida.com/
「うえのいだ」フェイスブックページ
https://www.facebook.com/uenoida?ref=bookmarks
沖縄県那覇市首里石嶺町
うえのいだ
賃貸アパート
間取り:1LDK(和3・LDK8.5)
賃料:45,000円
http://www.dspec.jp/date/pg672.html
土いじりに興味がある。おもしろい出来事が好き。
人と関わりたい。改装したい、改装好き。
少し古いけど味がある、そんなアパートあります。
ディ・スペック株式会社
http://www.dspec.jp
〒901-2201沖縄県宜野湾市新城2-39-8 MIX life-style2F
tel:098 893 5015 Fax:098 894 2285