PLANTADOR (プランタドール)生き生きと迫り来る亜熱帯の森の個性派グリーン

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「植物に関することは何でもやらせていただきます」。PLANTADORホームページでこう宣言するのは、オーナーの新城圭吾さんだ。新城さんは、観葉植物の販売やイベント会場などのプランツコーディネート、リース、また店舗や個人宅の植栽、予算に合わせてのオーダーメイドプランツの調達など、いわば植物の何でも屋さん。店舗の入り口前には、屋内に入りきらないような背の高い植物が所狭しと並べられ、圧倒的な迫力を持って客を迎え入れる。店内にも個性のある植物が目白押しだ。植物だけじゃなく、それにまつわる小物、例えば鉢や部屋に飾るための小道具も豊富。植物って、こんなにもかっこいいんだ、こんなにもわくわくさせてくれるんだ、と驚きとともに植物に対する考えを一変させてくれるのが、ここPLANTADORだ。

 

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ー店に一歩入ったとき、本当に驚きました。まるで亜熱帯の森にいるかのように感じますね。緑が目に鮮やかで、圧倒されます。

 

新城:お客さんがお店に入ってきたときに、「わぁっ」って言ってもらえるような空間にしたいって思っています。この前も、「うわっ、すごい」って言いながら入ってきたお客さんが、ここにテーブルがあるもんだから、「ここでコーヒー飲めない?」って。「こんだけグリーンがあって気持ちのいい空間なんだから、コーヒーが飲めたらすごくいいのに」って。

 

僕にしてみれば、この空間が当たり前になっちゃってるんだけど、それ聞いて、ああそうかって。ここ、カフェと間違えて入ってくるお客さんもいるしなって。真に受けて、隣の土地借りて、お茶できるスペース作ろうかなと、早速大家さんに問い合わせたんです。そしたら、経理してる嫁にめっちゃ怒られました。「あなた、お金があるように思ってるみたいだけど、どんなことになってるかわかってないでしょう?」って(笑)。 

 

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ーオブジェのような、かっこよくてサマになる植物が多いですね。同じサボテンでも、荒野にありそうなワイルドなものから、小さくてかわいいものまで種類が豊富です。

 

新城:「ここ、男向けの植物しか揃えてないね」って近所のおばちゃんたちに言われたんですよ。どうしても僕の好きなものが集まっちゃう(笑)。僕、個人的にはツンツンしたものとか、刺があるもの、サボテンとか、インパクトの強いものが好きなんです。

 

でもお店持つんだったら、色んな人、これから植物始める人たちにも興味を持ってもらえるような空間にしたいって思ってたんですよね。だから、お客さんが自分の部屋に持ち帰った時に、イメージしやすい植物も置こうと意識してます。自分が欲しいものだけを集めると、限られた人にしか発信できないんで。学生さんでも買える1000円代のものからありますよ。

 

扱う植物は一般受けするものだとしても、PLANTADORらしさは出したいと思ってます。例えば、樹形が面白いものだったり、品種がちょっと違うものだったり。必ずしも珍しいものだけじゃなく、一般的に見たことある植物だけど、なんかちょっと違うよねっていうの。そういうのを意識して仕入れてますね。特に若い人に、植物っていいねとか、かっこいいねって思ってもらえたらいいですね。

 

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ー最近は雑貨店でも観葉植物が多く取り扱われていますね。

 

新城:雑貨屋さんが、植物の取り扱いを始めたって聞くと、「ナニクソ」って思うんですよ(笑)。どっかで植物って簡単って思われてるんじゃないかって。ましてや、そういう雑貨屋さんが、「植物ってすごい売れるんですよね」とか言ってたら、キーッてなりますね(笑)。だから、そういう雑貨屋さんとは全然違うね、みたいな、圧倒的な違いを見せつけたいなって思っています。

 

 

ー専門店ならではの違いというのは、どういうところにあるのでしょう? 

 

新城:例えば、生産者から仕入れた植物をそのまま店に出すってことはないんです。不要な枝をカットして、葉っぱを掃除して。それは最低限、絶対やります。その次に、仕入れたときのプラスティック鉢から抜いて、グリーンのちょっといい鉢に入れ替えます。その際、自分が培養した培養土に植え替えるんです。もちろん、水はけがよい土がいいのか、保湿が必要なのか、植物によって培養土は違います。そこから水やりして、1日2日様子を見て、それで初めて店頭に出すんです。

 

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ー目を引くものばかりで一つひとつを見てたんですが、どれも名前が書かれてないんですね。

 

新城:あえて表示してないんですよ。それはお客さんと話をしながら説明したいっていうのがあって。購入される時に、植物の名前と、育て方のポイントやコツなんかを書いたプレートを添えてお渡しするんです。

 

 

ー私、植物を何度かダメにしたことがあって、その度に植物はもういいやって思ってしまうんです。こんな人でも植物を楽しめる方法ってないですかね…?

 

新城:購入された後、お客さんから、「植物の葉っぱが急に落ちだしたんですけど、なぜですか」っていう電話やメールを頂くことがあるんです。その際、説明はするんですけど、お客さんとしては、実際に見てもらいたいっていうのが一番だと思うんですよね。特に初心者の方だったら、僕が行くことによって安心できるだろうし、見ながら説明したら、より納得して頂けると思うんです。なので、日程調整して伺いますねって必ず言うんですよ。伺って植物見て、考えられる原因を説明して。で、明らかにこの状態で置いておくのはかわいそうだなって思ったら、一旦うちでお預かりするんです。養生しますねって。念のため、代わりの植物を持って行ってるんで、代わりにこの植物置いておきますねって。昨日も、養生したのが元気になったんで、納品しますって持って行ったところです。もちろんこれに関して、料金は発生しないですよ。アフターケアを見込んで、最初の値段に織り込むなんてことも、してません(笑)。PLANTADORにしてよかったなって思ってもらえることが一番なんで。

 

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ー手厚いアフターケアがあるなら、また植物を部屋に置こうって気になります! どうしてここまで親切に?

 

新城:その場限りの販売にしないのは、Ru-gaでの修業時代の影響が大きいですね。お客さんに対して何か言うとき、言う前に、もし自分がお客さんの立場でこれを言われたらどうだろうか、とか、こういう対応したらお客さんは嬉しいんじゃないか、とか、常にお客さんの立場になって考えろ、と教え込まれました。花屋である前に、一社会人として、たとえお前がこの仕事をやらなくなったとしても、別の花屋に行ったとしても、社会人として通用する常識だったり礼儀だったりをしっかり学んで欲しいって。「沖縄一厳しい花屋へようこそ」と迎えられたんですけど、本当に厳しかった。そのことに嘘はなかったですね(笑)。だけども言われたことに納得いかないことがないというか。

 

Ru-gaに入ってなかったら、今の自分はないですね。Ru-gaで修業させてもらえたから、独立してこの仕事をずっとやっていこうって思えたんです。

 

 

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ー面白い樹形だったり、植物と鉢とのバランスも新鮮だったり、どれも驚きがある。新城さんのセンスのが出てるんだなって感じます。こういう植物が前から好きだったんですか? 

 

新城:僕、元々植物に全然興味なかったんです(笑)。親父とお袋が庭いじりが好きで、手伝って、とか言われたら、あからさまに嫌な顔してたくらい。高校生くらいのときかな。面倒くさいとか、汚れるとかって(笑)。なのにお袋が、熊本に1年だけの造園の専門学校あるから、行ってみたらって。これからは手に職つけないとって。何言ってんだって思ったんですけど、まあ1年くらいならいいかなって。

 

卒業して沖縄に戻ってきたら、当時沖縄には造園の文化がほとんどなくて。観葉植物のリース会社に就職したんです。リースした植物は2週間毎に取り替えるんです。そのお客さんありきの、空間に合わせた植物じゃなくて、この環境で2週間もつ植物かどうかが1番大事で。それに植物が枯れていても、新しいのに替わっていても、お客さんに全く気にかけてもらえない。全然充実感なくて。自分がやりたいの、これじゃないけどなみたいな。

 

転職しようと、花屋さん中心に問い合わせたんです。花屋の経験はなかったから、未経験者はお断りって、電話の時点で断られてたんですよね。最後にRu-gaに問い合わせて。偶然か必然か、Ru-gaの前を車で通ったことがあって、かっこいい花屋さんだなって、ずっと頭にあったんです。でも、はなからムリだろうって思ってた。最後にダメ元で電話したら、未経験者は大歓迎だって、面接して、僕を拾ってくれたんです。

 

 

 

 

ーRu-gaで6年も修業されてたんですよね。Ru-gaで学んだことで印象的だったのは、どんなことですか?

 

新城:植物を見せる技術をしっかり教わりました。「枝や葉っぱを切る勇気を持て」って言われたんですよ。ここに枝があることによって、この植物がきれいに見えてない。この1本を落とすだけで、この植物の価値が倍になる。切ることが勿体無いじゃなくて、切ることによってその植物の良さをさらに活かすことができるんだよって。

 

生産者の農家さんを訪ねるときも連れていってもらいました。そこにしかない樹形のものとか、それを見極めるやり方とか、鉢と植物の合わせ方のバランスとか、全て教えてもらったんですよ。

 

 

ー生産者さんの元に足を運ぶことで、学ぶことも多いと。

 

新城:生産者を回るってことは、生産者の生の情報を聞ける。それに、市場に出回らないような、樹形がちょっといびつなものを発見したり。あ、市場に出回るのは、扱い易いスタンダードな形のものが多いんですよ。生産者のところには、たまにとんでもないのが眠ってるんですよね。

 

今も週に最低1回は生産者さんのところへ行きますよ。北は東村から、南は糸満の端のほうまで。直接農家さんから買い付けることが多いですね。ちょっとハウスが見えたら、飛び込みで行って、ちょっと見させてくださいっていうこともありますね。そこから始まったお付き合いも多いですよ。マメに足を運んで色々開拓しないといけないですからね。

 

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ー市場からに限らず、新城さん独自の仕入れルートが沢山あるんですね。そういうルートは仕入れ以外にも役に立つ?

 

新城:生産者のところで見つけた植物で、これは沖縄では扱えないけど、本土でだったら買う人いるだろうなっていうのは、写真に撮って、仲の良い本土の同業者に送ったりするんです。これいいねってなったら、僕が配送の手配して。ここに置いとくのは勿体無いですしね。

 

僕が、沖縄の生産者さんと、本土の業者さんを仲介すること、多いですよ。沖縄から植物の発送って、色々と細かくて面倒なことが多いんです。生産者さんは、高齢な方も多いですし、沖縄のおじちゃんって、ちょっとなあなあなところがあるでしょ(笑)。本土の人が直接コンタクト取ると、言葉が通じないこともあるし(笑)、トラブルになってしまったこともあるんです。だから僕が間に入ることで、生産者も同業者も喜んでくれてます。

 

最近は、本土からの問い合わせが、生産者にじゃなくて、僕に来ますね。こういうの探してるんだけど、ないかなって。じゃ近日中に生産者さんのところへ行く予定があるんで、写真撮って送りますねって。

 

沖縄って観葉植物のメッカなんですよ。ちょうどこの時期、12月から1月2月くらいにかけて、全国からバイヤーさんが来るんです。沖縄でも人気の生産者さんがいて、その人の作る商品は、葉っぱが出る前、樹形が出る前に、先物買いされるんです。そのバイヤーさんのツアーも僕がアテンドしますよ。生産者さんの数が多いので、最低丸々3日はかけますね。

 

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ー沖縄が観葉植物のメッカだなんて知りませんでした。でも、どうして直接新城さんの利益にならないことまで?

 

新城:そのお陰で、僕が本土へ行ったときは、とてもよくしてもらってます。本土の生産者さんのところへ連れていってくれたり。何より情報ですね。新しい情報は、東京から沖縄に入ってくるまで、タイムラグがありますからね。鉢のメーカーさんを紹介してくれたのもありますね。沖縄ではここにしかないメーカーの鉢も結構あるんですよ。

 

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ー店の運営から同業者のアテンド、その他に造園もされてるんですよね。大変なのはどんなこと?

 

新城:一番大変なのは、考えることですね。お客さんから頂いた依頼に対して、どう応えるかっていう提案です。お客さんの要望を取り入れつつ、自分たちのブランドの色をどう出そうかとか、どうすれば喜んでもらえるかなとか、頭を悩ませます。個人宅の庭作りでは、家族構成なんかも気にかけますね。小さいお子さんがいたら、ツンツンしたのはアブナイなとか、樹液がかぶれやすいものも嫌だなとか。

 

お客さんがこの植物をここに植えたいって言った時、どうしても日当たりが悪くて、この場所に合わないと思っても、すぐに「ムリです」って言いたくないんです。「この品種は厳しいけど、この品種に似た、こういうものがありますけど、どうですか」って必ず提案できるように、引き出しを多く用意しておきたいんです。

 

 

ーひとつひとつ異なる条件で、考えて提案するというのが一番のお仕事なんですね。そのやりがいは、どんなところに?

 

新城:僕の提案がガチっとハマったときは嬉しいですね。「この植物が入ると、住宅がより映えますね」とか、「この植物があるのとないのとでは、全然変わりますね」とか。ベタな言葉ではあるんですけど、そういう言葉をかけてもらったときが、一番嬉しいですね。

 

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ー植物って見ていて癒やされるだけじゃなく、かっこいいんだってことは新たな発見でした。知ってると思ってた沖縄の植物でも、まだこんなに新鮮に映るものがあったんだ!って。

 

新城:お店のオープン当初は、「沖縄で植物だけ扱うって勇気ありますね」とか、「沖縄には常に周りに木や草がいくらでもあるじゃない」ってよく言われました(笑)。でも最近は、こういうインドアグリーンにこだわりのある人が増えてるって実感してます。それにこの業界はこれからもっと必要とされるだろうなって、なんかわからないけど、そんな風に思います。今のストレス社会に一番癒やしの効果があるのは、やっぱりこういうグリーンだなって思うんですよ。沖縄にも色々な造園屋さんがあるけど、「これ、PLANTADORがやったんじゃない」って、ひと目でわかるような、自分たちのスタイルを確立していけたらいいですね。

 

インタビュー/和氣えり(編集部)

写真/青木 舞子(編集部)

 

 

 

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