写真・文 佐野綾子
季節の変わり目、、
簡単に一言で言ってしまえば、そうなのだけど、なんだかむずむず。空は明らかに夏の鮮やかな青空とは違い、白く柔らかな雲と秋の日差しが広がっている。
でも歩き出したらまだまだ暑くてすぐに汗が湧き出て、なかなか今の気候にあったコーディネートが難しい。
「何着ようかな?」
「暑いのかな?帰り道は、肌寒いのかな?」
そんなことを考えだしたら、あっという間に時間が過ぎてしまう。
そんな時は、感覚に耳を澄ませてみようと思う。
身に纏うと今日の自分にフィットして、1日が心晴れやかになる洋服。
ミナ ペルホネンの刺繍は、不思議な魅力を持っていて、身につけると乙女心が心地よくくすぐられ、くすぐったいけど、心が弾むような嬉しさがあり気がつくと笑顔になってしまうのだ。
「forest parade」のストールの刺繍を見ていると、お気に入りの絵本を読んでいるような気持ちになる。鳥や蝶、草花や、peaceという文字の刺繍モチーフが重なり揺れている様子は、まるで日々の宝物を束ねたかのような愛しさがある。
「forest parade」の刺繍のモチーフは、実は37種類のモチーフから出来ていて、一本の針が37のすべてのモチーフを仕上げるのには、何と3日かかるのだという。
神奈川のレース工場で、技術者のプログラミングを元に機械の力をかりて、機械だから時間を短縮出来るという考え方ではなく、機械に人のように丁寧に働いてもらう。
こうしてステッチひとつひとつの針の運びを、じっくり時間をかけて仕上がったモチーフは、鳥の羽根一本一本が見えてくるように、蝶の軽やかな羽が感じられるように、木の実のもっちりしたふくらみが生まれるように、表情を持っている。
フードのボアの可愛らしいダウンベストは「tambourine」のテキスタイル。
ミナ ペルホネンではとても大切に長く作り続けられているテキスタイルのひとつだ。
「tambourine」はドットの集合体から出来ている。
均一ではないドットが連なり円になり、フリーハンドで描かれた円と円が隣り合って、整然と並んでいる。
今から十数年前、わたしが初めてミナ ペルホネンの洋服を手にしたのもこの「tambourine」のテキスタイルのスカートだった。今でもそのシルエットや配色、そして特別な気持ちで着ていたのをはっきりと覚えている。
ミナ ペルホネンの刺繍は、こんなところにも、ひっそり輝いている。
「usa bag」はつぶらなお目目と口周りが刺繍を施しており、なんとも憎めない表情をしている。
蝶が羽を休めて舞い込むように、Shoka:に届いた「slow dance」のカシミア素材のドレスは、ふっくらとして柔らかな着心地の良さも去ることながら、ひらひらと優雅に飛び回る蝶が着る人の気持ちを高揚させるドレスだ。
とても軽くて、ふっくらと包み込んでくれるミナ ペルホネンの服たちは、着る人の心をそっと包んでくれる。
その温もりに、ほっとする。
心に残るもの。その時の景色や空気感を蘇らせてくれるもの。
一過性で流れていってしまうものではなく、自分と一緒に時を刻んでいってくれるものを、身につけていきたいと思う。
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ただいまShoka:にて開催中
未草 + 温石 + 田所真理子企画展 「森へ」
長野の信州に拠点を置く二つの家族の暮らしは、本当においしいもの、本当に美しいと感じるもの、暮らしたい場所、住まい方、衣食住とそれが在るところのどれも大事にしています。彼らの暮らしの中から生まれた、彫刻や布もの、イラストの原画、tadokorogaroのオリジナル商品が並んでいます。Shoka:で彼らの世界観を目で見て感じてください。
未草 小林寛 樹 小林庸子
イラストレーター 田所ギャラリー 田所真理子
温石 須藤剛
2015年 11月15日(日)までの開催
暮らしを楽しむものとこと
Shoka:
http//www.shoka-wind.com
12:30~19:00
沖縄市比屋根6-13-6
098-932-0791