Café がらまんじゃく沖縄の地が持つ自然のパワーをめいっぱい 心づくしの健康長寿定食を

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「『忙しい』を理由に食をおろそかにするのは、早く死ぬことを自分で選択しているのよ」

 

生きるためにちゃんと食べる。その大切さを明るく快活に話してくれるのは、大きな赤瓦家の店 Café がらまんじゃくの店主、山城清子さんだ。

 

食の大切さはきっとみんな、頭ではわかってる。でもなかなか実践できないのが、本当のところ。その悩みを素直にぶつけてみると、清子さんから即座に先の言葉が返ってきた。 後頭部を鈍器で殴られたような衝撃が走って、思わずしゃんと背筋が伸びた。

 

「人は、死ぬのも生きるのも、いつ死ぬのかも、食べ物次第で自分で選べるのよ。子供の命、旦那さんの命を考えたら、お母さんは台所を守るのが本来の姿。外で働かなくたって田舎行って畑すりゃ生きていけるの。経済と命、どっちが大切なの。優先順位をちゃんと考えて」

 

そしてこうも付け加えた。

 

「丁寧な生き様をしたかったら、丁寧なごはんを食べないと」

 

“丁寧なごはん” そう、がらまんじゃくで頂けるのは、まさに“丁寧なごはん”だ。

 

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お盆の上には小皿がいっぱい。そして月桃の葉の上にも、幾種もの野草や薬草、野菜料理が。ちょこちょこと、楽しくなるほどの数が並んでいる。

 

あまりの色鮮やかさに驚いていると、清子さんが「この色、全部天然の色なのよ」と教えてくれた。紅芯大根の目の覚めるようなピンク色、紅芋のまろやかな紫…。

 

 

がらまんじゃくの料理は、色でたどることができる。

 

優しくも鮮やかな若葉色は、野草のスムージー。苦みを想像させるその色に反して、とてもフルーティだ。野草の苦味をバナナとシークヮーサーが中和してくれている。美味しくて、スルスルと喉を通りすぎていく。

 

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鈍く光る墨色は、知る人ぞ知る黒煎り玄米茶。こんなに黒い色が出るのは、玄米を炭になるまで炒っているから。手を休めることなく何時間もかき混ぜ続ける。それから炭になっ た玄米をコトコトと煮出す。

 

なんて手間と時間を惜しみなくかけたお茶なのだろう。コーヒーのような深い香りと香ばしさがある。すうっと体に染み渡っていくようだ。

 

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透明感のある乳白色の芋は、はりいも。ホクホクしていて、淡泊な味だ。繊維質がたっぷ りあるのがよくわかる。なかなかお目にかかれない珍しい食材に出会えるのも、“がらまんじゃく”の魅力である。

 

はつらつとした黄や橙は、ニンジン。シリシリして、千切りのサクナと和えている。ニンジンの甘さとサクナの爽やかさがよく合うなんて、新発見だ。

 

そしてゆるやかに緑のグラデーションを描く野菜たち。落ち着いた深い緑色はセリ。醤油と鰹節でおひたしに。艶めく柿渋色は、味噌で煮こまれたゴーヤー。芽吹いたような萌黄は、ムカゴ。雲南百薬のツルの間にできる野菜で、湯がいて塩とにんにくであえて。どれも素材の味をダイレクトに味わえるものばかり。

 

様々な色に目を奪われ、「次はどれを食べようかな」と迷う楽しさがあり、「これ、なんだ ろう?」とワクワクもする。そして口に入れると、生き生きとした素材の味の発見がある。

 

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例えば、お味噌汁の中のカンダバー。くったりと煮込まれ、とろんと優しく、じんわりとした滋味深さが体中に染み渡っていく。

 

これだけ味わい深い料理だが、“がらまんじゃく”の料理の調理法は、奇をてらった感じがない。蒸しただけ、茹でただけなど必要以上に手を加えていない。調味料も、昔から日本人が親しんできた醤油や味噌、塩など基本のものが主だ。シンプルな調理に、シンプルな味付けなのである。

 

そのせいだろうか。初めての素材を口にしても、不思議と懐かしく感じられるのだ。そのシンプルさに、材料があれば自分でも料理できるかも、と単純に思ってしまう。

 

しかししかし、“料理するまで”が大変なのだ。

 

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「この中に薬草や野菜は40種類くらい入っているわね。海藻は4種類入っているのよ」

 

ええっ、そんなに?! それは、生野菜スティックに添えられた具沢山の薬草味噌のこと。この味噌の美味しさは、ファンの多さが証明している。私の周りにも「がらまんじゃくの薬草味噌が大好き」と夢中になっている人が何人もいる。いやはや、こんなに多くの種類の薬草や海藻が入っているのに、なぜ味がひとつにまとまっているのだろう。薬草のほんのりとした苦みがたまらない。箸が止まらず、あっという間に皿が空になる。

 

「使う薬草の種類とか効能を調べて、それを採って洗って、味噌にしてって、も~それだけで大変な手間なんだから〜」

 

はい、その通りです。恐れ多くも、自分でもできるかもと思ってしまったこと、反省します…。

 

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季節によって定食の内容は変わります

 

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手間をかけるのは、もちろん味噌だけではない。材料をわざわざ発酵させて使うことも多い。野草の発酵液で米を炊くと、菜の花や若竹のような鮮やかな色に炊きあがる。芋だって発酵させて飲み物にする。

 

「沖縄に玄米のミキってあるでしょ。それを紅芋で作った私のオリジナル。紅芋を乳酸菌で発酵させているのよ」

 

紅芋のまろやかさの中に、ショウガの香りがいいアクセントになっている。生きた菌がたっぷりの、自然の栄養ドリンクだ。

 

沢山の野草や薬草を摘んで丁寧に下処理したり、材料を発酵させたり。 なんて、手間がかかっているのだろう。清子さんは、「1日18時間くらい働いているわよ。 もうやめたいわ~」と笑う。この手間が、“丁寧なごはん”たる所以である。

 

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旬を大切にし、季節によって定食の内容を変える

 

 

清子さんが、がらまんじゃくをオープンさせたのは2009年のこと。清子さんは首里んちゅ(首里の人)で、以前は宮廷料理に傾倒していた。それが野草や薬草、島野菜のお店 をするようになったのは、知人の息子さんの死がきっかけだったという。

 

「彼ね、13 歳の時、心臓麻痺で突然死んじゃったのよ。野球の練習中に。若い命が何の前触れもなく消えてしまったことが、もうショックで。それが、アメリカ同時多発テロ前後の事でね、命のはかなさがたまらなくて」

 

そんな悲劇に直面した時、人は、自分にいったい何ができるだろうと考えるものだ。清子さんにとってそれは、食の大切さを伝えることだった。

 

 

「病気は食歴なんだよ」

 

清子さんは、何度もこう言った。その意味は、今まで食べてきた悪いものが、病気として体に現われてしまうということ。だから、体の中の悪いものを外に出すことが大切なのだという。食品に使われている添加物などはしっかりデトックスしなければ、数年後に病気として体に出てきてしまうのかもしれない。

 

“デトックス定食”は、そんな排出の重要性を再認識してできたメニューだ。

 

そもそも春は、毒素や老廃物を排出する野草や野菜が豊富な季節だ。がらまんじゃくの定食は、そんな野草たちを40種以上使っているのだから、それだけでも排出効果を十分期待できる。しかし、抜群のデトックス効果を発揮する食べ物が、他にもあるという。

 

 

「玄米茶の炭のミネラルは、大腸や肺の大掃除をしてくれるのよ。ヘドロがたまった河に活性炭を入れると、水をきれいにしてくれるのと同じね。それから芋、定食にいっぱい入っているでしょ。紅芋のミキや、ンムクジアンダギーにはりいもやさつま芋ね。善玉菌を増やして腸内環境を整えてくれるのよ。ああ、発酵させたのも善玉菌を増やすわね」

 

また、普段の食事から、解毒を意識しての料理をするといいと教えてくれた。

 

「豚肉に、島ラッキョウとにんにくの醤油漬けを添えてるでしょ。ネギ類が、肉の毒を排出して消化を助けるのよ。肉にはネギ類、魚には大根を合わせるの。色々な食材をバランス良くとることが大事。動物性食品をとることも必要よ。だけど、肉の脂は消化しにくいから、食べ合わせは考えないとね」

 

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それにしても食の大切さを伝えようと思った時、清子さんはなぜ、野草をと思ったのだろ う。

 

それは、自然に生えている野草は、科学肥料や農薬に侵されていないから。それに野草は、 四季や土地に応じて生えるもの。その時そこに生えている野草を食べることで、旬で土地 に合ったものを体に取り入れることができるから。そんな理由ももちろんある。しかし一 番の理由は別にあった。

 

「沖縄という土地の価値をみんなに知ってほしいのよ。この土地は、こんなに豊かで元気な野草を私たちに与えてくれる。これを食べない手はないわよ。こんなところ、他にはないんじゃないかしら」

 

居合わせたお客さんが、身を乗り出してきてこれにすぐに同意した。沖縄の野草は世界で一番力がある、と。

 

「僕は本土で農業をしているんですけどね。勉強を兼ねて日本中世界中の野菜や野草を見て旅をしているんです。沖縄の島野菜や野草は、世界から見てもすごいですよ。いつか育ててみたいなあと思いますね」

 

たしかに沖縄には昔から、ぬちぐすい(命の薬)という言葉があり、医食同源の料理がある。それはこの土地が、薬効の高い島野菜や野草を生み出してきたことと無関係でないはずだ。ここに住んでいる私たちは島野菜や野草が身近すぎて、その素晴らしさを見過ごしているのかもしれない。

 

 

また、清子さんは原種であることにもこだわる。

 

「定食についている“はりいも”は、原種に近いものなのよ。原種に近いということは、 人間の手で改悪されていないということ。最近は、一代限りの生命力のないタネが増えているでしょう。原種は、そのものが持つパワーがそのまま活きているのよ」

 

沖縄の地が持つ、ありのままの自然のパワーを、体の中にたっぷりと取り込んで欲しい。 そんな清子さんの思いが、一枚のお盆の上に現われている。

 

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清子さんの夢。それは沖縄の料理を世界遺産にすること。和食は、2013 年にユネスコ無形文化遺産に登録された。沖縄の料理だって、和食に負けない素晴らしさを持っているとい うのだ。

 

「世界遺産に登録されたら、和食と同じように、皆が沖縄の土地の素晴らしさに気づいてくれるでしょ。沖縄はすごいのよ。何百年も前にあんなに豊かな宮廷料理があったでしょ。 それに薬草料理や庶民料理、山羊汁やイラブー汁なんかの滋養強壮料理があって、幅が広いんだから。食養からするとね、あ、食養って食養生のことで、食事で体を健康にすることね、戦前によく食べられていた『ンブシー』なんてサイコーよ。野菜中心の具だくさんを味噌で煮込んだ料理ね。これにご飯と汁ものをつければ十分。一汁一菜でいいのよ」

 

清子さんは、こんなに沖縄の食を愛しているが、実はもうお店を閉めたいと思っていた。 それは、丁寧な料理作りゆえ、お店を続けるのは大変な重労働だから。そんな時に、運命的ともいえる出会いがあった。

 

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「若杉ばあちゃんが、店に来ちゃったのよ〜」

 

“若杉ばあちゃん”とは、食養を広めるために全国で講演している若杉友子さんのこと。 御年 78 歳のパワー溢れるおばあちゃんだ。講演で来沖した際、コーディネーターの方が「いいお店がある」とがらまんじゃくに連れてきたのだ。

 

「ばあちゃんがさ、『あなたが沖縄の食を守ってね』って言うのよ〜。『私たち世代がしっかり頑張らないと』って」

 

若杉ばあちゃんは、沖縄が長寿県でなくなりつつあることを憂いていた。そんな中、がらまんじゃくの料理を食べ、清子さんと話したことで、清子さんに白羽の矢を立てた。この人に沖縄の健康を守ってもらおうと思ったのだ。

 

若杉ばあちゃんは、その翌日の講演で、「こういう店で食事しないとだめなのよ~、あなたたち」と皆に発破をかけていた。店名をメモした紙をわざわざポケットに忍ばせてのことだ。

 

若杉ばあちゃんが店を訪れたときの話を、迷惑な風を装いながらも、とても楽しそうに語る清子さん。その顔はひときわ輝いている。志を同じくする先輩に出会ったことで、清子さんは気持ちを新たにした。お店を閉めるどころか、デトックスを目指した定食を新たに メニューに加えたのだ。

 

さらに、食の大切さを店を通じて伝えるだけでなく、店の外でも伝えようとしている。

 

「これからは農家の人たちを支援していきたいの。農家の人があっての私たちよ。その農家さんが苦労してるんじゃ、ますます食が危なくなるわ」

 

具体的には、がらまんじゃくの看板商品の一つである“野草スムージー”を農家とタイアップできないか考えている。そのジューススタンドが街中にあって、気軽に野草スムージ ーが飲めたら…。私たちや観光客が気軽に沖縄の野草に親しめるうえ、農家の支援にもなる。これはみんなにとって理想的なアイディアかもしれない。

 

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清子さんは、自身の料理で食の大切さを伝えてきた。しかし自分の命は自分で守ってほしいと言う。

 

「いくら私が頑張っていても、あなたたちの気持ちが変わらなければ、何も変わらないのよ。普段自分が口にしているものが安全かどうか、ちゃんと自分で調べてみてほしいのよ。 私が言うことは、全部うそだからね。自分でちゃんと調べて、考えるのよ」

 

自分の体に入れるものは、自分でしっかりと納得してから口にしなさい。清子さん流のエールだ。

 

「人間を変えるには、食べ物を変えることよ。政治や教育、宗教じゃ変えられないの。人生は、食べ物で変わるのよ」

 

食べ物で人生が変わる…。

 

本当だろうか。この言葉が本当かどうかわかるには、それなりの年月がかかるだろう。でもその真偽を知ることができるのは、食べ物を調べて、見直した人だけだ。

 

がらまんじゃくの料理を、ゆっくりと噛んでみる。 野草や薬草の力強さを、しっかりと体に染み渡らせる。

 

そして清子さんの話を、じっと聞き、行動してみる。 そうしたら、人生を変えるきっかけの扉が開くのかもしれない。

 

文 田中えり


 


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Café がらまんじゃく
国頭郡金武町字金武 10507-4
TEL 098-968-8846
Open 12:00~18:00(なくなり次第終了)
定休日 火・水