沖縄畑人くらぶ(オキナワハルサークラブ) おいしい野菜を直接届けたい! やんばるを盛り上げたい!「食える農家」を目指し、チャレンジを続ける若き農家団体

やんばる畑人プロジェクト

 

 

「最初、邪(よこしま)な気持ちだったんですよ。『やんばるには、海があって、山がある。美味しい豚肉や海産物があって、野菜もある。それに塩だって砂糖だってある。これに例えば、やんばるでスパイスを栽培できれば、オールやんばるでお客様をもてなすことができる』って飲食店を経営する友人が言ったときは」

 

少し恥ずかしそうに言うのは、沖縄畑人くらぶ代表、芳野 幸雄さんだ。

 

友人のこの何気ない一言に、芳野さんが「よこしまな気持ち」になったのは、これは東京でイケる!、と思ったから(笑)。

 

「ちょうど“沖縄畑人くらぶ”っていう専業農家の集団を立ち上げて3年めくらいだったんです。取引先が少なくて、せっかく作った野菜が余ってしまう状況で。何か新しい方策を考えなくちゃって時だったんです。その時は、作った野菜を東京へ売ることばかり考えてた。常に僕の頭の中には、東京への輸送コストを抑えるため、軽くて単価が高いものっていうのがあって。『スパイス』って聞いて、それならって色めきだったんです(笑)。僕は、地域貢献と言いながら、実はそれまであまり地域貢献してなかった。友人の、『オールやんばるでお客様をもてなしたい』という気持ちとは裏腹に、国産スパイスって東京でも面白いんじゃないかって、外に販売して外貨を稼ぐことしか考えてなかったんです」

 

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プロジェクトの応援店、“Cookhal”の一番人気メニュー、“Special Plate”につく野菜のデリ。皿に好きなだけ盛っておかわりも自由。新鮮な野菜がたっぷり。

 

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この日のデリメニュー。オクラのフワフワ揚げや、ゴーヤー・りゅうきゅう・花ニラのおひたし、くんせい豆腐のマリネ、うりずん豆と自家製ベーコンのニンニクソテー、オムレツなど。りゅうきゅうなど珍しい野菜の味を知ることができ、料理法も学べる。気に入れば野菜コーナーで購入もできる。

 

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この日の“Special Plate”は、やんばる若鶏の唐揚げ紅麹仕立て、本部の黒米入ご飯。スープとサラダ、野菜デリ、ドリンク、デザートがついて1200円

 

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“YAKI-Panino”。山原豚の自家製ソーセージに、やんばる産からし菜とターメリックから作られた自家製マスタード、やんばる産キャベツで作られた自家製ザワークラウトなど、オールやんばる産で。洗練された大人の味

 

それが変わるきっかけを作ったのは、仲間。大切な仲間と話し合ううちに、芳野さんの考えは変わった。

 

「それから“やんばるスパイス”を作ろうってなって、開発していく過程で、とことん地元の飲食店さん達と話をして。それで気づいたんです、ああ間違ってたなって。外にばかり目を向けるんじゃなくて、地元の飲食店さんとかに使ってもらうことこそが、新しい販路になるんじゃないかって。自分のよこしまな考えがどんどん削ぎ落とされていって、もっとやんばるに貢献しようと変わりました」

 

地域の活性化に役立てたいと、地元の農家や飲食店、スパイスの専門家などが集まって、4ヶ月がかりでできたのが、この“やんばるスパイス”だ。

 

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ガラムマサラのようなカレー風味のスパイス。煮込み料理や炒めもの、ドレッシングにも。醤油や味噌のような和の調味料とも相性がいい。

 

このスパイス、9種類のスパイスミックスで、そのうちの4種類、ウコン2種とショウガ、島唐辛子がやんばる産だ。配合率では58パーセント。最終的には、100パーセントやんばる産のスパイスミックスを作ることが目標と言う。このスパイスで、やんばるを元気にしていこうと始まったのが、“やんばる畑人プロジェクト”だ。現在“沖縄畑人くらぶ”の農家15戸と、プラス5戸の農家、38の飲食店やホテルなどの宿泊施設、加工企業やコンサルタント、陶芸家などからなる、食を通じてやんばるを元気にしていこうという、一大プロジェクトになっている。

 

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この“やんばるスパイス”には、人を集める仕組みがある。

 

「このスパイス、やんばるでしか買えないんです。これが欲しかったら、是非やんばるまで足を運んでください(笑)。プロジェクトの応援店に置いてますが、飲食店さんでは、このスパイスを使ったメニューを出してもらってます。このスパイスを求めてやってきたお客さんが、飲食店で食事をし、また逆に、飲食店で食事したお客さんが、スパイスを気に入ってくれて買ってくれる。このスパイスが、お客さんをやんばるまで呼んで、循環させてくれるんです」

 

スパイスを作る農家も、それを使う飲食店も、みんなが笑顔になるいいアイディアですね、と話を向けると、「みんなで考えたんです」と芳野さんは胸を張った。

 

「この間も、これを買いに那覇から往復3時間かけて、まとめ買いしてくれたお客さんがいたんですよ」

 

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“やんばるスパイス”が完成して、地域貢献に役立てようという時、芳野さんは、“沖縄畑人くらぶ”の目的に、地域貢献を明記した。“沖縄畑人くらぶ”は、“やんばる畑人プロジェクト”の母体となった団体で、新規就農者で作る農家団体。発足したのは、2009年2月で、プロジェクト発足の約3年前だ。

 

この“沖縄畑人くらぶ”の目標は、地域貢献以外にも、食える農家を目指すこと、新規就農者を支援することにある。芳野さんの話を聞いていると、農家の置かれている現状が見えてくる。

 

「農家というのは、作った農作物を市場で売ってもらうことを人に委ねてそこで完結する職業だったんですけど、そうじゃなくて、自分達で作ったものを自分達で値段を付けて、自分達で売っていく。直接取引先と契約して、直接流通をメインでやっていこうっていうのが、この団体を立ち上げた1番の目的なんです。よく中間マージンを取られて、農家の手取りが残らないって話を聞くと思うんですけど、中間の利益も自分達のものにして収益性の高い農業ができたら、と思っています」

 

15戸の農家が作った野菜は、プロジェクトに加盟している応援店にも直接卸す。私達一般消費者は、恩納村にある沖縄科学技術大学院大学内のカフェテリア、“kaito +”や、“YANBARU HARUSAA’S TABLE Cookhal”で、購入できる。

 

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プロジェクトの一応援店である“Cookhal”には、その日の朝採れた新鮮な野菜が並ぶ。ポップには、生産者名、おすすめの食べ方と共に、“防除 特栽レベル”との記載が。

 

「“沖縄畑人くらぶ”としては、特別栽培農産物という基準を守っていきます。特別栽培農産物というのは、各都道府県で決められている慣行、この野菜なら農薬は何回まで使用できるなどの基準があるんですが、その使用を2分の1以下にしたものです。例えばオクラは15回農薬が使用できるという慣行があれば、その半分の7回以下しか使ってないものです。けど2分の1まで使っていいから、とその基準いっぱいに農薬を使うわけじゃないですよ。もちろん、完全に農薬不使用でやってるメンバーもいます。僕は、さやいんげんを育ててるんですけど、一番適した12月や3月は、農薬は使いません。中間の1月2月は、日照不足だったり寒さだったりで、どうしても病気が発生するので、1,2回使うことがあります。使った場合のものに関してはしっかり表示してお客さんに知ってもらう。本来は第三者機関が認定するものなんだけど、そのお金を負担するのは大変だから、認定は受けずに自分達でしっかり管理していこうと。栽培管理表を作成して、僕がメンバーからしっかり聞き取りをしてますね。直接農家と取引してくれる方たちって何を求めているかというと、やっぱりどんな風に作られたかという情報公開なんですよ。だから農薬の使用状況等はしっかりお伝えする必要があるんです」

 

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もう1つの大きな目標、新規就農者支援は、芳野さん自身が土地を見つける苦労を重ねた経験から掲げられた。

 

「新しく就農する人たちの就農する苦労を減らしてあげたいんです。飛ばなくていいハードルは飛ばなくていいようにしてあげたい。新規での就農ってすごく大変で。親から土地を引き継いで農業やるわけじゃない。地域の人に認められて初めて、土地を借りられる。僕も東京から移住してきて、研修させてくれるところはすぐ見つかったけど、いざ自分で農業を始めようとすると根を張る土地がなかなか見つからなかった。やっぱりよそ者っていうのもあるし、先祖代々の土地を見ず知らずの人に貸すってなかなか。たまたま土地が空いても、地元の先輩農家さんに土地が回って、僕に回ってくるのは、水はけが悪い土地だったりね。ほんと北から南まで沖縄中を転々としました。8年くらいは鳴かず飛ばずだったかな。ようやく名護で根を張れる土地が見つかって。だから今この土地で農業をさせてもらえてる感謝を込めて、地域の役に立ちたいと思うんです」

 

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バリスタの丹羽 智子さんが淹れるカプチーノは、深い味わいでほっとできる。絶品だ。

 

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新しく農業に従事する人を手助けし、作った農作物は直接流通で収益性を高め、得られた利益は地元に還元する。農家という職業を、やりがいがあって、しかもやりがいに見合った収入が得られるものにする。芳野さんは、まだ不十分と言う。

 

「農家がどうやったら飯を食えるか、今正解が見つからなくて、手当たり次第やってるんだけど。わかってるのは、生産だけではダメだということ。“沖縄畑人くらぶ”では、生産、流通までを担ってきた。でもこれでもまだまだ。例えば規格外のものをどうやって流通に乗せるか。キズがついたかぼちゃをペースト状にして一次加工品にするよりは、プリンという最終的な商品にする。規格外のものを自分達で責任を持って最終的な商品にするまでが必要かなと思っています」

 

これからは自分達で生産して、自分達で製品に加工して、自分達で売る、6次産業を活発化させていく。頼りになるのは、やはりプロジェクトの仲間だ。

 

「例えば飲食店さんのシェフが、“Cookhal”に併設されてる加工所でベーコンを作って、その飲食店さんとやんばる畑人プロジェクトのダブルネームのものにする。ベーコンは、ここでも販売するし、飲食店さんでも販売して。飲食店さんではそれを使った料理を出してもらったりね。そしたらお互いに客の行き来が生まれるでしょう。それから“やんばるスパイス”も、もっと万能で使いやすいもの、一振りでバシッと味がきまるような第2弾も開発中です」

 

プロジェクトのアイディアは尽きない。月に1回定例会を開催し、仲間と膝を突き合わせてああでもないこうでもないと話し合いを重ねた賜物なのだろう。

 

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芳野さんは、辛さを吐露しながらも、前向きに力強く言う。

 

「今プロジェクトが大きくなりすぎちゃって、スタッフがちゃんと食べていけるようにするのが大変。今が一番苦労してるかな。農業する土地が見つからなくて年収50万くらいで貧乏してたときも辛かったですけど、自分が食えないだけだったし、迷惑をかける人もいなかったからね。今は、家族がいるスタッフもいるし、色んな人に迷惑がかかっちゃう。辛いな(笑)。でも苦しむために集まった組織じゃないから、商品開発とかイベントとか楽しいことやって資金を調達していこうよって言ってます。楽しみながら、組織をしっかり継続させて仲間も増やして。そうすることで、必ず地域も元気になりますから」

 

仲間ととことん話し合い、仲間と協力して、少しずつアイディアを形にしていく。そうしたら、大きな力が生まれて、みんなが笑顔になって、やんばるが元気になる。かつて根を張る場所を探して沖縄中をさまよった芳野さんだったが、今や芳野さん率いる“やんばる畑人プロジェクト”や“沖縄畑人くらぶ”は、やんばるになくてはならない存在であることに間違いない。

 

文 田中えり(編集部)

写真 青木舞子(編集部)

 

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農業生産法人クックソニア
http://cooksonia.net

 

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名護市字名護4607-1 ネオパークオキナワ駐車場奥
0980-43-7170
9:00~17:00
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