吉田

Roguii

 

Roguii

 

「ウチ、古いから隙間もたくさんあるんでしょうね、アリもかなり出るわけ。見慣れたからか、喩え話する時にもアリを使うようになっちゃったんです。もしアリなら、アリだったらって」

 

アリの侵入にも全く動じることなく、笑い話に変えるのは、Roguiiのミカさん。年月を経た建物ゆえの弱点はもちろん、長所についても淡々と語る。

 

Roguii

 

Roguii

 

「ここは窓が低い位置からあって大きいから、外の景色がいっぱい見えるんです。娘がお庭で葉っぱ探して遊んだり、プールで遊んでる姿も、よーく見える。この大きい窓が一番好きなところかな。鉄格子入ってる窓はひとつもないから、開けっぱなしにはできないんですけど。でも朝6時前は一番気持ちが良いんです。空気がスーッとして。まぁ私も仕事してるし、あんまり昼間はここにいることもないから、暑くてもなんでも別にいいかなって」

 

Roguii

 

Roguii

 

Roguii

 

ミカさんのおうちは、築後40~50年を経ても未だに根強い人気を誇る外人住宅。憧憬や意気込みと、並々ならぬ想いを抱いて住む人が多いが、ミカさんがここを選んだ一番の理由は、気軽さ。

 

「なんか楽で。絶対に外人住宅ってこだわってたわけでもなかったんですけど。ただ、日本の家って建てた家族は住みやすいけど、家族構成が違うと部屋が余っちゃったりとかしますよね。床の間みたいなの要らないとか。だけど外人住宅なら箱がポーンとあるだけ。気楽に住めちゃう。あ、安かったのももちろんありますよ。外人住宅の割にはバスルームひとつだけだし、ベッドルームも小さめだからかな。外国人相手では借り手なかったみたいで、日本人相手にしようって切り換えたばかりの時に出会って。ご縁があったんでしょうね。外人住宅って人気だから、金曜日に空きが見つかっても、土日をはさんで月曜日に連絡すると、もう埋まっちゃってたりが普通にあるし」

 

Roguii

ダンボールのおうちは、愛娘のノアちゃんとの共同制作。

 

Roguii

 

そんなミカさんのお気に入りは、リビング。20帖ほどもあるという、この空間では愛娘のノアちゃんものびやかに過ごす。

 

「リビングが広いのが良かったです。娘も全力で走り回れるから。前のおうちは狭い上に、物が多くて危なくって。娘はまだ、パッと見たらハサミ使ってたり、マニキュア触ってたりする年頃だから目が離せるようで離せないし…。ここも物が多いのは変わらないんですけど、広さがあるから。家の中でも、のびのびできるのがいいなって」

 

Roguii

 

Roguii

 

Roguii

 

ミカさんの言う通り、モノは確かに多い。

 

「ゴチャゴチャしてる方が好きなんです。何もないと殺風景に感じちゃって。それに子供が育つのにはゴチャゴチャの方がいいみたい。だから別にこのままで良いかなって、特に隠したりや捨てたりはしてないです」

 

隙がないほどの整然とした空間は大人でも息苦しい。少しぐらい散らかっている方がくつろげるものだ。ただ、そのゴチャゴチャした感じが所帯じみず、上質でおしゃれに映るのには、モノの選び方が大きい。ミカさんには、家具でも飾りでも、選ぶ際のモノサシがちゃんとある。

 

「古いものの方が好きですね。それが使われてきた感じや作った人がどんな人か分かるようなものとか。新品や既製品も悪くないし、うちのだんなさんはお茶淹れが割れたら、100均で代わりを買ってくる人で(笑)、それもアリだとは思うんですけど」

 

Roguii

 

Roguii

 

Roguii

 

Roguii

 

古く、そして、味のあるモノばかりが並ぶ。だから、サマになるのだ。例えば、照明も。

 

「ランプシェードは、古いアンティークのパーツを集めて作ったものです。高知にある『アハナムジカ』で手に入れました。私、高知出身の、中西直子(なちお)さんっていう素敵な動物の絵を描くひと・・・料理人でもあるんですけど、彼女とお友達で、『アハナムジカ』も彼女に連れてってもらったんです。彼女のお陰で高知にも、よく通うようになって」

 

かといって家具は、貴重なアンティークばかりというわけでもない。県外までわざわざ出向いて選んだお気に入りもあれば、ごく身近なところでサクッと譲り受けたりもある。

 

Roguii

 

Roguii

 

「実家で余ってた家具をそのまま持ってきたりとかもあります。キッチンの台は、業務用のリサイクルのお店で買いました。フェルトの人形は、知ってるアトリエが6月一杯で終わっちゃうからフリマするって聞いて行って買って。このオモチャも、親戚がオモチャ箱ごとオモチャを処分するっていう時に、じゃその中から1個だけもらってくねって持ってきたんです」

 

テイストや来歴はバラバラ。だが、よく使いこまれた味のあるモノという共通項でまとめれば、ステンレスとフェルトなど異なる素材のモノも見事にミックスされて格好良く、居心地も良い空間が作られるのだ。頑張りすぎず、無頓着過ぎずの、いたって自然体な空間。それはミカさんの人柄そのもの。

 

Roguii

 

Roguii

 

ただ、このおうちにも、この先ずっと住むかは分からないという。

 

「いつかは家を建てたいとも思いますし、でも今は好きなものがたくさんあって、ひとつに決められなくって。材質だけでも、壁は石もいいし漆喰もいいし、あ、でも床は木がいいなとか。建物も、実はトレーラーハウスみたいなのも嫌いじゃないし、ヨーロッパの古いバレエ教室みたいな天井が高くて、細長い窓がついてる建物にも憧れるんです。もっと昔は、球体の家で、ボタン押したらウィーンって開いて、星が見えちゃったりするとかもいいなって…あれこれ想像してるだけ。それが楽しかったりするんですけど」

 

モノと同じように、建物の好みも幅広い。だが、ミカさんのモノサシがあれば、どんな空間もサクサク自分の味つけができてしまうに違いない。

 

ゴチャゴチャ。ただし、上質のゴチャゴチャ。長く愛されてきたモノたちがなし得る雑然。それが格好良いなんて、少しずるい気もするが、それはモノサシがちゃんと定まっているひとの特権だ。

 

文/石黒万祐子(編集部)

 

吉田

写真 D’spec我喜屋若子/文 D’spec沢岻久子

 

D'spec

 

宜野湾市以外の物件もありますか?

 

これは、来店されたお客様によく聞かれる事のトップ3に入る言葉かもしれない。

 

そして答えはもちろん、イエス。

 

私たちディ・スペックが取り扱う不動産を選ぶ基準は、事務所からの距離や地域ではなく、物件としてグッとくるかどうか。その基準を満たすならば、北は国頭村から南は糸満市まで広範囲に取り扱います。

 

北や南の端っこに物件がある場合、移動にかかる時間や距離を数字だけで見ると、とんでもない手間です。行き帰りだけで1日作業になる事も少なくありません。それでも取り扱いたいと思える物件は、匂いがするんです。面白い予感がして、誰かが喜ぶ絵が浮かぶんです。

 

繰り返しになりますが、私たちディ・スペックの仕事は不動産情報を提供する事。土地や建物を提供する人と、欲する人をつなぐ事。

 

気に入ってもらえるなら、これ以外はありえない、と言うぐらいのお気に入りになってほしい。野球で言うならば、ちいさな当たりの内野ゴロじゃなくて、どんぴしゃな当たりのクリーンヒットを狙いたいのです。

 

そんな訳で、今日もせっせと、本島中部の宜野湾市から東村の高江まで行くのです。思い立ったが吉日、とばかりに「今日は晴れてるね。予定は空いてる?今から行くか」とディ・スペック代表の古謝が言い出したのは、ミーティングを終えた午前11時。

 

「今・・・から?」と瞬きしながらも、すぐさま行き帰りの移動時間と、滞在時間を含めた所要時間を割り出す。今すぐ出れば、18時頃には戻って来られると踏んで、大急ぎで準備をし、5分後には車に乗り込み出発していました。

 

D'spec

 

実は私、この東村高江の物件に一度は行ったことがあるのですが、そのとき自分で運転していなかったが為に、道のりに自信がありません。

 

住所を入力しても、グーグル・マップはポイントしないし、県道からの細い進入路には目印もない。どうにかこうにか川付近まで行けたとしても、その先のジャングルを徒歩移動するという、なんとも心細い行程が待っている。仮に、それら全てをクリアしても、帰りの道を無事車で脱出できるだろうかと不安が残ります。

 

というのも、その進入路は車がギリギリ通れる程度の道幅で、岩や石でガタガタな上に、湿った落ち葉が敷き詰められている。帰りはその坂道を上るので、タイヤが空回りし、絶叫マシン並にエキサイティングなのです。

 

思いつきなのか、気まぐれなのか。古謝の突飛な発言にも、即座に飛びついたのは、その不安要素を全て解決する条件が揃っていたからです。道のりを記憶している人がいて、見た目はおもちゃの様でも四輪駆動車があり、カメラを持ってる人がいる。幸いにもまだ午前中で、なにより天候は晴れ。この絶好の高江日和を逃すことは出来ないのです。

 

高速道路の最終インター「許田」を下りても、ここからが長い道のり。ちょうどお昼時ということで、おなじみの「宮里そば」で先ずは腹ごしらえとしました。名護市役所並びにある、大きな三角屋根の食堂は本日も大盛況。迷わずソーキそばを注文し、見知らぬ方との相席にも抵抗なく、琥珀色のかつおダシをじっくり味わう。うーんやっぱり美味しいな、と噛みしめて食べたつもりでも、滞在時間はせいぜい20分だったでしょうか。目的地の東村が待っているので、早々に移動します。

 

D'spec

 

どこをどう通ってきたのか説明出来ないままに、いちばん目印となる東小中学校を過ぎた辺りで、県道から茂みに入ります。でこぼこと揺られながら、川に向かってそろそろと下ると、これぞジャングルという景色が広がったところが、第一ポイント。

 

久々に訪れた東村高江の緑の森は、記憶していたそのままの姿で、静かにそこにありました。

 

頭の上まで枝葉が生い茂り、水面が鏡のように緑を反射して、辺り一帯緑色のグラデーション。湿度を帯びた環境では、苔やシダ植物が生き生きとしています。普段よく見る植物が、とんでもないサイズにまで成長し、私の背丈を超える高さから見下ろしてきて、まるで自分が昆虫になったかのようです。

 

D'spec

 

目的の建物は、まだまだこの先。通常の二輪駆動車ならば、ここで駐車して、山手の獣道を徒歩で移動します。四輪駆動車ならば、この川をずんずん突き進んでも行けるようですが、本日はここから徒歩で移動します。

 

今は静かなこの浅瀬の川も、大雨や台風後は水かさが増すので、この先は車での侵入が出来なくなります。同じく山手の獣道も、大雨の後は土がぬかるみ、歩くのもままならなくなるので、自然と上手く付き合っていかなくてはなりません。

 

D'spec

 

5分程歩いた先に、ようやく見えてきた目的の建物は、築50年程の木造コンクリート瓦の古民家。川との距離感と高低差が絶妙で、川からは古民家が見えて、お庭からも川が見渡せると言う最高に贅沢なロケーション。

 

不動産的につまんない事をいうと、河川には地番がないので所有する事は叶いませんが、この距離感はもはやお庭。そう簡単に立ち入る人もいないので、プライベートリバーと言っても過言ではないでしょう。

 

D'spec

 

よく見ると、こんな山奥にもちゃんと電柱があり、電気も電話回線も引き込まれています。さすがに水道管は設備されてはいませんが、水道の蛇口をひねると冷たい自然水(山水)が出るので、エコ生活を存分に楽しみましょう。

 

D'spec

 

母屋に小さな建物が増築され、2つの三角屋根が連なります。母屋には、畳間が2間と、改装されたフローリングが1室。それと、土間部分に台所と、洋式トイレと、浴室があります。増築された建物には、フローリングの洋間が1室のみで、3面ある窓はアルミサッシで、明るく開放的。
前住人が全体的に改装を施しているので、天井材や壁板はどちらかと言えば、新しいぐらい。

 

コンクリート瓦屋根の、古いんだか新しいんだか分からない、桜と星モチーフの鬼瓦が気になります。

 

D'spec

 

D'spec

 

さて、この古民家をどうリノベーションしようか思案します。これだけ魅力的な環境なので、古民家の特徴を引き出す程度でいいのかも知れない。下手にあれこれいじくり回すと、かえって残念な事にもなりかねない。かと言って、このままでは、不便一辺倒になってしまう。

 

さて。さて。さて。

 

D'spec

 

前住人の忘れ物と思しき、濡れ縁下の大きな鍋。何か用をなしているのだろうか、まさに縁の下の力持ちの絵面にシャッターをきる。

 

敷地面積もスケールが違います。およそ900坪の敷地の形は、ブーメラン状に建物裏手にぐるんと伸びる。隣家もなければ、敷地境界に塀があるわけでもなく、ただただ緑の景色がどこまでも続きます。

 

敷地内にはシークワーサーの木が幾つもあり、たわわに実った果実が自然落下して、あちこちに散らばっています。
そうか、そういう風にして肥やしとなり、栄養いっぱいの腐葉土ができるんだな。とやり過ごすわけもなく、そこはちゃっかり収穫しちゃいます。古謝の長身を持ってしても届かないところは、手鎌を持ちだして枝ごとカット。タイミング良く拾った残置物のホーロー容器に入れていきます。

 

ホーロー

 

D'spec

 

小一時間は居たでしょうか。ひとりは写真を撮りまくり。ひとりはまじめに建物や敷地をチェックしたり、通風したり。ひとりは小川で大はしゃぎ。見たことのない虫がいるだの、川がきれいだの、シークワーサーが美味しいだの、ひとしきり自然と戯れたところで「帰るよー」の声に我に返る。

 

そうだ、仕事中なのだった。

 

帰りしな、名護市安部の川辺で見かけたカヤック集団に目が止まり、少し寄り道してみる事にしました。近くに寄ると、どうやらそれは中学生ぐらいの生徒さん達で、「やんばる自然学校」のコーチらしき男性に、カヤックの乗り方のレクチャーを受けているところでした。しばらく見学した後、集落の方へ目を移すと、昔懐かしいのどかな風景と防風林の先に見える海に、吸い込まれました。誰もいない静かな海と細かくてきれいな砂浜に、四輪駆動のパンダ号も大はしゃぎ。

 

D'spec

 

D'spec

 

なんだかんだで、事務所についたのは18時前。宜野湾市から東村まで往復すると、やっぱり1日作業になってしまう。遊んでいるように見えるかもしれませんが、いえいえ、やる事はやりました。道を知ることは不動産業にとって重要な事で、地域の特徴を把握する事も大切な業務。あれも、これも全部仕事です。

 

リノベーション計画中物件までの道のりや場所も理解したし、建物現状や敷地状況も確認し、環境を体験し、空間も体感しました。私達の仕事は、物件のリアルな情報を、言葉や文字や写真でお伝えする事。写真で見た情報や、人伝えの情報で伝言ゲームにならないように努めます。何より、自分自信がその物件を気に入っている事が大切。自信をもっておすすめできる物件であれば、嘘のないセールスができるのです。

 

何度も通っている古謝と、2度目の私と、初めての我喜屋の感じ方はそれぞれ違うし、初めてのインパクトを味わった彼女のはしゃぎっぷりに確信しました。

 

間違いない!この物件、匂いがします。誰かが喜ぶ絵が浮かびます。

 

リノベーション古民家、乞うご期待。

 

ディ・スペック株式会社
http://www.dspec.jp
〒901-2201沖縄県宜野湾市新城2-39-8 MIX life-style2F
tel:098 893 5015 Fax:098 894 2285

 

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D'spec
売買マンション「レトロ、はじめました(売買)」
沖縄県那覇市泉崎/3LDK(7.2・6・6・LDK10.5)
価格:1,380万円
http://www.dspec.jp/date/pg822.html

 

D'spec
賃貸戸建「あのお城のたもと」
沖縄県那覇市首里大中町/3DK(和5.5、和5.2、洋9、DK9.3)
賃料:58,000円
http://www.dspec.jp/gaijin/date/pg647.html#あの城のたもと

 

D'spec
賃貸アパート「hug5+」
沖縄県中頭郡中城村字南上原/1K(洋7.4 帖・キッチン2.5 帖)
賃料:45,000円
http://www.dspec.jp/date/pg823.html

 

吉田

Day1
〜Summer Coordinate〜
KRAMPスナップ
由衣さん
ハット TESTA
シャツ KAPITAL HONOR’S STORE
デニム LEE
バッグ ichi

 

哲哉さん
Tシャツ 不明
パンツ Dickies
シューズ Clarks

 

 

Day2
〜Summer Coordinate〜
KRAMPスナップ
ワンピース FABRIC
バッグ ZARA

 

KRAMPスナップ
ハット BLUEBLUE HONOR’S STORE
シャツ 無印良品
ハーフパンツ 藤井衣料店
シュズ CHACO

 

 

Day3
〜Summer Coordinate〜
KRAMPスナップ
ブラウス FABRIC
デニム LEE
シューズ MINNETONKA

 

KRAMPスナップ
Tシャツ WORNFREE

 

 

Day4
〜Autumn Coordinate〜
KRAMPスナップ
由衣さん
ワンピース ichi

 

哲哉さん
Tシャツ BLUEBLUE HONOR’S STORE

 

 

Day5
〜Autumn Coordinate〜
KRAMPスナップ
由衣さん
ジップアップブラウス Edition
パンツ YAECA
バッグ TILA MARCH
パンプス durbuy

 

哲哉さん
Tシャツ Hanes
デニム UNIQLO
シューズ CHACO

 

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「名古屋にいた頃は黒い服が大好きで、全身真っ黒でした(笑)。最近お気に入りでよく着ている深緑の一色のワンピースなんて、手に取ったこともないかも。名古屋の友人が沖縄に来ると、私の服にみんな驚くんです(笑)」

 

沖縄に暮らすようになって、服のテイストが変わったというのは、名古屋から嫁いできたKRAMP COFFEE STOREの由衣(ゆき)さん。黒い服が多いから、目下の楽しみは、沖縄の気分に合う服を探すこと。そのショッピングはいつもご主人の哲哉さんと一緒だ。

 

「気候で着たい服って変わるんですね。休みの日は、結構服を探しに出かけてます。哲ちゃんは、買いすぎ!と思ってるみたいだけど、気にいるものを見つけたらいつもすぐにOKを出してくれます(笑)」

 

由衣さんと哲哉さんとの出会いは、名古屋で、哲哉さんが沖縄から名古屋に出て服屋で働いていた頃。仕事にしていたくらいだから、さぞファッションフリークかとおもいきや。

 

「僕も着る服変わりました。って言いたいところなんですが……、ずっと同じです(笑)。趣味が変わらないからか、僕はあんまり今は買わないかな」

 

沖縄の濃い景色に似合う色。暑さと湿度の高さの中でも、快適に過ごせる風通りのよい生地。由衣さんの服選びの基準はまるっきり変わったような気もする。でも、名古屋にいた頃の服は、完全にお蔵入りしているわけでじゃない。

 

「落ち着いた色の服もちょっと寒くなると、やっぱり着たくなります。そんなときは昔の服が大活躍です」

 

冬は特に雨が多い沖縄なら、確かに黒い服もインな気分になる。由衣さんのお洒落は、開放感溢れる沖縄と都会的な名古屋のミックスコーデ、土地を楽しむお洒落なのだ。

 

 

KRAMP
KRAMP COFFEE STORE(クランプコーヒーストア)
沖縄市泡瀬5-32-2
098-938-0833
open 7:00~18:00
close 木・金
FB www.facebook.com/krampcoffeestore

 

関連記事:KRAMP COFFEE STORE(クランプコーヒーストアー)
GOOD COFFEE & GOOD CAKE 毎日飲みたい「疲れない」コーヒー。

 

吉田

まるたま

 

「実は、チップス(ポテトフライ)だけ下さいって言われると、嬉しいんですよね」

 

そんな意外なことを言うのは、フィッシュ&チップスまるたま店主、玉代勢 卓(たまよせ すぐる)さんだ。

 

「魚を食べてもらえなくなったら困るから、そんなこと言わなくていいよ(笑)」とキッパリ隣で諭すのは、奥様の藍さん。

 

「でもっ、僕は、やっぱりチップスが一番…。一番、チップスのことを考えてる。頭の中、チップスのことしかない…」

 

「もうこの人、じゃがいも大好きだから」

 

朴訥と、丁寧に言葉を選ぶように話す卓さんと、ポンポンと言葉が出てきてハキハキと明るい藍さん。そんな話すテンポも(きっと性格も)、正反対の夫婦の掛け合いが楽しい。

 

まるたま

“まるたまプレート”。フィッシュまたはチキンが選べる。チキンの唐揚げは、藍さんのお母様直伝の味付け

 

チップスだけ下さいと言われて嬉しいのは、それだけ卓さんがチップス作りに情熱を傾けているから。

 

「ポテトは自分の手間暇で、美味しくしてる。魚は、魚自体の味の美味しさってあるけど、もちろんポテトもあるんだけど、ポテトの方が、自分がうまさを引き出してる気がする。なんか自分がこだわってやってるものを食べてくれるのが、嬉しくて。『美味しい』って、『家でやってみたけど、おんなじようにできないよ』って言ってもらえるのが、嬉しくて」

 

まるたまのチップスは、ただじゃがいもを揚げただけではない。お店で出すまで何時間もかけて下準備をするのだ。

 

「じゃがいもは、1度茹でてから2度揚げするんです。朝7時から、茹でて1度揚げてっていう作業を11時くらいまでやってます。だからフィッシュ&チップスを出せるのは11時以降。揚げてから冷まして水分を飛ばす時間が必要なんで。7時からお店開けてますけど、朝まるたまメニューは、たまごサラダホットサンドだけになりますね」

 

チップス作りで1番難しいのは、意外にも茹で加減だと言う。

 

「本当は長く茹でたほうが、外はサクサク、中はふんわりで美味しいんです。でもあまり長く茹で過ぎると、湯を切るときに形が崩れてしまったりするんです。だから、形が崩れるか崩れないかギリギリのところで。今ここで上げるのがいいのか、あと30秒待とうかとか。ちょっとの差で味が違うんです。じゃがいもの種類によっても茹で時間が変わるから、茹でている間は目が離せないんですよ」

 

まるたま

 

もちろん、どの種類がチップスに適しているか、卓さんは研究済みだ。

 

「熊本のホッカイコガネという種類が一番美味しかった。外はサクサクで、中がトロッととろけるんです。他のじゃがいもは中がふんわりするけど、トロリとはならない。でもこのホッカイコガネは期間が限定されちゃって。それ以外では、男爵系がポテトフライにはいいよって言われてるけど、メークインのほうが中がもっちりして、美味しい気がする。甘い感じなんですよ。男爵とかはそこまで甘くない感じがする」

 

するとすかさず藍さんが、「じゃがいもソムリエのようでしょ(笑)」と茶々を入れる。

 

「塩加減も難しいですね。味付けは最小限にしたいから、塩は茹でるときしか入れません。小麦粉も使わないです。小麦粉をまぶして揚げると確かにサクサクになるんですよ。でも使いたくなくて。そのままのほうが絶対いい。ポテトだけで美味しくしたいんです」

 

魚にまとわせる衣も、余計なものは入れずに最小限の材料で。

 

「衣の材料もなるべく少なく、小麦粉と塩、こしょう、あとはビール。卵やベーキングパウダーは入ってないです。衣がサクサクしてるのは、ビールが入ってるから。オリオンのサザンスターです」

 

魚もチップスも、揚げるのは注文が入ってから。歯がサックサクの衣を通過すると、水分がしっかり保たれて、とってもジューシーな魚が。フワッフワで身が崩れてしまいそうに柔らかい。

 

まるたま

魚は、沖縄近海で穫れるシイラ(定期的に放射能検査を実施)か、ニュージーランド産ホキ。両方あるときは、1切れずつ

 

ここまでこだわる卓さんだから、当然フィッシュ&チップスの食べ方にもお勧めがある。

 

「まずは、チップスにモルトビネガーをかけて、ケチャップをかける。カップも用意してるんだけど、それは使わず直接ダーッとかけて。それで魚にはタルタルソース。あとコーラ。このセットが多分最強です。でも一番お勧めなのは、チップスだけとコーラ(笑)。フィッシュよりもチップス。みんなそうだと思ってた(笑)」

 

まるたま

 

卓さんは、チップス&コーラが大好きだが、もっと好きなものがある。フィッシュ&チップスサンドだ。柔らかな食パンに、フィッシュとチップス、タルタルソースが挟まっている。

 

「サンドイッチに使うチップスと、ポテトフライとして出すチップスは、同じじゃがいもだけど、使う部分が違うんですよ。サンドイッチに入れるのは、じゃがいもの端っこの細々したところで、ポテトフライとして出すのは、きれいなスティック状になる中心のところ。端っこのほうがサクサクしてて、僕は好き。自分が食べるのはいつも端っこのところです。このサンドイッチはチョーオススメ。これが一番好きかな」

 

このメニューは、パンやご飯と一緒に食べたいという客の要望から生まれたんです、と藍さん。

 

「『フィッシュとチップスだけじゃ、ご飯にならない。パンかご飯をつけてくれ』ってお客様からすごく言われて。じゃ、パンに挟んでみようかと、苦肉の策からできたオリジナルメニューなんです。私も主人も、フィッシュ&チップスって完全食だと思ってて。ポテトが主食で、それに魚がついて。これだけで、ご飯になるし、おやつにもなるし、お酒のおつまみにもなるって。だからご飯かパンをつけるのは、最初はすごく抵抗あったんですよね。でもやってみたらサンドイッチも美味しいし、ご飯にも合う。主人もまかないで、ご飯の上に魚とタルタルソース乗せて、お醤油垂らして食べてますもんね」

 

こうして、ご飯が添えられた“まるたまプレート”も生まれた。「主人は、フィッシュ&チップスで満足しちゃって、新しいメニューを開発しないから(笑)」と藍さんのアイディアだ。

 

まるたま

 

まるたま

 

「フィッシュ&チップスって、僕が住んでたニュージーランドでは、決しておしゃれなものじゃない。魚もやたらでかくて、新聞を大きく広げて、真ん中にボンって置いて、それで包むみたいな。ポテトと魚と塩、それだけ。シンプルでそれだけの方が絶対いいなと思ってる。だから飾りみたいなのも付けたくない。素っ気ないくらいがいいんです」

 

お店も同じく、おしゃれじゃないのが好きで、ちょっと鈍臭いくらいにしたいのだと言う。

 

「チップスだけとかだと小さい紙コップで出すんですけど、学生さんや近所の人たちなんかが、200円とか300円で気軽に買って、食べながら帰るような。町の駄菓子屋さんみたいな店になったらいいな」

 

実際、駄菓子屋のように小学生が通ってくる。ここ曙という土地は人との距離が近くて、子供たちもみんな人懐っこいと藍さんは目を細める。

 

「そこにウォーターサーバーがあるでしょ。近所の小学生が学校帰りに5,6人でゾロゾロとお店に入ってきて、水を飲んでるの(笑)。何度か来てて、あるとき水飲んだ後、1人の子が『えーと、チキンでも買おうかな』って、急にお客さんになっちゃって(笑)。そうやって小学生がお客さんになってくれるのは嬉しいですね。チキンって2ピースで売ってるんですけど、なぜか3ピース買いに来る子もいて。『うちね、2ピースずつなんだよー』って言っても『3ピース』って。3人兄弟なのかなと思いつつ、3ピースで売ってあげたりして」

 

1日に何度も来られる気軽さも駄菓子屋のよう。昨日は3回来てくれたお客さんがいたと嬉しそうな卓さん。いつも声をかけてくれる常連さんとのふれあいも楽しみの1つだ。

 

「隣の酒屋のお客さんがさ、ここでチップスだけを注文して、酒屋の店主とおしゃべりしながら缶ビール飲んでる。隣におじさんの席があるわけ。昨日もお店閉めようとしてシャッター下ろしてたら、『ひとつ〜!』って言われて。『はいはーい』ってチップス持って行った。隣だけは配達してます(笑)」

 

まるたま

 

卓さんがフィッシュ&チップスの店を始めた1番の理由は食べて美味しいなと思ったからだが、2番は生まれ故郷である宜野座の名産、じゃがいもを使えるからだ。

 

「勝手に宜野座のアンテナショップにする。誰にも頼まれてないけど(笑)。宜野座、じゃがいもの産地指定受けたけど、あまり知られてないでしょ。そのうち、ホッカイコガネとか紫色のじゃがいものシャドークイーンの種芋見つけて、宜野座で農家やってる父親や他の農家さんに育ててもらいたいな。あ、じゃがいも入りサーターアンダギー、食べたことあります? サクサクでフワフワでチョー美味しい。大好きで僕達の結婚式の引き出物にしたくらい。今度宜野座で見かけたら是非食べてみて下さい。ここでも出したいんだけど、反対されてるから。『揚げ物に揚げ物のスイーツはいらないんじゃない』って」

 

そう言って、藍さんを見やる(笑)。

 

宜野座出身だし、王道じゃなくてマイナー、その上ちょっと鈍臭い。これが僕の生き方だと言う卓さん。そうだとすれば、この店は、卓さんの生き方そのものだ。

 

素朴だけど、味があって、ドスンと構えていて、誰からも好感を持たれる。これが卓さんだろう。あれ、とここで気がついた。これってまるで卓さんが愛してやまない、じゃがいもそのものじゃない、と。

 

文/和氣えり(編集部)

写真/青木 舞子(編集部)

 

まるたま
fish & chips まるたま
那覇市曙2-15-12-102
098-955-2093
火〜木 7:00~20:00
金 7:00~21:00
土 9:00~21:00
日 9:00~19:00
(LOは、それぞれ閉店時間の30分前)
close 月

 

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