ROASTED GREEN TEA APARTMENT(ローステッド グリンティー アパートメント)/日本茶を、もっと気軽に格好良く、面白く。焙じた香り漂う、県内初のほうじ茶カフェ

ほうじ茶屋のほうじゼリー

 

「スターバックスの日本茶版みたいな(笑)。もっと手軽に、格好良く、日本茶を提案したいんです。カフェに行く人たちが、『今日は、コーヒーじゃなくて、お茶にする?』っていう感じで、選択肢の一つにもっていきたいですね」

 

沖縄そばの店 “EIBUN”(関連記事)を手がける中村栄文さんが2店目にオープンさせたのは、そばとは畑違いの日本茶のお店。「気軽に格好良く日本茶を」。なるほど、街角にあるコーヒースタンドならぬ日本茶スタンドをイメージしたという小さなキッチンは、親しみの湧く愛らしさだし、シャーベットブルーを差し色にした客席は、ほどよくカジュアル。老舗のお茶屋が営むような敷居の高さはなく、背伸びをせずとも気軽に足を運べる雰囲気。

 

それだけでなく、客席は使い勝手がよいように工夫されていて、日本茶が生活に馴染むものであることも教えてくれる。

 

「ここをコワーキングスペースのように勉強や仕事、ちょっとしたミーティングもできる場所にしたいと思って。3,4名の個室や、10人くらいでミーティングできる大きなテーブルも作りました。ワークショップをしてもらったり、貸し切りも大丈夫ですよ。もちろん一人で黄昏にいらしても。ちょうど2年前くらいですかね、僕自身、那覇で打ち合わせをするのに、ちょうどいいお店を探せなかったんです。飲み屋ばかりだし、カフェだとコンパクトな店で長居できない。一人で仕事ができるような場所も欲しかったんです」

 

 

そういえばミーティングやパソコン仕事のお供といえば、当たり前のようにコーヒー。けれど、日本茶がスタンダートになってもいい。この店にいると、“おばあちゃんのもの”というお茶のイメージが覆され、コーヒーみたく格好のいい、オシャレなものと思えてくる。

 

何が格好いいかといえば、この店に漂う香り。カフェにコーヒーの香りが充満しているように、ここにはほうじ茶の香りが。そもそも店名にもなっている“roasted green tea”とは、ほうじ茶のこと。一度蒸した荒茶という状態の茶葉を、お店で自家焙煎している。店のドアを開けた途端、香ばしさに包まれる。

 

「コーヒー専門店だと、店に焙煎機があっていい香りがするでしょ。あれをお茶でできないかなって。焙煎したかったんです。他ではあまりやってないし、焙煎の時間とか温度とかで全く違う仕上がりになるのが面白くて、そういう研究もしたかったんです。でもお店に置けるような日本茶専用の焙煎機ってないんですよ。工場で使う大きなものしかなくて。だからコーヒー用の焙煎機を使っています。焙煎したら冷蔵庫で半年くらいはもつんです。でも香りや味わいの質が落ちるんで、うちでは少量ずつ焙煎して、なくなったら焙煎します。常に香りの高い状態のほうじ茶を使うようにしています」

 

全てのテーブルに電源が備えられている。

 

日本茶の産地といえば京都や静岡が有名だが、栄文さんが焙じている茶葉は、なんと沖縄県産というのだから驚く。

 

「名護の金川製茶さん(関連記事)。紅茶が有名だけど、日本茶も栽培しているんです。畑を見に行ったんですけど、なんだろ、面白い違和感がありました。亜熱帯の沖縄なのに、ちゃんと茶畑が広がってる。すごく嬉しくなって。金川製茶さんが言うには、『静岡や京都の一流のものに比べれば、正直質は下がります。気候も違うので』って。でもとても美味しいんですよ。一生懸命作っていらっしゃるし、せっかく沖縄でやるんだったら沖縄のものを使いたいと思いました。焙煎の仕方で、その茶葉のポテンシャルをできる限り引き出せたらいいなと思って、模索してる最中です」

 

ほうじ茶ラテ

 

主力のほうじ茶メニューは、急須で出てくる温かいものはもちろん、ほうじ茶ラテや、ほうじ茶ソーダ、ほうじ茶クランブルモカなど、沖縄では珍しいドリンクやスイーツが並ぶ。

 

そのどれもに際立っているのが、ほうじ茶自体の味。チョコレートのようなコクのある香ばしさがありながら、スッキリと後味爽やか。味わいが濃いけれど、渋みが出ているわけではない。ほうじ茶ゼリーにしても、ほうじ茶ジェラートにしても、ツルンとした舌触りやまろやかさがプラスされていて、ほうじ茶そのものを口にしているよう。新鮮で懐かしい。思わず頬が緩み、ホッとする。日本人でよかったとしみじみ思う。

 

期間限定メニュー ほうじ茶クランブルモカ

 

どのメニューもほうじ茶の美味しさを十二分に引き出せているのは、自身を「日本茶オタク」と呼ぶほど、栄文さんが研究を重ねてきたから。

 

「いや〜、ヤバイのに足突っ込んじゃったなと思って。極めようと思ったら、10年20年じゃ足りないですよ。ほんと日本茶って奥が深いんです」

 

その言葉とは裏腹に、嬉しそうな笑みを浮かべる。「ヤバイ」は、「すごい」や「素晴らしい」の意味だろう。その奥深さこそが、栄文さんを虜にした。

 

「日本茶を調べていくうちに、これは面白いって。まだ世に出てないんじゃないかって。これは広めたい!と思いました」

 

あんバタートーストと、ほうじ茶ソーダ

 

抹茶ラテ

 

ほうじ茶の何がそんなに栄文さんを惹きつけたのだろう? 栄文さんは、地方による違いをあげる。

 

「ほうじ茶って、地方によっては呼び方が違って、“番茶”っていうところもあるんです。それは、最後に摘むお茶だから、晩年の晩茶っていう意味。新茶の茶葉はそのまま飲んでも美味しいけど、10月くらいの最後の方に摘むお茶は、どんどん味が劣化して。その劣化をカバーするのに炒ったのが、番茶、ほうじ茶のそもそもの始まりです。焙じ方も地方によって違うんですよ。京都の煎り番茶は鉄板で、宮崎の釜炒り番茶は窯で炊いたり。しかも産地が全国にあって、気候が違うから味わいも違う。日本独自の文化が成り立っていて、それがこの小さい島国で独自の進化をしてるんですよね。コーヒー豆よりちょっと面白いんじゃないかと思って。コーヒーは世界中にあるけど、日本茶は日本にしかないですから」

 

茶器や陶器の販売も。COCOCOのおうち型キャンドルホルダー

 

日本茶の産地を尋ねるうち、栄文さんは静岡で“ほうじ茶博士”なる人物とも出会った。そこで出会ったほうじ茶がさらに栄文さんの好奇心をくすぐった。

 

「『これ、さっき焙煎したやつ』って見せてもらったのが、知ってる焦げ茶の茶葉じゃなくて、黄金色してたんです。『香りを嗅いでみ』って言われて嗅いでみたら、すごいフルーティな香りがしたんですよ。コーヒー豆でいったら浅煎りの豆みたいな。次に『噛んでみ』って言われて、噛んでみたらすごい美味しいんですよ。『これ、なんなんですか?』って聞いたら、『新茶を焙じたやつ』って。その新茶の時期しかできないんですよね。新茶って高級だからなかなか焙じないけど、新茶自体を焙じたらすごい香りがして、料理にもめっちゃ使えそうなんですよ。来年は新茶の時期のを焙じてみようかなと思っているんです」

 

もう楽しくてしょうがないというような満面の笑み。誰もしていないことに面白さを感じるという栄文さんは、食事メニューにもアイディアが尽きない。

 

「新作は、日本茶の茶葉でスモークした、お茶の香りのするソーセージです。ホットドッグにしました。日本茶と合わせるのに、定番のものじゃつまらない。『えっ』って言われるようなものを出して、もっと面白くしたいです」

 

スタンダードホットドッグ

 

 

ちなみに栄文さんは、岩手県出身。お茶の産地出身ではなく、日本茶と縁深かったわけでもない。「日本が好き過ぎ」るから、出身地に関わりなく日本の素晴らしいものを海外へ広めたいという夢がある。

 

「10代の頃は、田舎が嫌でとりあえず東京出たいって。でも東京住んでる時も、日本嫌だなって思ってたんですよね。そういうタイミングで仕事で海外に住んで。外に出たら、日本ってこんなにいいところだったんだって。なりたいものになれる自由があるし、食のバラエティさもある。安全さとか衛生面とかもすごいけど、海外の人がハッとするようなモノや技術がまだまだ沢山あるんじゃないかと。そういう宝物を見つけちゃうと、ワクワクするんですよね。それが僕にとっては、沖縄そばだったし、日本茶だったんです」

 

みんな沖縄そばも日本茶も知ってはいるし、好き。けれど、それが“面白いもの”とは気づけていない。日本茶をもっと気軽に格好良く。そして面白く。栄文さんが、沖縄から、海外から、これからも気づかせてくれるに違いない。私たちの日本茶の、底知れない“面白さ”を。

 

写真・文/和氣えり

 

 

2019年1月から、ROASTED GREEN TEA APARTMENTは、完全予約制の貸スペースになります。現在、カフェの営業は一時お休みしておりますので、ご注意ください。

 

また茶葉の卸売業として、焙煎や、お茶と県産ハーブとのブレンド茶葉、ほうじ茶で作るスパイス焙じchaiなど、日本茶をより楽しめる様々な商品開発もしていきます。

 

 


ROASTED GREEN TEA APARTMENT(ローステッド グリンティー アパートメント)
那覇市松尾2-6-12 3F

https://www.facebook.com/roastedgreenteaapartment/
https://www.instagram.com/roasted_green_tea_apartment/