趣味のサーフィンからデザインした、サーフボートが似合う空間
画家モネが好きなお客様に材質と色味で絵画の世界観を表現した家
思い出の和室はそのままに、希望のレトロモダンな空間も叶えた家
「これ、全部リノベーションです。最近多いですよ。予算的に土地探しから始める新築よりコストを抑えられることがほとんどですし、長く使われた建物にしか出せない風合いを好む方も多いですね。リノベと一口に言っても、ご要望は色々なんですよ。ご夫婦そろってサーフィンやアウトドアに夢中なお客様が『趣味を満喫できる空間にして』とか、他にも『モネの絵みたいな美しさがほしい』と望む方。それから、ご両親から受け継いだ家で、『親戚が集まる仏間は残したいけれど、好きなレトロモダンな空間もあきらめられない』と言う方も…」
LSD designがデザインした空間には、住む人のライフスタイルが色濃く現れている。それは何かと制約の多いリノベーションでも、だ。世に全く同じ好みの人がいないように、LSD designの手がけた家にも似通ったものは一つもない。
代表の平良玄峰(はるたか)さんは、幅広いデザインが可能な理由を、30名いる個性的なスタッフの力によるものだと考えている。
「一般的な設計事務所だと、社長の色がすごく強く出るんですよね。スタッフは、その色に添ってやっていくという形が多い。でもうちはスタッフ全員に個々の色と実力があるので、僕のお客さんじゃないお客さんも多いんですよ。初めにじっくりお話して、お客さんとスタッフの個性をマッチングするので、お客さんも自分の好みを一番よく理解してくれる人に依頼できる。いろんな個の集合体なので、どんな要望にも応えられるんです」
個性的なメンバーが30名もいると、それぞれの得意分野は多岐に渡る。
「目立つところでいうと、女性スタッフはやっぱりキッチン周りに強いんですよね。キッチンに要望が多いのは、やっぱり奥様の方ですけど、それを上手に引き出してくれます。グラフィックが得意なスタッフは、設計後にデコレーションって意味でのデザインができますし、家具のセレクトやスタイリングのセンスが良いスタッフは、空間の雰囲気を作りあげるお手伝いが喜んでもらえてるかな。あとは、手続きというか、現実的なことというか、土地探しや銀行からの借り入れなどが専門のスタッフももちろんいます」
そして、その30名全員が共通して持っているのが、デザインへの情熱だ。
「なによりみんな、デザインが好きなんです。デザインのことはいつも考えていますよ。飲みに行って酔ってても、ここの天井までの高さは…カウンターの材質は…とか考えてて、もうみんなオタクですよね(笑) でも、居心地が良いお店って、単に料理がおいしいだけじゃなくって、イスの高さや照明の明るさがちょうど良いとか、他の要素も積み重なってのものなので、それを突き詰めて共有して、またデザインに活かすんです」
子供たちが駆け回れるようにと、動線とスペースを考え抜いたキッチン
個性の強い面々だが、彼らをデザイン集団としてまとめているのが、LSD designのメソッド。それは、家具から始める空間デザインだ。彼らの設計はいつも、小さなお気に入りのひとつを聞くことから始まる。
「マグカップ1個でもいいし、イス1脚でもいい。その答えが、サーフボードなら、それが映える壁の質感は? 床の色は? それに合うイスやテーブルは?…という風に点から線を、面をつないでいけば、お客さんの望む通りのデザインができるんです。空間は小さなものから作り上げていくことで、緊密でバランスの良い空間になりますからね。これはリノベーションも新築も同じですが、リノベーションは、空間がシンプルになりやすいので、特にこだわりたいところです」
そんな家づくりの窓口になればとの思いからLSD designが始めた家具や雑貨のセレクトショップ『P+(ピープラス)』は、より充実したサービスを提供するために、販売だけにとどまらず、サロン的な相談窓口へと変化を遂げる予定だ。
「スタッフはみんなプロですから、家具や照明だけでなくて雑貨についても常に新商品をチェックしていますし、定番や名産品っていうのかな、ヴィンテージ家具や伝統工芸品の深い知識を持つスタッフもいるんです。なので、お気に入りの何か一つを聞くだけで、お客様の望む空間構成がパッとイメージできるんですよね。そんなスタッフの知識をうまく活用してほしいなって思うんですよ。家具を買って、いざ家に置いてみたら大き過ぎた…なんて失敗談もよく聞きます。家具1つ、照明1灯選ぶところから、コーヒーでも飲みながら気軽に相談してほしいです。うちのスタッフは、選んだ家具や照明がどれぐらい空間に影響するのかっていうのも、工事の中でも家具が占める予算のウェイトも一緒になって考えることができますから。たとえば照明器具なんて、ちょっとこだわって良いのを入れても実はそんなに高くないんですよ。ダイニングテーブルに、自分の好きなペンダントライトが灯るだけで食事の時間も楽しくなるとか、そんなことを伝えられる店になりたいんです」
空間を作るための家具へのこだわりは、その空間に合わせたオリジナル家具の製作にも及ぶ。
「もちろん手間は凄くかかりますが、自分たちでデザインしてしまった方が、その空間の持つ雰囲気とのズレがないですから。キッチンなんかは特に、人それぞれこだわっている部分が違いますからね。僕たちも、オーダーキッチンはやはり喜ばれていますよ。しかも中途半端じゃない、図面から引いて身長1センチごとに対応できる完璧なオーダーキッチンですから。あとは、テーブルやボードといった木などの硬いものだけじゃなくって、ソファみたいな布や革のデザインもできますよ。背もたれにクッションを入れたチェアを作ったり、デニムのパッチワークで座面のカバーを作ったり。よく売っているような学習机じゃなくて…っていう要望で、子供部屋の机を作ったこともあります」
家具ひとつもおろそかにしないのは、バランスの取れた空間への強い想いがあるから。
「リノベーションはできるだけコストをかけずにデザインする場合が多いですね。だから修繕して、外枠を整えて、内装を決めてってやっていくと、家具は最後になり、息切れしてしまいがち。でも、デザイン的には本当は家具から始めるべきなんですよね。家って、人生でも大きな買い物じゃないですか。せっかく大きな買い物をするのに、時間がないからとか値段が安いからと妥協して買った家具をポンとひとつ置いただけで、空間全体が台無しになるのは見たくないんです。ちゃんと空間全体が調和するように、モノからこだわりたいんです」
新築住宅や商業施設でも、シンプルなモノから広げていく、緊密でオリジナリティを大切にした空間デザインは変わらない
スキップフロアを駆使した、移動さえも楽しい忍者屋敷のような住宅
フェルメールの絵画と燦然と輝くシャンデリアの異素材がミックスした空間
お客さんの選んだ家具一つから求められているデザインを推し量り、個性をマッチング。時には家具までを手がけ、そのひとのためだけの空間を作りあげていく。その満足度は、その後のお客さんからも知ることができる。
「うちには設計士や現場をやる人間はもちろん、グラフィックデザイナーや家具のアドバイザーなど、いろんな人間がいます。でも、この会社に唯一いないのが、営業マンなんですよ。お客様がお客様を紹介してくれるから、営業は必要ないんです。店舗を手がけたお客様に、住宅のリノベーションも頼まれたり、新築住宅のお客様にまた新しいお客様を紹介して頂けたり、そんな風にどんどん関係が広がって深まっていくのが一番うれしいことですね」
文 石黒 万祐子
LSD design co.,ltd (エルエスディ デザイン)
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