NAKAI


茂木健一郎・著   講談社 ¥571(税別)/OMAR BOOKS
 
― 赤毛の少女のように、ひたむきに ―
  
先週末からまた雨続き。
夜遅くまで雨音を聞きながら読書するのは至福の時。
さあ、これから読もうとたくさん積んでいた中から取り出した一冊がこの本。
 
脳科学者の茂木さんと「赤毛のアン」が結びつかない。
彼がモンゴメリの名作「赤毛のアン」と11歳の時に出会って以来、現在に至るまで重要な本であることに変わりはないという(何でもつい最近までこの本の愛読者だということを隠していたそうだ)。
その意外性に興味を持って読み進めるとそんな話だったんだ!と児童文学として知られている「赤毛のアン」のイメージががらりと変わった。
「アン」シリーズを読み直してみようと思わせてくれる力を持っている。
とにかくこの本を読んでみると茂木さんにとって、すごおくなくてはならない本だということがよくわかった。
 
誰にでも理由は分からないけれど何故か心魅かれる本、というのがある。
運命の一冊、みたいな。
その理由を探しながら読むことは「自分を読む」ことだと同じことだと最近よく思う。
だから例えば、自分にとって何が幸福かってことを考えるときに好きな本に立ち還って読むことはとても役に立つ。
この茂木さんの本はそのことを分かりやすく伝えてくれる。
 
「赤毛のアン」には私たちにも通用する幸福になる方法がしっかりと描かれている。
この本のキーワードをいくつかをあげると「想像力」「受容」「ひたむきさ」「偶有性」「セレンディピティ」などなど。
それらをもとに茂木さんが自身の経験にも触れながら、物語の秘密をとてもスリリングに紐解いていく。
 
巷にはいろんな幸福論があふれている。何を採用するかはその人の自由。で
もそれ次第で一度きりの人生の内容は大きく変わってしまう。
また必ずといっていいほど私たちはある年齢の要所要所で人生の曲がり角を迎える。
その岐路に立たされたときに揺れ動くことは当然で、まずは現実の自分を受け入れることからしか何も始まらない。
 
赤毛の少女から学ぶことは、ひたむきに、あきらめずに生きるその姿勢。
そうしたときに茂木さんが言うには奇跡のような「何かが来る」のだそうです。
やることをやったら前向きにどーんと構えて待つ。
ただし、楽しみながら、ね。
 
「赤毛のアン」を読んだ人もこれから読む人も、自分に合った幸福の形を見つけるための参考にぜひご一読を。

OMAR BOOKS 川端明美




OMAR BOOKS(オマーブックス)
北中城村島袋309 1F tel.098-933-2585
open:14:00~20:00/close:月
駐車場有り
blog:http://omar.exblog.jp

NAKAI

食堂かりか
 
カレーに入れられた野菜は目に見えるものだけでなはい。
形がなくなるまでじっくり煮込まれた分も加えるときっと相当な量。
一口食べればそれがわかる、多種多様な香辛料に負けない、野菜の旨味がしっかり香るネパールのカレーだ。
鼻腔をくすぐるのは何種類ものスパイスの香り。
独特なねっとりとした食感もまた、良い。
 
カレー、ライス、野菜を丼風に盛ったデイタイムのメニュー「カレー弁当」はテイクアウトもできる。
 
食堂かりか
 
その他、ラッシーやソフトドリンク、チャイ、カキ氷などのメニューも楽しめる。
 
食堂かりか
 
エビのカレーはまろやかな辛さがクセになる。
ふんだんに入れた野菜の甘みが優しく、しかしピリリとスパイシー。
 
ナイトタイムはその日によって変わる多種多様なカレーのセット、オリオンビールや島酒といったアルコールに一品料理が楽しめる。

沖縄ではなかなか手に入れることのできない材料をインポートショップから、時にはネパール本国から仕入れている。
 
食堂かりか
 
かりか食堂のシェフは、ネパール出身のジェシーさん。
インドはデリーの名店で15歳から修業を積み、インド・ネパール料理のいろはを学んだというベテラン料理人だ。

かりか食堂発起人の一人で、食堂の手伝いもする葛原さんは以前、沖縄のとあるカフェでジェシーさんと出会った。
 
「彼の料理を食べなくても、彼がちゃんとしたプロの料理人だということを確信しました。
キッチン仕事を見ていたら大体わかりますよね。
どんな世界でも『段取り八分』と言うでしょう?
名のある店で長年働いたということは、その動きや手つきを見れば一目瞭然でした」

その時葛原さんが食べたカレーは、無駄のない動きでてきぱきと料理をこなす姿が証明するにふさわしい、まさにプロの味だった。
 
食堂かりか
食堂かりか
整然と並べられた幾種類ものスパイスを迷いなく手に取り、次々と投入していく
 
食堂かりか
 
食堂かりか
ナイトタイムのメニュー、「キーマエッグカレー」 
 
料理人として日本で頑張り、自分の店を持ちたい。
ジェシーさんのその夢を、葛原さん含め数名の友人たちが後押し、新原(ミーバル)ビーチのパーラーを改修し、食堂をオープンさせた。
 
「僕らは彼の料理のファン。
是非お店を出して欲しいという思いもありましたし、最高に素敵な新原ビーチが活気を取り戻すきっかけになればとも願っているんです」
 
本土から移住して来た際、新原ビーチを初めて見たときに大きな衝撃を受けたと葛原さんは言う。
 
「ビーチのすぐ目の前に民家が立ち並び、砂浜と民家との間に防波堤がまったくない。
風に吹かれたビーチの砂が庭へと入っていくほどの距離に家が建っています。
こんな場所は全国探してもなかなかありません」 
 
食堂かりか
 
食堂かりか
 
食堂かりか
 
食堂かりか
 
「あい、はいたい」
 
おばあたちが親しげに葛原さんに声をかける。
 
「はいさい!」
 
「だあ、そばはもう食べられるね?」
 
「そばはまだ手打ちの練習中。必ず出すからもう少し待っていてね」
 
「そば出してくれたら私たちも友達いっぱい連れてくるさ〜」
 
ふたりが家路へ向かう道筋に食堂かりかが建っていて、散歩のついでとばかりにぶらり立ち寄り、しばしゆんたく(おしゃべり)。
 
食堂かりか
 
70年代、新原ビーチは活気に溢れていた。
その頃の写真が今も残っていて、食堂に飾られている。
 
「ほら、この辺りは昔はこんなだったでしょう? 覚えていますか? 」
 
「うん、そうねぇ〜、昔はここも人がいっぱいしていたさ。
懐かしいね〜」
 
「この活気を取り戻したいと思っているんですよ」
 
「上等さ! じゃあ、そば出すようになったら教えてちょうだいね」
 
 
70年代当時、沖縄には人工ビーチが殆どなく、遠方からも多くのひとたちがバスに乗って新原ビーチに押し寄せていたいたという。
 
「新原ビーチで泳ぎ、帰りにバス停近くの天ぷら屋で天ぷらを買って帰る。
それが週末の楽しみだった聞きました。
そういう生き生きとしたビーチに戻すことができたらと思うんです」
 
そのためにも、広く多くのひとに愛される場所にしたかった。
 
「観光客だけでもなく、沖縄に移住したないちゃーだけでもなく、新原に住む地元のおじいやおばあたちにも気軽に来てもらいたい。
ですから、あまりおしゃれな雰囲気ではなく素朴にしつらえ、店名もアルファベットではなくひらがな表記で『かりか』。
そして、レストランやカフェではなく『食堂』にしました」
 
食堂かりか
「じゃあ、また来ようね〜」 おばあたちの背中を見送りながら、「ほら、この小径の雰囲気も素敵でしょう? 大好きなんです、この一帯が」
 
食堂かりか
 
食堂の正面には小さな倉庫が。
 
「4部屋に分かれているのですが、それぞれ小さな店舗として使ってもらえたらと考えています。
店の種類はなんでも構いません。
雑貨屋、駄菓子屋・・・花火なんか売っても良いんじゃないかな。
すぐにビーチで遊べるし。
色んなお店に入ってもらって、そう、ここが小さな商店街になったらいいなって」
 
食堂かりかだけでなく、複数店舗を巻き込んでの新原ビーチ活性化プロジェクトだ。
 
 
「ここは昼間もいいが暗くなるとぐっと雰囲気が出るんですよ」
 
食堂かりか
 
食堂かりか
 
食堂かりか
 
食堂かりか
「島らっきょうも入れてみました」 酒のつまみにもぴったりのインド風ピクルス「アチャール」
 
食堂かりか
 
「これは今のところメニューにはないんだけど、最近ミジュンが大漁だったって言って数名の方が大量にお裾分けにきてくれて。
ジェシーが揚げ、チャツネと合わせました」
 
玉城に居を構える葛原さんは、こうして魚の差し入れをもらうほど、地元の人たちと仲が良い。
 
「僕、玉城小学校卒業生のもあいに入れてもらってるんです。
同い年の人たちのね。
え? もちろん僕は卒業していませんよ、岡山出身ですから(笑)」
 
ジェシーさんの本場ネパール・インド料理を地元の人を含め多くの人に味わってもらうのに、葛原さんのつながりが一役買っている。
 

 
夕暮れが近づくと、近隣の住人が顔を見せ、オレンジ色に染まる海を眺めながら島酒を飲む。
ジェシーさんの料理を肴に。
どこかに別の場所、もしくは別の時間にタイムスリップしたような不思議な雰囲気が漂っている。
どことなく懐かしい、夢の中で見たような風景。
 

 
近所の宿屋の奥さんが、客を案内しおえた旅行社の担当者を連れてやってきた。
 
「あんたこっち来たらいいさ。
料理もおいしいしお酒もある。
海もきれいだし、ここに来ればヒマしないよ。
ほら、料理を作ってるジェシーさん。
可愛い顔してるでしょ(笑)」
 
「こんな素敵なところがあるんですね〜。
シェフはネパールの方なんですか。
英語も教えてもらおうかな」
 
こうやってまたひとつ、つながりが生まれる。
 
ジェシーさんの作る料理はどれも、新原ビーチによく似合う。
見渡す限りのさらさらとした白い砂浜、澄んだ海。
降り注ぐ太陽の日射しを避けたテントの下でさわやかな風を受けながらスプーンを口に運ぶと、ジェシーさんの故郷を感じる。
 
「できるだけはやくタンドール(窯)を備えて、ナンも出せるようになりたいです」
 
とジェシーさん。
 
「彼の作るナンはまた絶品なんですよ」
 
オープンしてまだ間もない食堂かりか。
今後のメニュー展開も楽しみだ。
 

写真・文 中井 雅代

 
食堂かりか
食堂かりか
南城市玉城百名1360
050-5837-2039
open AM 10:00~PM 10:00
定休日:水曜日の夜と台風、大雨の日
ブログ:http://okkalika.exblog.jp
 
*食堂かりかでは記事内で紹介した倉庫を店舗として借りたい方を募集中。
また、食堂前のビーチを利用してヨガやフラを教えたいという方も募集しています。
ご希望の方は上記ご連絡先へお問い合わせください。

 

NAKAI

ファミリー・ツリー
 
Finally!!! (ついに!)
 
ついにやってきました、ファミリー・ツリー 。
 
待った甲斐ありの素晴らしい映画です。
 
ハワイを舞台にした映画で、なんかやっぱり同じアメリカでも本土とは全く違うのね~と感じます。(ハワイいったことないけど)
フロリダもいつも「アメリカじゃない」と差別的な扱いをうけているが(笑)。
その比じゃないね、まったく。
 
それにしてもプロットといい、シナリオといい、もちろんキャスティングも実にお見事。
 
シリアスな話も、笑いもちりばめられた見事なドラマになっている。
 
そこにハワイの環境問題などもうまく入ってきて、素晴らしいマッチングだ。
アレクサンダー・ペイン監督作品ですが、私、このひとの作品すきなんだよね。
淡々としてるけど、ものすごくユーモアのセンスがある。なおかつ、景色が美しい。
 
 
シリアスとコメディの微妙な演技が ジョージ・クルーニー とにかくうまい。
 
ファミリー・ツリー
 

 
仕事一筋だったパパが、家族のために奮闘する。
 
そこに驚くべき事実があり、そのことがまた家族の再生のきっかけになる。
 
この昏睡状態に陥った妻エリザベスをパトリシア・ヘイスティが演じているが、ほとんど昏睡のシーンで口をあけたままの状態。
この役大変だろうなあ、と見ながら思った。
 
長女のアレックスを演じてるのはTVドラマのスター、シャイリーン・ウッドリー。
かわいいなあ。
 

 

 
このバランスのいいスタイル、ぜい肉なんか皆無。うらやましい。
彼女は、最初父にも反抗するんだけど、頑張る父をみて一致団結。
 
 
心優しいおねえちゃんを好演。
次女、スコティー役のアマラ・ミラーもかわいいよ。
 
あと、もう一人なぜかこの家族と行動を共にする、アレックスの友人のシド。
ニック・クラウスですが、かなりいいです。
 
最初は、「なんだ、こいつ??」って感じなんだけど、彼はなくてはならない存在です。めっちゃおもろい。
 

 

 
映画の内容に少し触れると、予告でもしっかり流れているように妻は浮気をしていた。
 
昏睡状態になって娘から知らされる。
 
浮気相手の調査を家族で始める、、、もちろん、幼いスコティーには何も知らせずに。
 
ここから、父と長女が抜群のチームワークを見せる。そしてシド。
 
相手は、マットの一族の広大な土地の売買にもかかわっている人物。この妻も登場。
 
 
このあたりの皆の心理が、本当に細やかに、押しつけがましくなく描かれている。そこにユーモアも交えて。う~ん、すごい。
 
音楽も全編ハワイアン。
 
そして、みんなアロハを着ているのね~やっぱり。
 
邦題の「ファミリー・ツリー」はなかなかわかりやすい、久々にヒットの邦題だと感心した。
 
ジョージ・クルーニーがパパなんて羨ましい。
 
人間が守れるべき自然は、なんとしても、できる限りのことをして守らなくてはいけない。
自然への敬意はもとより、先祖、子孫、自分たちのためにも。
 
そんなメッセージもしっかりうけとめました。
 

 
是非、劇場で。

 

KEE


 
<ストーリー>
祖先の土地を受け継ぎ、ハワイで妻と2人の娘とともに暮らすマット・キングだが、ある日、妻のエリザベスがボートの事故でこん睡状態に陥ってしまう。さらに、エリザベスには不倫の相手がおり、離婚まで考えていたことが発覚。友人や長女もその事実を知っていたことにがく然としたマットは、自らの人生を見つめ直すことになる。
 
<キャスト>
ジョージ・クルーニー
シャイリーン・ウッドリー
アマラ・ミラー
ニック・クラウス
ボー・ブリッジス
ジュディ・グリア
 
<沖縄での上映劇場>
シネマQ
098-951-0011
那覇市おもろまち4-4-9 那覇メインプレイス2F
HP:http://www.startheaters.jp/cinemasq
 
MIHAMA 7 PLEX+ONE
098-936-7600
中頭郡北谷町美浜8-7
HP:http://www.startheaters.jp/mihama7plex

NAKAI


 
6月23日(土)慰霊の日
@パレット市民劇場
公開ゲネプロ:13時開場/14時開演
本公演:17時30分開場/18時30分開演
 
HP:http://www.niinatoojii.com 
 
チケット
前売り:2,500円 当日:2,800円 
<家族&友達割>
前売り3枚:7000円 当日券:2800円
*全席自由
 
お問い合わせ:シャ・ラ・ラ・カンパニー 
03-5760-7211(平日 11:00~16:00)
info@niinatoojii.com
 

NAKAI

ビン food

 

県内各地で行われる「市(手作り市)」に出店する際、一番人気の酵素ジュース。その時の旬の果物を使って作る。もちろん、県産、無農薬、特別栽培にできるだけこだわって。「今回はいちご、スナックパイン、ハヤトウリ、甘夏で作りました。昨日のできたてがありますよ。今日は暑くて酵素日和!」

 

ビン food

 

炭酸水で割ると夏にぴったりのドリンクに。

 

ビン food

 

嬉しいのは、酵素がたっぷり摂れることはもちろん、何よりおいしいこと。すっきりとした優しい甘みがあり、ついおかわりを要求したくなるほど。また、カラフルな色合いも見ているだけで幸せな気分に。

 

「子供にあげちゃうとそれこそきりがない、ゴクゴク飲んじゃって。でも子供は酵素沢山持ってるから、飲ませるのは主に元気がないときだけ。このジュースが必要なのは私たちのほうだから(笑)」

 

1瓶の原液で約2〜3リットル、約15〜20杯分の酵素ジュースが作れる。

 

「疲れがとれますよ、これ飲むと」

 

おいしくて酵素たっぷり、最高のパワージュースだ。

 

ビン food

 

こちらも人気の生姜シロップ。「県産の無農薬の黒糖と自然栽培の島生姜、そして花見(はなみ)糖を使っています」炭酸水で割るとジンジャーエールになる。

 

ビン food

 

市販のジンジャーエールを飲み慣れていると、こちらで作ったものを一口飲んだら驚くだろう。生姜のスパイシーな香りと味がしっかり主張する大人のジンジャーエール。病み付きになるその味わいに、市でドリンクを飲んだ人の多くが原液であるシロップを購入するというのもうなづける。

 

ビン food

 

「カプチーノにしてもおいしいんですよ。ホイップ豆乳を上に乗っけて、シナモンをかければできあがり」

 

ビン food

 

ジンジャーカプチーノという名前をきいて意表をつかれたが、飲んでみると想像をはるかに超えたおいしさに驚嘆した。

 

「そう、すごくおいしいでしょう? 私たちも大好き!冬はホットジンジャーにしてもすごくおいしいですよ」「基本的に自分たちが食べたいもの、飲みたいものを作ってるんです」と笑うのぞみさんと恵子さん。

 

ビンfoodの商品開発のきっかけは、のぞみさんが炭酸飲料に夢中になったことだった。 

 

 

ビン food
原液を作る時に残った生姜。「このままでも食べられます。というか、このまま食べるのもすごくおいしい」

 

ビン food
ヤギのミルクを使い、煮詰める。「ヤギのミルクは白の絵の具みたいに濃い白色、だけど黒糖と生姜を入れて煮るとこんな色に」

 

「最初、市販の炭酸飲料にハマってたんです、友人と。なにかにつけ飲んでて。沖縄って暑いからつい甘い炭酸が飲みたくなる。でも、食べ物のことは割と気にするタイプなので『こんなに飲んでていいのか?』って。『じゃあ、自分でジンジャーエール作ってみるよ』って言って、作ってみたらけっこうおいしくて、それが始まり

 

そのジンジャーエールを作るときに生姜を大量に使うんですけど、それを利用してミルクジャムも作ってみようと思いついて。その頃、子供がフラダンスを習っているところで恵子ちゃんと仲良くなって、彼女が生姜が好きっていうので試してもらったら気に入ってくれて」

 

「私も結構食べ物にうるさいので(笑)」

 

「二人になってからはオリジナリティを出すために黒糖使ったり、そこから試行錯誤して今の味に。恵子ちゃんが味に敏感なのでアドバイスしてもらって。そうしていたら友人がある日『おいしいから売ったら?』って。それで何の許可がいるのかとか調べて」 

 

そうして約1年前、ビンfoodが発足した。

 

ビン food
ミキサーにかけ、裏ごしをしてさらに煮詰めると、子供にも人気のタイプのヤギミルクジャム、ヒージャー・ジンジャーに

 

ビン food
生姜シロップを作る時に残った生姜を県産はちみつで煮詰めてつくる「ハニージンジャー」

 

ビン food
タルトに乗せればクセのないさわやかな生姜の風味がおいしいスイーツに

 

「ヤギのミルクはそのまま飲むとすこしクセがありますが、ジャムにするとコクが出ておいしいんです」

 

「また、母乳に近く、牛乳に含まれる主要アレルゲンを含まないため、牛乳と違ってアレルギーがほとんど出ないと言われています」

 

妊娠・出産を経験し、食に対する考え方が変わったと言う。

 

「妊娠して子供が小さいうちは色んな食生活を試しました。一通り学んでみましたね。マクロビとか。自分なりに色々と気づくことがあり、今はわりとゆるゆる。化学調味料や白糖は極力摂らないようにしていますが、何よりも安心しておいしく食べられるというのが基本です」と恵子さん。

 

できるだけ身体に良く、そしてもちろんおいしいものを。それは二人にかぎらず私たちみなが願うことだ。

 

ビン food
左:沖縄有機生姜ジャム ミルクジンジャー 右:有機生姜みそ

 

ビン food
「安全でおいしいツナが食べたくて。沖縄近海産のマグロを使い、厳選したハーブとともに水煮に」

 

ビン food
自家製有機玄米麹の麹クリーム。「砂糖は使ってないのに甘いんですよ、甘酒みたいな味。ヨーグルトに入れるとすごくおいしい! あとはパンやスコーンに合わせても」

 

ビン food

 

最新作のオリジナルブレンドスパイス塩、アラビアンマース。

 

「名前は…イメージで付けました(笑)中近東系の料理が好きなので、クミンの香りを効かせてアラビア風味にし、沖縄らしさを加えるためにウッチンも入れました。豆腐につけて食べてもおいしかったな〜。普段はおにぎりにすることが多いかな。子供もよく食べますよ」と恵子さん。

 

「うちなんか、ステーキを焼くと主人が『アラビアンマース出して』って。上からぱらぱらふりかけたり、ちょんちょんとつけたり。何にでも合うんですよ、これ。そうそう、パスタにも」とのぞみさん。

 

 

ビンfoodのこだわりは、安全性とおいしさ以外にも。

 

「市販品を見て『?』と思ったことを大事にするようにしています。たとえば、香料が入っているだけで生姜が入っていないジンジャーエールに疑問を感じて本物のジンジャーエールを作ったり、成分表示に沢山の添加物名が並んでいるのが不思議でそれらを使わずに作ったり、からだに良いとは言われるけれどおいしくないものをおいしくつくったり」

 

今後は、そういう「?」を多くの人と共有したいと言う。

 

「ゆくゆくは、農薬、添加物や放射能についても購入してくださった方が深く考えるきっかけになったら嬉しいですね。そのために、酵素や麹などの手づくりワークショップを始めたいとも考えています。その拠点としてのビンづめショップを始めたいな、と」

 

「ある程度満足できる形になったら、次は同じような志をもつ地域の人、特に若い人たちやお母さんたちが事業を始めたいと思ったときの手助けをしたいと思っています」 

 

ビン food
左から恵子さん、のぞみさん

 

これからメニューが増える予定は? と尋ねると

 

「あります、画策していますよ色々と」

 

とにやり。

 

「世界のマースシリーズも良いね~とか。やりたいこと、作りたいものは色々あります」

 

「そうそう、今店舗も探し中だしね」

 

のんびり、おだやかな話口調のふたり。けんかしたことは? と訊くと「え〜、ありませんよ〜。…今のところ(笑)」「あはは! のぞみちゃんとケンカ…想像できないな〜」

 

今回は撮影の都合でのぞみさんの自宅の台所で作業したということもあり、手分けして商品を作る二人の姿は、商品製作現場というよりはむしろ、お母さん二人が家族のために丁寧にごはんを作っているような雰囲気。

 

「ねえ、今度あれ入れて作ってみようか〜?」「あ、それ良いかも〜。おいしそう」

 

穏やかな空気が流れるキッチンで、ふたりのものづくりは進む。

 

「優しい気持ちで作らないと、おいしいものって作れないと思うんです」

 

なるほど、だからビンfoodの食べ物はどれもこんなにおいしい。

 

ビン food
南城市
HP:http://binfood.jp
ブログ:http://binfood.ti-da.net
通販:http://www.hatoko.co.jp/SHOP/12609/list.html

 

<販売店舗>
atelier+shop COCOCO
がんじゅう駅・南城
まちぐゎ~cafe naminami
miyoshi-ya
てぃーだの家

 

NAKAI

今年の梅雨は晴天からのスタートで良い意味で期待を裏切ってくれました。
いつまでこの気持ちの良いさわやかな時を謳歌できるのか
内心ドキドキしていましたが、やっぱり。
過ごしやすい初夏のような気候から一転、
お天気も季節は梅雨ということを思い出したようです。
いつもの湿気たっぷりのウェットな沖縄の雨期の到来です。
 
tous les jours
 
そしてこの時期のお困りものと言えば、
 
洗濯もの。
 
衣類も勿論ですが特にタオル。
乾きにくいものの一つです。
 
tous les jours
(たとえ雨が降らなくとも曇りがちの日々です)
 
 
我が家で去年から用いるようになった、ALDINのハーフリネン(綿麻)のバスタオル。
メイドイン山梨のそのタオルの定評に以前から関心はあったものの、
ペタリとしたその外見に心許なさを感じていたのも本音でした。
 
使い始めると最初の何回かは洗濯後干す際に“けば”を感じ、
吸水性も足りないような気がして、これってどうなのだろうと思う日々もありました。
雑誌や本に書いてある通り、どんどん使いつづけました。
 
(向かって右が新品、左が1年以上使用したタオル)
tous les jours
 
 
するとある時期からきゅっとした目のつまりや、
ふき取った際の吸い上げの良さを感じるように。
このころから毛羽は出なくなり、快適に使用できるようになっていました。
 
好きな理由として一番を上げるなら、何と言っても乾きの早さ。
乾きが早い分、干していたスペースを別のものに譲ってあげられる利点があります。
その次が収納。
タオル類はどうにもかさばるものですが、すっきり収納できるのと同時に
これまで用意していたスペースに対し余白ができるという点も嬉しい発見です。
もう少しいえば、ふかふかのタオルのように毛足がもともとない分、”やせる”感覚もないです。
そんなこんなで気がつけばどんどんこのタオルの素晴らしさを実感出来る様に。
 
tous les jours
(ALDINの刺繍がアクセントで可愛いです)
 
 
ほぼ毎日使用した我が家のタオルはどちらもかなり味のある表情になりました。
夫も私もそれぞれが使い込んだ“自分用のタオル”をとても気にいっていて、使ってはお洗濯。
よそから見たらくたくたに映るかもしれません。
でもいいのです。だって自分だけのものなのですから。
まさに愛着でしょう?
 
ALDINのバスタオル。
たくさん使って自分だけのそれとして育てるそんなタオルだと思うのです。
 
tous les jours
 
 
ALDINの商品は手間を掛けて丁寧に作られています。
大量生産はできませんので一度ALDINの方で在庫切れしてしまうと
次回の入荷まで時間がかかる場合がございます。
もちろんお待ち頂ければただければ購入できます。
ご興味がある方は、是非店頭で手に取ってご覧くださいね。
 
 
————————————————————-
・ALDIN(アルディン)
山梨県富士吉田市というところで生産されているリネンです。
アルディンは、フランスで出会った1枚のアンティークリネンを見て、
「100年先まで使えるリネンを再現してみたい」という思いからスタートしたブランドです。
一つ一つのリネンに目を行き届かせ、質のいいものにこだわったことから
そのほとんどの工程を手作業で行っております。
 
 
写真・文 占部 由佳理(tous les jours店主)


 
tous les jours(トレジュール)
那覇市首里儀保町2-19
098-882-3850
open:水~土
12:00-18:00
(変更あり。毎月の営業日をブログでお知らせしております。)
blog:http://touslesjours.ti-da.net


関連記事:ひとつ先のくらしを提案するtous les jours(トレジュール)

NAKAI

NAHA ART MAP 2012
 
2010年に23店舗で始めた、毎年度更新の街歩き地図の試みも今年で3冊目になりました。
この地図を通じ、街に散らばるARTのカケラ達を巡る事で、那覇の街の持つユニークさに気付き、一層、那覇のまちを楽しんで貰えれば嬉しく思います。
  
県内の地図配布場所はコチラ
 
NAHA ART MAP 2012
クリックで拡大します
 
NAHA ART MAP 2012
 
今年の参加メンバーは41店舗です。カテゴリー別にナンバリングしてあります。
 
〈 その他 〉
1)花屋ちゅらパナ、2)桜坂劇場、3)わが街の小劇場、4)FUJISAN FACTORY STORE
5)think of 、6)ちゅらしまフォトミュージアム、
 
〈 本屋 〉
7)言事堂、8)ちはや書房、9)市場の古本屋ウララ
 
〈 服 〉
10)VAICE 、11)renga 、12琉球ぴらす
 
〈 飲食 〉
13)L’ABBRACCIO 、14)珈琲屋台ひばり屋、15)cello 、16)浮島ガーデン
17)Villege Market 、18)niceness 、19)cafe プラヌラ、20)Lamp
 
〈雑貨〉
21)陶・よかりよ、22)GARB DOMINGO 、23)MAXI MARKET 、24)tope
25)chahat なは、26)anshare project 、27)ti tu ti OKINAWA CRAFT
28)がじゅまるガーデン、29)zakka TUK TUK 、30)玩具ロードワークス
31)MIMURI 、32)LE PETIT ATELIER de MIREI 、33)沖縄の風
 
〈ギャラリー・アトリエ〉
34)GALLERY point – 1、35)MITSUOシーサー美術館、36)ギャラリーアートミューズ
37)Gallery Space PinoO 、38)沖縄アートギャラリー、39)高光ギャラリー
40)KIYOKO SAKATA studio 、41)旧・若松薬品 
 
N.A.M. 2012 H P  http://www.artokinawa.com/
N.A.M. 2012 F B  http://www.facebook.com/NahaArtMap
 

NAKAI

新垣菓子店
 
「テンペストを読んだとき、映画になるくらい面白いなって思ったんですよ。
だから、急いで職人さんに相談して作ってもらったんです」
 
琉球王朝を舞台にしたベストセラーに、度々出て来る宮廷菓子がある。
『千寿糕(せんじゅこう)』だ。
 
「小説のファンである私にとっても魅力的なお菓子でした。
昔は作っていたのですが、30年ちかく眠っていたお菓子なので、職人さんにお願いして再現してもらったんです。
しばらくしてから仲間由紀恵さん主演でテンペストの舞台が東京でおこなわれることになりました。
舞台の制作会社に話を持ちかけ、限定のお菓子として会場で販売、沖縄よりも先に東京でお披露目となり、その後、映画化も決定したんです」
 
独自の視点と自由な発想力で新たな商品を生み出す新垣正枝さんは、新垣菓子店の専務夫人。自身も商品開発に販売にと活躍している。
 
「実家もお茶屋なので、もともと商売が好きなんですね」
 
新垣菓子店
 
新垣菓子店
 
「学生のときは完全に体育会系でした。
バスケットボール部に所属して遅くまで練習して。
中学生の頃、母が茶道を習い始めたのですが、
『楽しいよ、あなたもやってみない?』
と勧められて。
先生との相性も良かったのかも、すごく楽しかったんです。
部活を終えて夜7〜8時くらいから、ぱんぱんになった脚で正座して(笑)
お稽古ごとは他にもやりましたけど、お茶だけはずっと続いています。
 
多分、茶道を習ったのが発端だと思うのですが、空間デザインにも興味があって。
お茶は総合芸術、空間芸術と言われていますから。
建物や空間が好きで、そういうデザインの世界に興味を持つようになりました」
 
進学校を卒業するも、大学には進学しなかった。
 
「実家の手伝いをしようと思っていたので。
本当は美大に行くのもいいかな? と思っていたのですが、勉強もそんなに好きじゃなくて(笑)
もともと商売が好きなんですね。
実家の手伝いが楽しくて、どこかに就職しようという気持ちがなかったんです。
私は商いの街、糸満で生まれ育ち、祖母も魚売りで代々商いをしています。
人と接したりお話ししたり、どうしたらお客様に喜んで頂けるかな? と考えるのが好き」
 
実家を手伝いながら武蔵野美術大学の通信教育を受講、夏休みの時期にはスクリーングに参加した。
 
「40日間くらいあるんですけど、素晴らしい経験でした。
大学生活ってこういう感じなんだな〜って。
絵を描くのも好きなのでデッサンも楽しいし、空間デザインを先攻したので立体を造ったり。
でも、このを道を極めたいとは思わなかったんです、不思議なんですが。
その後もCAD(キャド)の資格を取ったりもしましたが、自分がプロフェッショナルになりたいという気持ちが湧かなかったんです。
幼少から図画工作の時間が好きで、デザインやもの作りができることが喜びだったので、実家のお茶屋で自由に店作りをさせてもらえたことは貴重な経験でした」
 
実家を手伝っていたある日、出会いがあった。
 
新垣菓子店
 
新垣菓子店
 
「高校の先輩だった主人と国際通りでばったり再会したんです。
学年は違いましたが、『ちんすこうの先輩』ってからみんな知ってましたね(笑)」
 
琉球菓子の老舗「新垣菓子店」の現専務取締役、新垣淑豊(よしとよ)さんとの出会いだった。
 
「友達も一緒にその場で話して、それから二人で会うようになって。
結構早い段階で『この人と結婚するはずな』と思いました。
話していて楽しかったし、おもしろくて」
 
国際通りでの再会から約1年後に二人は夫婦となり、さらに1年後には子供に恵まれた。
出産後も、正枝さんの活動の場が狭められることはなかった。
 
新垣菓子店
 
新垣菓子店
白化サンゴで焙煎する「35 COFFEE」とのコラボ商品。売上の一部はベビーサンゴ移植活動に充てられる
 
「働いてないとなんだかわさわさーして(笑)
子供が乳離れするまでは育児に専念しますけど、いつも『何かしないとな~』って思っちゃう。なんでだろう?
私の母も普通に働いているのを見ていたからかな?
子を持つ女性が家庭に入るっていう概念がないのかも。
私にできることをしていくというスタンスなので『垣根』がない感じなんです。
また『子育てはみんなで』とも思っているので、最近祖母が隣に越してきて4世代で暮らすことになったので、子供たちにとっての環境は完璧だと思っています。
もちろん、母の出番というときは一番大きな顔をしていますが(笑)」
 
自営業である実家でも店を手伝うのが好きだった正枝さんは、産後も新垣菓子店で精力的に働いている。
 
「子供が小さいときからちょこちょこ手伝っていましたね。
一日中みっちりっていう感じではなく、できる範囲で。
義父母がすごく助けてくれるんです、お迎えとかも。
家も隣だし、義父母が子育てしてくれてるみたいな感じですね(笑)
本当にありがたいです」
 
義父母や夫が正枝さんが働くことに口を出したことはないという。  
 
「家庭に入れと言われたことはないですね。
新商品の開発に携わったりしても、主人から反対されたこともありません。
逆に会社の今後について、どうしたらもっと売れるかなど、二人で話をすることも多いです」
 
その結果、先述のヒット商品「千寿糕(せんじゅこう)」が生まれた。 
 
新垣菓子店
 
「琉球王朝時代には、お土産というよりはおもてなしのお菓子でした。
テンペストでも客人をもてなす場面でお菓子が効果的に登場します
千寿糕に関する文献は戦争でほとんど焼けてしまっていたので、主人の曾祖父である新垣淑扶(しゅくふ:琉球王朝時代の首里城の包丁人・新垣淑規(しゅくき)のひ孫にあたる)から直接菓子作りの指導を受けた弊社の工場長・宮城進の手で再現しました」
 
由緒正しき老舗菓子店が再現した珍しい伝統菓子ということで話題になり、テンペストの人気の高まりとともに千寿糕も多方面から注目を集めた。
県外からのオーダーも多く、瞬く間にヒット商品となった。 
 
また、ハート型のちんすこうは引き菓子として人気だ。
 
新垣菓子店
伝統菓子は他にも。普段目にすることがほとんどない珍しいものも多い。 
 
「友人に、『沖縄のお菓子で引き出物をお願いしたいんだけど』って依頼されたのがきっかけ。
言われてみればブライダルに使える沖縄のお菓子ってないなーって。
また、リゾートウェディングで本土から式を挙げにくる方も多く、沖縄らしい引き出物を作りたいと思い、考えました」
 
正枝さんが中心となって開発を行い、菓子職人とも直接やり取りした。
「幸福」「子孫繁栄」「富」「長寿」「健康」の願いをこめて5個入りとし、オーガンジーで包んで優しく可愛らしい姿に変身したちんすこうは、ブライダルフェアなどでも人気だ。
 
「内地の結婚式では引き出物とは別に必ず引き菓子がついてくるんです。
だからこれからも新しい引き菓子の開発に力を入れたいですね。
また、ワンランク上のお土産も作りたいなって。
よく『小さめのサイズで3,000円くらいのお菓子はない?』というようなご相談をいただくんですが、ちんすこうだと3,000円分っていったらスゴい量になっちゃうだけなので、よそゆきのお菓子を作りたいんです」
 
今年80周年を迎える新垣菓子店。
とどまるところを知らない正枝さんの意欲はきっと、伝統菓子の新たな可能性を見せてくれるだろう。
 
新垣菓子店
 
チャーミングで働き者の正枝さんは、物産展やウェディングフェアのようなイベントにも販売員として参加する。
 
「単純に楽しいからですね。お客様とお話をするのが」
 
今では、コラボレーション商品やオリジナル商品の企画の相談が正枝さんに直接持ち込まれることも多いという。
 
「でも、色々やりすぎちゃって今ちょっとストップさせられてるんです(笑)。
主人じゃなくて営業担当から『自前の商品を作るので手いっぱいだから、正枝さん、ちょっとストップしてもらっていいですか』って最近言われたばっかり(笑)」
 
とがったところのない柔らかな人当たり、のんびりとした話し方。
商売人の風情とはほど遠いが、商売の話になると生き生きと表情が輝く。
 
「就職するつもりはなかった」
という言葉を聞き、嫁ぐべくしてここに嫁いだのだなと、縁の強さに思わず感心してしまう。
 
「今は新垣の祖母が商いの先生。
変化することをおそれない、つよい信念はまだまだ足下にも及びません。」
 
書道も玄人はだしの正枝さんは、
 
「今後は書道教室も開きたいと思っています。
お茶も教えようと思っていて…。
茶道を通して『おもてなし』の心も勉強中なんです。
これからは琉球菓子=おもてなしの心 として
伝統の粋を感じる商品を提案できればと考えてます」
 
多忙に拍車がかかりそうだ。 
 

写真・文 中井 雅代

 
新垣菓子店
HP:http://www.chinsuko.com 
ブログ:http://arakakikasiten.ti-da.net
ハートちんすこう:http://www.chinsuko.com/about/gift.php
 

 

NAKAI

さよならのあとで
ヘンリー・スコット・ホランド・著 夏葉社 ¥1,365/OMAR BOOKS
 
― 別れもまたさりげなくそこにあるもの ―
  
 先日、型押しの赤い小花で縁どられた表紙が目を引く素敵な詩集が届いたばかり。
以前注文を受けてその本の存在を知り、入れ直して再読した。
こういう本を必要としている人はきっとたくさんいるんじゃないか、
そう思えたので今回はこの詩集『さよならのあとで』をご紹介します。
 
一編の詩と絵からなるこの本。
夏葉社という小さな出版社から出ている。
長く読まれてほしい本一冊一冊を丁寧に世に送り出しているところだ。
 
中を開くと白いページに一行一行が読む人に静かに語りかけてくる。
そしてそれは特に大切な人との別れや、大きなものを失った悲しみに打ちひしがれる人の心にはより強く響く。
例えば身近な人の死。
それを特別なものとしてではなく、さりげなくそこにあるものとして42行の言葉たちが私たちを優しく包み込む。
 
著者のヘンリー・スコット・ホランドはイギリスの神学者・哲学者で、今でも世界中で多くの人に読まれているというこの詩。
ノートの端にさっとえんぴつで描いたような、心をちょっとくすぐる挿絵とともに、表紙カバーを取ると爽やかなペールグリーンが現れる。
本の最後には原詩(英詩)も収録という、夏葉社さんによって贅沢に生まれ変わった。
 
この詩を読んでいてロドリゴ・ガルシアという映画監督の『美しい人』という映画を思い出した。
ごく普通の人々の日常を描くことで彼らの心の陰影を浮び上らせることに長けた監督の作品で原題は『9lives 』。
ワンシーンワンカットの9話で出来た最終話には墓参りにやってきた年配の女性と幼い娘が登場する。
この二人のささやかなやりとりが鮮やかな緑の木々を背景に描かれる。
二人の間には大きな隔たりがある(それにはあるしかけがあるのだけど)。
そしてこの女性は人生のある時期に大きな悲しい別れを経験している。
 
この詩と映画の内容が重なるのは、別れは私たちの一部となり人生はその後もまた変わりなく続いていくということ。
では「さよならのあとで」私たちはどうふるまうのか。
涙に暮れ、悲嘆したままでいるのか。
詩の最後の一行がまた胸を打つ。
 
刻まれた言葉がただ淡々と紙の上を流れ、読む人を安らかな場所へ導いてくれるこの本。
繰り返し繰り返し自分の心に沁みこませるように読んでほしい一冊です。

OMAR BOOKS 川端明美




OMAR BOOKS(オマーブックス)
北中城村島袋309 1F tel.098-933-2585
open:14:00~20:00/close:月
駐車場有り
blog:http://omar.exblog.jp