@CAFE UNIZON
2013.08.08
@CAFE UNIZON
2013.08.07
@浮島ガーデン
2013.08.06
こんがり焼けたトルティーヤに包まれたタコス4ピース、そのお値段500円。
タコス専門店メキシコは、この価格を40年間貫いている。
「40年前はまだしも、今では元をとるのも難しい値段です。
でも、スタッフ全員このタコスにプライドを持って作っているので、価格を変えるつもりはありません」
オーナーの儀武(ぎぶ)直子さんは語る。
フードメニューはタコスのみ。
店に入ると、「ご注文は?」ではなく「何人前ですか?」と声をかけられる。
徹底してタコスにこだわる専門店だ。
タコスの皮・トルティーヤは、その硬さからハードタイプとソフトタイプとに分けられるが、こちらのタコスはその中間と言えるだろう。
こんがりと香ばしく揚げられているが、噛むともっちりしている。
この絶妙な弾力性のおかげでしっかりと具材を挟んで持つことができ、最後まで具をこぼすことなく食べられる。
また、具材の量も絶妙だ。
トルティーヤからはみ出すほどの具を挟むタコスもあるが、それだと食べながら具をぽろぽろとこぼさざるを得ない。
こちらの具は、トルティーヤでしっかり挟める量である上、特にビーフとチーズの量のバランスがとてもいい。
チーズの量が控えめなので、ジューシーなビーフの味わいをしっかり楽しめる。
すべての要素について、長年考え抜いて作られている。
そんな繊細さを感じさせるタコスだ。
ドリンクは瓶入りのもののみ。「最近は瓶タイプの生産が中止になるドリンクも多くて。でも、缶に変更するつもりはないんです」
タコスの老舗として名を馳せる「メキシコ」は、創業者・儀武息次(そくじ)の店としても多くの人に愛されている。
多趣味な人で、ゴルフはプロ級。三線と唄は趣味の域を超え、CD もリリースしたほどの腕前。
店を訪れる人々に気さくに話しかけ、三線片手に自慢の唄声を披露していた。
誰からも慕われていた息次さんが急逝したのは、2011年8月。
それから殆ど間を置くことなく、息次さんの妻・直子さんは店を再開させた。
息次さんの写真とともに、愛用の三線も飾られている。
息次さんと意気投合した旅行者から、手紙やフォトブックが送られてくることも多かったと言う。「誰とでもすぐに仲良くなる人でしたから」
「最初は、この店を続けるつもりはなかったんです」
と直子さんは言う。
「夫の生前、私は裏方として店を手伝ってはいましたが、決して表にでることはありませんでした。
夫が亡くなり、店をどうするか悩みましたが、夫が作りあげたタコスであり、夫の店ですから、私が継ぐのは手柄を横取りするような感じがしていやだったんです。
でも、沢山のお客様から『閉めないで』というお声をいただいて。
それに、店がなくなることで夫のことが忘れ去られてしまうのも寂しいと思い、再開することにしました。
あと少し、夫を巷のヒーローでいさせてあげたくて」
直子さんはその時、ただ店を再開させるだけでなく、1つの目標を掲げて努力することにした。
「夫の感覚が一番研ぎすまされていたころの味を再現しようと思ったんです。
コストのことを考えず、おいしさだけを追求しようと。
『息次さんが亡くなってから味が落ちた』とだけは言われまいと、決意しました」
息次さんが残したレシピと30年来のスタッフとともに、メキシコは新たな一歩を踏み出すことになった。
決して新しくはないが、隅々まで掃除が行き届いた清潔なキッチンで、1つ1つタコスが生み出されている。
サルサソースも手作り。30年来のスタッフが、息次さんの味を忠実に引き継いでいる。
「夫はね、えーかっこうしーだったんですよ」
と、直子さんは笑う。
「よく言えば『粋』というのかな。
例えば、フードはタコスのみの一品勝負でしょ。
タコスと言えば炭酸だから、ペプシを。でも、コカ・コーラは炭酸の量が多すぎるからだめ。
ドリンク類は絶対瓶のものを。缶やコップで出してはだめ。
食後にホットコーヒーが飲みたいという方も沢山いらっしゃるんですが、『コーヒーは出さない』の一点張り。なぜならタコスには炭酸以外あり得ないから。
ね、かっこつけでしょ?(笑)
そういうこだわりを貫くのって、経営的には結構大変なんですよ。
でも、私は夫のそういうところが好きだったんです。お金ばかり数えている人より素敵じゃないですか。
逆に金儲けに走っていたら、こんなに愛される店にはならなかったと思います。
タコス作りへのこだわりもすごく強かったですね、ハマると一直線の人だったもので。
結婚当初、私に熱く語ってくれたタコスへのこだわりを再現すべく、私も手間ひまかけることをいとわずに作っています。
夫の情熱を後世に伝えることが私の役目だと思ってますから」
毎日手作りしているサルサソースは、ソースだけ欲しいという人もいるほどのおいしさ。
「ほとんどが勤続10年以上のスタッフばかり。みんなで店を支えています」
息次さんのタコスを残したい。
その強い想いは、店にもタコスにもしっかり表れている。
最近では、亡くなった夫をライバルのように感じることもあると直子さんは言う。
「同月の売り上げ額を抜いたぞ! とかね(笑)。
テイクアウトもできるので、50パック・計200ピースの注文が入るなんてこともあるんです。
少ないスタッフでてんやわんやですが、お客様にタコスを楽しんでいただくためにはどうしたらいいか、いつも考えていますね」
そう言って笑う直子さんはオーナー夫人ではなく、今ではすっかりオーナーの顔になっている。
写真・文 中井 雅代
タコス専門店 メキシコ
宜野湾市伊佐3丁目1−3
098-897-1663
open 10:30~20:00
close 水
2013.08.04
2013.08.04
オーナーのこだわりが詰まった、個性的なショップだけを記した地図があったら…。そんな要望に100%応えるマップがある。
発行から4年目を迎える「NAHA ART MAP」は、国際通りを挟むように伸びるニューパラダイス通りと浮島通りを中心に、街に点在する高感度な店を網羅したオリジナリティ溢れる地図だ。
国際通りから一歩裏道へと入ると、NAHA ART MAP を片手に、目当ての店を探しながら散策する人々とよくすれ違う。
「マップを持って店に入って来られる方がすごく多いんですよ!」
マップの掲載店舗、「 anshare project (アンシェアプロジェクト)」のオーナー・上原さんは語る。
「掲載して頂くようになってからお客様の数も増えていますし、ありがたいですね。
ほとんどのお客様が、うちにいらっしゃる前に他の掲載店舗に寄っていて、次々と店をはしごしているみたいなんですよ」
そんな街歩きの仕方が楽しめるのが、NAHA ART MAPの醍醐味だ。
掲載店舗の声からも分かるように、すでに那覇の散策になくてはならない存在となりつつあるこのマップは、「陶・よかりよ」(関連記事:うつわは人間と同じ、面白そうなヤツだけ連れて来る)を営む八谷(やたがい)明彦さんら数名が中心となって企画・製作を行なっている。
手のひらサイズのマップを広げると、掲載店舗の紹介が。
オレンジ色のルートで囲まれたマップの主要部分は、その他の区域と比べると明らかに道の様子が違う。道路が碁盤の目状に整えられていないのだ。
「この一帯は区画整理が進んでおらず、車が通れないスージぐゎー(すじ道)もたくさん残っています。その、ごちゃごちゃっとしたところが魅力的なんです。
観光客の方にも沖縄県民にも、ぜひ車を降りて歩いてもらいたい。そんな気持ちが発端となって作りました」
伝統工芸品である琉球張り子を使った人形や雑貨が人気の「玩具ロードワークス」も掲載店舗の1つ。
琉球張り子作家・豊永盛人さんが作る、茶目っ気たっぷりの張り子目当てに、全国各地からファンが訪れる。
また、厳選された掲載店舗の面々もユニークだ。
「 ART MAP と銘打ってはいますが、あくまでもアートは軸。花屋、コーヒーショップ、雑貨店など、アートと結びつきづらい店も紹介しています。
芸術とひとくちに言っても、広い意味で捉えているんです。
例えば、作家もののうつわを厳選して使っている喫茶店や、アーティストを呼んで店内でイベントを行う花屋、店の空間づくりにこだわっている雑貨店など、そういう店が行っている活動もアートと呼んでいいと思っているんです」
4年前から毎年新バージョンが発行されているが、掲載店舗は毎年入念に検討する。
また、掲載を願い出たすべての店舗が掲載に至るわけではない。
「オーナーの『好きだからやってます!』という気持ちが溢れていることは必須条件ですね。掲載させていただくからには、店の運営が継続可能でないと困ってしまうわけですが、お店って本当に好きじゃないとお続けられませんから。
逆に商売っ気が濃厚すぎるお店は、このマップの趣旨からは少し外れているかなと思います。
ジャンルに関しては色々あっていいかなと。『アートだからこうじゃなきゃ!』っていうこだわりはありませんね」
「お客様にお勧めの店を訊かれたら、『待ってました!』とばかりにこのマップをお渡しします(笑)。素敵なお店ばかりだし、地図としても見やすくて上等!」と、玩具ロードワークスのスタッフ・奥山さん。
玩具ロードワークスがあるのも、やはりすじ道。
マップ製作のきっかけとなったのは、「GARB DOMINGO(ガーブドミンゴ)」オーナー・藤田俊次さんとの会話だったと言う。(関連記事:GARB DOMINGO 今まで無かった上質の沖縄土産が見つかる店)
「僕らは二人とも本土出身者という共通点があるのですが、ある日酒を飲みながら、『那覇の街を楽しく歩ける地図ってないかなー』という話になったんです。一般的な地図だと、国際通りの情報はビシーっと載っているけれど、『ここがお勧めだよ!』という作り手の意向がわかりづらい。観光客も県民も、那覇の街を楽しく歩ける地図があればいいのになーと。そこで『じゃあ、自分たちで作っちゃうか!』と盛り上がったんです。
僕ら2人は、昔からあまり変わっていないこの辺りの街並みがとにかく好きなんですよ」
ハンドメイドの革製品が人気の『 anshare project (アンシェアプロジェクト)』のオーナー・上原さん。「殆どの方がマップを片手に入店されます」
戦後、那覇市内はその全域を米軍に接収されていたが、復興に必要な資材を作るために真っ先に接収を解かれたのが壺屋だった。やがて壺屋を中心に人々が集まってくるようになり、牧志公設市場が開設された。壺屋のやちむん通りと開南を結ぶ商店街「新栄通り」の名は、戦後復興を目指して付けられたのだ。
「この辺りは昔からある道を整備したり、すじ道を塞いだりする前に街が栄え、新たな家が建った。そうやって大規模な再開発が行われぬまま、今に至っているんですよ。
戦前の通りがほぼそのまま残っている地域は、特に那覇ではあまり見ることができません。
僕も藤田くんも店を営んでいますから、買物を楽しんでほしいという気持ちもあります。でも一番の願いは、マップを活用してまち歩きを満喫してもらうことなんですよ。車では通れない道沿いにある古民家、石造りで趣きのある階段、路地裏にある蛍の出没スポット…。そういう小さなわくわくが、この一帯には溢れていますからね」
県外出身者だけで作ると、観光客目線に偏ってしまうのではないかと危惧した2人は、那覇出身者である「琉球ぴらす」のオーナー・翁長優子さんにも参加協力を呼びかけ、地元眼線でのコアな情報収集にもチカラを注いだ。
そうして2010年に那覇アートマップの製作が開始された。
毎年1冊、2013年時点で計4冊を生み出しているが、発行の度に様々な改変を加えている。
シルバーやサンゴ、天然石を使ったハンドメイドのアクセサリーショップ「churaumi -ukishima accessory lab.-」
「掲載してもらってから色々な方に来てもらえるようになりました。那覇を歩く人の流れが、マップがきっかけに変わっているように感じますね」
「最初は白地図のようなものを目指していたんです。
というのも、僕らが作ったものが完成形ではなく、手にした人が自分で発見したスポットを書き込める地図にしたくて。
なので、1冊目は本当にあっさりとしたデザインでした。
でも、散策を楽しむ地図にするには、目印となる信号やスポットなどは書き入れたほうが良いと気づきました。なんせ区画整理されていない地域ですから、角を一つ曲がり間違うだけで道に迷いかねない。
しかも信号って、毎年必ず増えたり減ったりしているんですよ。ですから、普段から自転車で通勤して街並みの変化に気を配ったり、参加店舗の方々にお願いして変更箇所がないかチェックしてもらうなど、細かいところも見逃さないよう努力しています」
木のマークは「立派な木(ガジュマルなど)」。コップマークは「歩くのに疲れたら休めるカフェ」。
雨の日でも歩きやすいアーケイドはピンク色に。
他にも、街歩きを楽しんでもらうための様々な工夫が地図上にちりばめられている。
「最初は参加店舗だけを記していましたが、散策中に喉が乾いたときに休めるよう、カフェ等の飲食店をマークで記しています。
また、沖縄の強い日差しを避けて歩けるように、木陰の道やアーケードがある場所も分かりやすくしました。
すじ道には思わぬ変化がつきものなので、ベビーカーを押して歩く人や車いすの方が困らないよう、階段がある場所も明記しています。
駐車場マークを記したのは、『車を停めて歩きませんか?』という僕らからのメッセージです」
使いやすくておもしろい。八谷さんらが作った地図の評判は徐々にが広がり、今では国際通りの裏手を歩く人の多くが、その地図を手にしている。
そして地図が生み出す効果は、参加店舗のオーナーたちも強く実感している。
「白いブーゲンビリア必見!」「鳳凰木の並木道」「立派な亀甲墓群」など、一般的な地図には特筆されない情報も。
「この地図が、那覇を歩く人々の流れを変えたと言えるんじゃないでしょうか」
浮島通りのアクセサリーショップ「churaumi -ukishima accessory lab.-」の小池夫妻は語る。
「当店は浮島通りの中でも市場に近い場所にあり、市場帰りの年配の方がふらりと訪れることはありました。
マップに掲載されてからは、若いお客様がマップを見て『近いから』と、当店を出たあとに市場にも立ち寄られるようになったんです。
そうやってマップをきっかけに、様々な年齢層の方が市場と裏通りを行き来する動きが出てきたように感じます」
たたむと手のひらサイズになるこのマップの持つ力は、そのサイズに反してとても大きい。
「古くからあるものって、無駄にも思えるけれどすごく面白いし、土地の持っている力も感じさせてくれるんです。
そういうものをこれからも大切にしていくべきだと思うんですよね。
このマップが、街の素晴らしさや面白さに気づくきっかけになったら、僕らとしては大変嬉しいですね。
でも、マップにはまだまだ満足していない部分があるんですよ。目指しているところはもっと高いところにあります」
毎年進化を続けているが、これからもパワーアップし続けるようだ。
沖縄に住んでいる私にも、このマップは沢山の新鮮な驚きをくれる。
踏み入れたことのなかった路地へと、背中を押してくれることもある。
さぁ、車を降りて。
NAHA ART MAP 片手に那覇の街歩きを楽しもう。
写真・文 中井 雅代
NAHA ART MAP(那覇アートマップ)
http://www.artokinawa.com
2013.08.01
「この服には、祈りを感じる」
Little Eagle(リトル イーグル)の洋服を前にしてそうつぶやいた人がいたと、オーナーの Kaorico(カオリコ)さんは言う。
自然素材を美しく染めたワンピースは、さらりとした肌触りと、からだの線を美しく見せるラインが印象的だ。
身にまとうと確かに、少しずつ神聖な心持ちになってくる。
「 Kaorico の作る服はとてもエレガント。着ているとリラックスするし、自然な自分でいられるの。優しい色合いも素敵でしょう?
ステージに上がるときは、彼女が作った服を着ることが多いのよ」
アーティストのアリシア・ベイ=ローレルさんはそう言って微笑む。
ナチュラルなライフスタイルを提案したベストセラー「地球の上に生きる」の著者であるアリシアさんは、1970年代のヒッピームーブメントを牽引したカリスマ的存在でもある。
デザイナーとアーティスト。
もともと洋服を通じて知り合い、仲を深めていった2人がコラボレートした展示会「LIGHTS AND DARKNESS(光と陰)」が開催されている。
Kaorico さんは、アリシアさんと知り合う以前に彼女の著作を読み、大きな感銘を受けたと言う。
「ヒッピーとしてコミュニティで生活していた時の、アリシアの体験を元に綴った本です。自然と共存して生きていくための具体的な方法がたくさん記されていて、とても興味深く読みました。
文章だけでなく、彼女のイラストもまた素晴らしかったんです。
シンプルな線から成る絵は、優しくて、温かみがあって…。
まるで子どもが読む絵本の挿絵のようだけれど、決して子どもっぽいわけではない。
ただ可愛いというだけではなく、描き手の性別を判別するのが難しい、中性的な力強さもある。
それまでに見たことがないタッチに不思議な魅力を感じました」
Kaorico さんがデザインした服にアリシアさんのイラストをプリントするというコラボレーションは、2009年から行われている。
「ぜひ実際に着てみて!」と Kaorico さんに勧めてもらい、ロングワンピースを身につける。
鏡の前に立って驚いた。
「あれ? 私って、こんなに背が高かったっけ?」
小柄な私が、普段よりもすらっとして見えるのだ。
締めつけ感がなく、着心地の良い Little Eagle の服の魅力は、サイズ感や素材の良さだけではない。体型もしっかりカバーできるよう、考え抜かれてデザインされているのだ。
「小柄な人は背が高く、ふくよかな方はすっきりと見えるようなデザインを心がけています」
ナチュラルな装いと聞くと、身体にフィットしないゆったりとしたラインを無意識に想像するので、鏡に映った自分の姿は意外だった。
ナチュラルだけれど、エレガント。
まさに、アリシアさんが形容した通りだ。
そして、ナチュラルライフを切り取ったアリシアさんの伸びやかなイラストが、更なるオリジナリティを加える。
新作をまとった Kaorico さん。アリシアさんも「私はこのワンピースが一番好きよ」とにっこり。
新作の中でお気に入りをたずねると、「パッチワークのようにイラストを繋ぎ合わせたワンピース」と、アリシアさんは即答し、 Kaorico さんもそれに同意した。
「私はもともとリメイクなどのリサイクルウェアを作ることから始めたので、はぎれを継ぎ合わせて服を作るのが好きなんです。
一方、アリシアはパッチワークウェアが好き。二人とも似たようなところがあるんですね。
このワンピースは、アリシアのイラストを様々なページからピックアップし、生地の上にパッチワークしていくような気持ちでデザインしたものです。
アリシアとのコラボが決まった時、どういう風に作ればいいか悩みました。
著作にも表れているような、アリシアのナチュラルな生き方をどう表現すればいいかずっと考えていたんです。
それで、インドで夫婦が営む、小さなオーガニックの生地工場に協力をお願いしました。
そこは、染めに使う水を完全にリサイクルして使うというほど、小さいながらも環境への配慮が徹底した工場なんです。
薄いガーゼのような肌触りの生地をオリジナルで織ってもらい、イラストのプリントは草木染めで行うことにしました。布全体を染めることはあっても、プリント部分だけを草木で染めるのは私たちも初めての試みでしたが、オーナー夫婦の努力の甲斐あって成功しました」
世界的なベストセラーとなった「地球の上に生きる」と、その姉妹篇。
「伸縮素材を用いているので、妊婦さんにもおすすめよ」
アリシアさんがイラストを描く際、最も重視しているのは「ノープランで、のびのびと描くこと」だと言う。
「日本の墨絵と一緒ね。私は下描きというものを一切しないんです。
まっさらな紙の上に、ダンスをするように筆を走らせるのが好きなの」
「地球の上で生きる」は、世界的なベストセラーではあるものの、特に日本で多くの読者を魅了している。
その理由が最近になってわかってきたと、アリシアさんは言う。
上質なコットンや麻は風通しが良く、沖縄の気候にもぴったりマッチする。
「私が求めるスタイルは、日本文化にとてもフィットしているの。
例えば、季節を楽しむ心。
春になれば桜を見たり、秋になれば紅葉狩りをしたりするでしょう?
四季折々の自然を愛する心が、日本人にはしっかり根付いているように感じます。
また、みんなで協力し合って生きていくという暮らし方にも深く共感しています。
例えば、日本の農業は古くから村のみんなで協力し合って行われてきました。お互いに作業を手伝い合うなど、一丸となって事にあたります。
一方、アメリカの伝統的な農業のあり方は全く異なります。完全に個人で行うので、隣近所のことなど気にも留めません。協力しようという意識がないのです。
私がヒッピーのコミュニティで学んだことを、日本文化は古くから実践しているように感じます」
ファンの声に応えるように、日本各地で展示会を開いているアリシアさんだが、沖縄への想いはまた格別だ。
「沖縄の音楽、踊りを楽しむ県民性、南国の気候、美しい景色…。沖縄はどこをとっても素晴らしく、私はその全てを愛しています。
ここへ来るときはいつも、玉城(たまぐすく)の宿に滞在するようにしているの。数えてみたら、今回でもう6回目よ!(笑)
神社も多いし、神聖な湧き水(垣花樋川:かきのはなヒージャー)もある。百名海岸に祀られているヤハラヅカサ(琉球の祖先神が降り立ったとされる場所にある石碑)や玉城城跡など、私にとってはすべてが魔法のように素晴らしい場所なんです。
沖縄の食べ物も気に入っています。
特に私はもずくに目がなくて。
行きつけのお店ではいつも、もずく天ぷら、もずくの酢の物、もずくスープなどが食べられる『もずくセット』を注文するほど。
ゴーヤも大好きよ。アメリカでは殆ど食べることができないのが残念なくらい。
色んな食べ方があると思うけれど、私はゴーヤ、リンゴ、レモンを使って作るスムージーが1番おいしいと思うわ」
フォークロア、ハワイアン、ジャズ&ブルースなど、様々なジャンルのCDをリリースしている。
ライア奏者でもあるアーティスト・小嶋さちほさんも Little Eagle 愛用者の1人。
展示会初日、アリシアさんの特別ライブが開催された。
そのイノセントな歌声は、深く穏やかなギターの音と調和して、優しく空間を満たしていく。
楽器の調べに身を委ね、気持ち良さそうに歌うアリシアさんに、Little Eagle の服がとてもマッチしていた。
自然との調和。
アリシアさんと Kaorico さんはそれを、洋服というカタチで具現化した。
手に取って身にまとえば、きっと誰もが魅了されるだろう。
写真・文 中井 雅代
-Alicia bay laurel and Little eagle exhibition LIGHTS AND DARKNESS-
2013年7月10日(水)~2013年8月5日(月)
11:30-22:00/入場無料
@CAFE UNIZON(カフェ ユニゾン)
宜野湾市新城2-39-8 MIX life-style 2F
TEL/FAX 098-896-1060
MAIL info@office-unizon.jp
open 11:30 ~ 22:00
close 火(第1週のみ)
HP http://www.cafe-unizon.jp
ブログ http://cafeunizon.ti-da.net
Alicia Bay Laurel (アリシア・ベイ=ローレル)
HP http://www.aliciabaylaurel.com
Little Eagle(リトル イーグル)
HP http://www.little-eagle.net
2013.07.30
@あしびなー
2013.07.30
「私たち家族が普段のくらしで使うものは、ほぼ全て店内にある品でまかなってるんですよ。
足りないものは、ビールと納豆くらい!(笑)」
ハルラボ商店の穐葉(あきば)武人さん • 陽子さん夫妻のことばには説得力がある。というのも、店内に並んでいる品は野菜・肉・調味料などの食料品から、石けん・生理用品などの生活用品に至るまで、実にバラエティーに富んでいるからだ。
確かに、ここで手に入らない生活必需品はすぐには思いつかない。
そしてこれらの品々はどれも、夫妻が厳選した安心かつ安全なものだ。
「野菜は、できる限り沖縄県産のものを仕入れています。
農薬や肥料を使わず、不起耕・不除草が特徴の『自然栽培』農法を貫く南風原の『モリンガファーム』や、有機無農薬栽培で知られる今帰仁の『片岡農園』のものが中心です。
ソーセージは、県産豚を使った無添加ソーセージが評判の『プカプカプーカ』から。全粒粉で作る黒パンは『八重岳ベーカリー』から。沖縄の無農薬フルーツをたっぷり使ったジャムは『白川ファーム』から仕入れています」
片岡農園の野菜が到着。すぐにツイッターやホームページで新着状況を配信する。それを見て来店する人も多い。
届いた野菜はすぐに店頭へ。
夫妻がどの商品も自信をもって勧めることができるのには、はっきりとした理由がある。
「店に置くかどうかを決める際、できるだけ生産者のもとに出向き、じっくりとお話を伺うようにしています。そうしないと、お客様の信頼を裏切ることになりかねないからです。
例えば生産者の中には、現時点では素材や製法にこだわった素晴らしい製品を作っていても、それを継続していこうという信念をお持ちでない方もいます。
取引を決定してから商品のクオリティが下がってしまうとお客様にご迷惑をおかけしてしまうので、取引先の選定には慎重にならざるを得ません。
味や品質はもちろんですが、つくり手の意識や考え方もとても大事だと思うんです。
特に、3.11の震災以降は安全性の基準も変わってきているので、食品の安心・安全について問題意識を持って作られたものだけを置くようにしています」
熊本県湯前町産の有機無農薬栽培の玄米と胚芽米と白米。「5kg では多いという方のために、2.5kg に小分けしたものもご用意しています」
「夏バテにも効果てきめんの、九州産の米と糀を使った『仲宗根糀家』の甘酒は、リピーターが多いんです。僕も毎朝飲んでいますが、気力がみなぎってくるんですよ」
なんくるアイスの販売店舗は今の所ハルラボ商店のみ。「何個もまとめ買いする人もいて、クセになる味なんですよ」黒糖の素朴な風味だけでなく、カフェオレのようなコクも感じる。
ポテトチップスにアイスクリーム、インスタントラーメンにレトルトカレー…。
一見するとジャンクフードのような食品類も多数並んでおり、思わずはっとする。厳選された野菜や食料品の中で、その存在は特に際立って見える。
「ポテトチップスは長崎産の有機じゃがいもを使用していて、レトルトの野菜カレーは北海道や西日本産の野菜を使っています。
無添加のインスタントラーメンは北海道産の小麦粉を使用しており、沖縄産の『なんくるアイス』は無添加で、西表島産黒糖・県産牛乳・宮崎県産クリーム・北海道産脱脂粉乳と、シンプルな材料で作られているんです」
嗜好品やレトルト食品など、普段生活しているとつい手を伸ばしたくなる食べ物がそろっているのも、ハルラボ商店の特徴のひとつだ。
お菓子も食べたい、たまには手抜き料理で済ませたいという欲求も、安全性はきちんとキープした上で満たしてくれる。
様々なジャンルの商品が揃っているのは、常に消費者の立場に立って考える2人ならではのこだわりだ。
「1つの店で買物が済むようにしたかったんです。
私たち家族も、食の安全には普段から気を遣って買物をしているのですが、沖縄に移住してからは県内各地の店をはしごしていたんです。野菜ならここ、肉ならここ、生活雑貨ならここ…という風に。
品質にこだわるとそれもしょうがないのかなと思う一方で、毎日のことですからできるなら1カ所でぱぱっと買えたら良いのになーと思っていて。
自分たちがやるなら、なんでも揃う店にしようと思っていました。
またその際、似たような商品が沢山並んでいるのも考えものだと思ったんです。
例えば、醤油1本買うのにあまりにも選択肢が多すぎると大変でしょう? ですからこだわりを持って厳選し、ある程度種類をしぼって店には並べるようにしているんです。
『ここに来れば、何も考えずに安心して買い物ができる』と思ってもらえるような店を目指しています」
置いてある品々の値札を見ると、どれも手頃な値段であることに気づく。一般的なスーパーに並ぶ商品と比べても、驚くほどの価格差はない。
「高すぎると買い続けることはできませんよね。いくら身体に良いものでも、それでは意味がないと思うんです。飲んだり食べたりは毎日のことですから、毎日使えるような価格のものしか置いていません」
夫妻の誠実な姿勢と安全性の高い商品の豊富さが評判をよび、2013年4月にオープンして以来、ハルラボ商店で生活必需品をそろえる人々は増え続けている。
シャンプー • リンス・食器用洗剤も豊富に揃う。オーガニックの日焼け止めに虫除け、石油由来の材料をつかわないナプキンなど、生活用品も充実している。
2人が店を開くきっかけとなったのは、移住後にたびたび参加していた糸満市での援農(農家の手伝い)だった。
「沖縄に来てから農業に興味がわき、自然栽培で野菜を作っている農家さんのお手伝いをしていたんです。
そこでは、農薬も肥料もつかわない分、手間ひまのかかった安全な野菜を栽培してます。しかしそれが市場に出回ることはほとんどありません。
品質が素晴らしくても、形がそろっていなかったり傷や虫食いの跡があったりするので、一般の流通にはのらないのです。それでも安全で美味しく、栄養価も高い無農薬の野菜を求めている人は大勢います。
消費者の需要と自然栽培農家の供給を満たす場が少ない現状がとても残念で、両者を繫ぐお手伝いのできるような店を開こうと思ったんです」
思いついてから2ヶ月という早さで、2人はハルラボ商店をオープンさせた。
「ハルラボのハルは『ハルサー(沖縄方言で「畑人」、農業を営む人)』から、ラボは『ラボラトリー(=研究室)』からとりました。大げさかもしれませんが、つねに農家や畑のことを考えている店でありたいという思いからです。
ここでは商品を販売するだけでなく、イベントを企画してお客様に自然栽培の畑にふれていただいたり、農家さんとお話しいただく機会を設けています。それによって、自分達では伝えきれないことを感じとっていただけたらと思っています。
この小さなお店ができることは限られていますが、沖縄のみなさん、特に子どもたちが少しでも安心・安全なものを食べられるお手伝いができれば嬉しいですね」
娘の環(たまき)ちゃんのお気に入りは、有機じゃがいも使用のじゃがいもチップス。「カリカリしてて、一番好き!」
大切な人が口にするものや触れるものは、できるだけ安全なものが良い。
その思いは、きっとだれでも同じ。
けれど忙しい毎日のなか、できることは限られている。
商品を裏返して原材料の表示をチェックする買い物に疲れてしまう日もある。
背伸びして高価なヘルシー食品を買ってみても、長くは続けられない。
後ろめたいけれど、たまには簡単な手抜き料理だってしたいし、お菓子も存分に食べたい。
そう思ったらハルラボ商店にいってみてほしい。
無理も我慢もいらない。
その扉をくぐるだけで、とてもかんたんに安心・安全な食生活を始められるのだ。
写真・文 中井 雅代
ハルラボ商店
那覇市泊3−1−15−102
098-943-9575
月〜土 11:00〜18:00
close 日・祝
58号線から泊港の方へ曲がり、外人墓地の脇、泊高校の入り口です。
駐車場あり(店前)
HP http://hallab.pecori.jp
Twitter https://twitter.com/hallabshoten
2019年3月、下記へ移転しました。
那覇市銘苅3-4-1(駐車場4台有)
098-943-9575
http://calend-okinawa.com/event/info/harurabo-syoten-iten.html
2013.07.28
「洗顔でこんなに癒さるなんて思わなかったわ。
こちらの石鹸を使うようになってからは、洗面所に行くのが楽しくって。だって、大好きなハイビスカスの香りに包まれるんだもの!」
そう話す女性客の肌は、シミもしわもなく色白、つやつやとしてハリもある。
「きっと石鹸のおかげね。初めてお店にうかがった時に『肌が元気になりますよ』って教えていただいたのよ」
効果を実感しているので、親や兄妹にもプレゼントしたいと嬉しそうに話す。
沖縄県産素材を用いた手作り石鹸のさきがけとも言える Island Aroma。
オーナー・佐敷好美さんは、店名にもあるようにアロマの香りを重視した石鹸づくりをこころがけている。
「私がもともと興味を持って勉強を始めたのはアロマの世界。石鹸を作るようになったのはその後なんです。
ですから、香りが人に与える影響をとても大切に考えています。
何かの香りを嗅いだときに、特定の人や場所などを思い出すことがありますよね? 嗅覚は、それ以外の五感とは異なる経路を通り、ダイレクトに脳に到達すると考えられているんです」
嗅覚以外の五感(視覚、聴覚、触覚、味覚)はまず視床下部を通り、大脳皮質に情報を送ってから大脳辺縁系に到達する。しかし嗅覚だけは、嗅神経を通して直接大脳辺縁系に情報を送る。
また、大脳辺縁系は情動や意欲に関与しているため、匂いが記憶だけでなく感情まで呼び覚ますこともあるのだ。
「私自身がアロマの香りによって癒されたり元気をもらったりと、様々な効果を実感してきました。
アロマを石鹸に配合することで、精神面だけでなく美容面にもアプローチしたいと思ったんです」
自身も敏感肌である好美さんが、石鹸を手作りする上で最もこだわったのは製法だ。
「市販の化粧品を使うと、私の場合たいてい肌が真っ赤になってしまうんです。私のような敏感肌でも安心して使えるということは、絶対条件でした。
一口に手作り石鹸といっても色々な作り方があります。
私にとってのベストな製法は『コールドプロセス法』。40度以上の熱を加えずに作るので、保湿成分であるグリセリンがたっぷり含まれた石鹸が作れるんです」
一般的な石鹸の多くは「中和法」という製法で作られている。
あらかじめ、油脂を脂肪酸とグリセリンに分解し、脂肪酸だけをアルカリと反応させて作る。有用な保湿成分であるグリセリンが除去されているため、顔などを洗うとつっぱり感が残ってしまうのだ。
しかし、この方法だと短時間で大量に石鹸を作ることができるため、多くの企業が中和法を採用している。
好美さんが実践しているコールドプロセス法は、想像以上に手間ひまがかかる。
植物油脂に含まれる脂肪酸とアルカリを反応させるのだが、油を傷めないよう40℃以下の低温でゆっくりと反応させ、さらに時間をかけて自然に熟成させる。そのため、油脂に含まれる有用成分が劣化せず、グリセリン、スクワレン、ステロール、ビタミンA・B・Eなどをそのまま石鹸に閉じこめることができるのだ。
「中和法であれば2~4時間ほどで完成しますが、コールドプロセス法ですと4週間はかかります。
一度に大量には作れませんが、大切なお客様に自信を持っておすすめできる石鹸が作れます」
Island Aroma の石鹸の多くに、沖縄由来の素材が使われている。
「月桃にはポリフェノールが豊富に含まれていますし、最近ではシワやたるみを改善するというアンチエイジング効果も発見されました。
手作りソープ『GETTOU(月桃)』には、月桃の葉150kg からわずか60cc しか抽出できない貴重なエッセンシャルオイルを使っています。さらに、月桃の香りと相性のよいラベンダーとティートゥリーの香りもプラスしました。
人気の『KOKUTOU(黒糖)』は、無農薬のサトウキビで作る黒糖液(さーたーゆー)を使っています。黒糖はシミやそばかすを改善するなど、美白効果があると言われていますし、保湿効果も高いんですよ。
沖縄の海は、ミネラルが豊富に含まれていることで知られています。沖縄の海水から採取した海塩と天然にがりを使用した『OCEAN(海)』は、肌荒れに悩む方にお勧め。年間通じて人気の石鹸です」
沖縄に移住してきたばかりの頃、好美さんに沖縄の「いいもの」を色々と教えてくれたのは、姑だった。
「義母は何でもこだわりを持って選ぶ人なんです。『黒糖ならこれ、もずくならこの会社のもの』と、何も知らない私に詳しく教えてくれました。
沖縄で生まれ育った義母だからこそ知っている本当にいい素材を、石鹸作りにも生かしています」
Island Aroma オリジナルのソープディッシュ。
好美さんのこだわりは、環境面への配慮にも及んでいる。
「一般的な石鹸が使用している合成界面活性剤は、一度海に流出させると分解するのに相当な時間が必要です。
Island Aroma の石鹸は、石油系ではなく自然由来の素材で作っているので、海に流れてもすぐに分解できるんです。
県民の方がみなこの石鹸を使ってくれたら、沖縄の海の汚染も止まるんじゃないかなーと思うのですが…」
強いこだわりをもって石鹸を作り続ける好美さんが初めて香りに興味を持ったのは、高校生の頃だった。
当時、日本ではアロマオイルの一大ブームが巻き起こっていた。
「もともと香りが好きだったので飛びつきました。ショップに通い詰め、購入したアロマを家でたいて癒されていましたね。
大学進学を機にお化粧をするようになったのですが、敏感肌なので普通の化粧品は使えない。そこでアロマのスクールに通い、自分で化粧水などを作るようになったんです。香りがいいだけでなく肌にも優しいし、手作りするとリーズナブルと良いことずくめ。一層アロマに惹かれていきました」
大学卒業後、好美さんは管理栄養士の資格を生かして食品系の企業に就職したが、アロマスクールには変わらず通い続けていた。
就職して4年ほど経ったころ、ある転機が訪れた。
「日本で屈指のハーブ・アロマテラピー専門店がスタッフを募集していることを知って。1955年創業の老舗で、この店が運営するスクールにも通っていましたし、憧れの店だったんです。もちろんすぐに応募しました」
面接を受け見事合格した好美さんは、やがて六本木ヒルズ店の店長を任されるようになった。
「アロマ関連の商品を販売するだけでなく、店舗内に工房が設置されていたので、そこで毎日エッセンシャルオイルを配合した石鹸を作っていたんです。
自分の考案したオリジナルの石鹸を製作・販売することもできたので、貴重な経験を積むことができました」
ベースラインとは別にオリジナルの限定商品を作っていたが、好美さんが考案した石鹸は口コミで評判となり、今では定番商品になっている。
アロマに囲まれて充実した日々を送っていたが、結婚を機に沖縄への移住を決意した。
専業主婦に転身しようと思っていた矢先、夫の祖父の力強い一言が好美さんの人生を変えたと言う。
「100歳を迎えた祖父は、ものすごく元気で闊達とした人。
嫁いで間もないある日、私をまっすぐに見て言ったんです。『あなたは何がやりたいんだ? 俺の目が黒いうちにやりなさい!』と。
その言葉にはっとさせられて、結婚して1年後には宜野湾に店をオープンさせました。
当時の沖縄には手作り石鹸の店がなかったので、沖縄の方にも是非知ってもらいたいと思ったんです」
オープンして1年後、出産を機に一時休業していたが、再開を求める常連客からの声は後を絶たなかった。
その際、手伝いを申し入れたのが夫だったと言う。
「子供との生活を大切にしたい私は、なかなか店を再開できずにいました。産後半年くらいたった頃です。お客様からのお声をメールや電話で受けているのを隣で聞いていた夫が、『俺が石鹸を作ればいいんじゃない?』と言ってくれて。夫はずっと土木設計の仕事をしていましたが、仕事を辞めた夫に1年ほどかけて作り方を指導しました。
もともと一つのことを淡々とやるのが好きなひとなので、本人の性格にも合ってるんだと思います。
それまでは一人でてんてこまいでしたが、夫のおかげでだいぶらくになり、私は企画・販売に専念できるようになりました」
宜野湾に店をかまえて8年後、知念に自宅兼店舗を建築することが決まった。
「宜野湾に住んでいた時も、賃貸していた戸建て住居の一部を店にしていました。私にとっては『自宅兼店舗』というスタイルが重要なんです。子供が帰ってきた時、母親である私が自宅にいて迎えてあげたくて。
転居先の知念は、のどかでとてもいい所。
美しい海を見ながら、お客様に心も肌も癒していただけたら幸いです」
自動車のソケットに差し込んで使えるアロマディフューザー。「運転中もアロマに癒されます。私以上に夫が気に入って、毎日使ってますよ(笑)」
貴重な自家製ハチミツ。「在庫はもう、残りわずかなんです」
今後は、自宅で養蜂を行いたいと好美さんは言う。
「自宅兼店舗を構える以前、義父はこの土地で養蜂をしていたんです。
Island Aroma の石鹸『HONEY(蜂蜜)』には、そのときにとれたハチミツを使っているんですよ。
義父が作ったハチミツは、味わいも濃厚でとても人気があったのですが、今は作っていなくて。
ハチミツには殺菌作用、保湿効果、美容効果があり、日焼けのケアにも使えるなど万能な自然素材なので、私たち夫婦で養蜂を再開したいと思っています。
さらに、ハチミツを始めとした『知念吉富ラインナップ』の石鹸を作れたら嬉しいですね。
海、山、緑、太陽…。ここは豊かな沖縄の自然に囲まれた土地ですから」
アロマインストラクターの資格を持ち、ワークショップ等の活動も積極的に行っている。
「私の親世代のころから、洗髪にはクチャを使っていたの」
ハイビスカスの石鹸を愛用している常連客は、昔を懐かしむように話してくれた。
「南国の黒髪にはクチャが一番だからと言ってね。
そして仕上げには、リンス代わりにハイビスカスの花と葉をすりつぶしたものを髪に塗ってたんですよ。
特に葉はぬめりが出るので、髪がつやつやになるのよね。
今では考えられないような話かもしれないけれど、当時はみな普通にやっていた美容法です」
ナチュラルライフ、ロハスなどに高い関心が集まる昨今において、コールドプロセスで作られる石鹸は時代の最先端をいく化粧品であるように感じられる。
しかしハイビスカス石鹸の香りに癒される彼女のように、古くから人は、自然素材を活用して美しくなる方法を見出していたのだ。
好美さんは、沖縄の自然素材とアロマのパワーを組み合わせ、手軽に使える化粧品を生み出した。
それが、Island Aroma の石鹸。
ハイビスカスの花と葉をもいですりつぶさずとも、洗面所に行くだけでその香りに癒され、保湿効果の恩恵が受けられるのだ。
写真・文 中井 雅代
Island Aroma(アイランドアロマ)
南城市知念吉富42
098-948-3960
open 10:00~18:00
close 日、祝
HP http://www.island-aroma.com
ブログ http://islandaroma.ti-da.net
2013.07.26
@あしびなー
2013.07.25
@あしびなー
2013.07.23
「庭は食材の宝庫。
沖縄のハーブや野菜を使えば、手軽にヘルシーな一品が作れるのよ」
「サクナ、ハンダマ、フダンソウ…。どれも庭で育ててるの。無農薬だから安全性には自信ありよ」
「特にこの野菜を使いなさいという決まりはないからね、あるもので大丈夫。
今日は島豆腐を加えて白和えを作りましょうね」
「まずは水洗いして、葉の部分だけ取ります。
料理によっては茎も使うこともあるのよ。
そうそう、うちはね、こういう時に使った水を捨てずに貯めて、そのまま庭にまいているのよ。
沖縄の夏は暑いから、畑の土もすぐからからになってしまうでしょう?
洗剤の混ざっていない浄水は貴重だから、しっかり再利用してるわよ」
「葉を茹でます。さっとでいいわよ。
特にフダンソウは少しえぐみがあるから、調理するときは必ず湯がいたほうがいいね」
娘のえりなさん(関連記事:Parlour de jujumo(パーラー・ド・ジュジュモ)
ベジバーガーやカレーをドライブスルー感覚で。出勤前の一杯も)が千切りを担当。
「えりなにお願いしている間に、豆腐の処理をしましょうね」
「重しをしても良いんだけど、私は少し湯がくの。その方が手早く水が切れるのよ。
忙しいときは水切りしないことも。大丈夫、それでもできるわよ」
「1分ほど茹でたらざるにあげ、5分くらい置いたらすりつぶします」
「普通はすり鉢でするのよね。うちにもちゃんとあるんだけど、こうやって包丁を使うことが多いかな。
こちらのほうがきめ細かくなる気がするのよね。
すり鉢がないよーという人にもお勧めの方法よ」
「刻んだ葉と豆腐の上に、塩を少々ふり入れます。
あれ? えりな、あなた千切りじゃなくてみじん切りにしちゃったのね(笑)
いいよいいよ、大丈夫。切り方はどんなでもいいさ。
意外とこちらのほうが豆腐としっかり混ざっておいしいかもしれないね」
「塩だけでもいいんだけど、今日は練り胡麻も入れましょうね。
なければ、いりごま・黒ごま・すりごま、なんでもいいのよ。
はい、これで白和えの完成!
今日はさっき庭で採ったハーブで、ハーブティーも淹れましょうね」
「洗ったハーブをまとめて縛り、ブーケガルニ(ハーブを束にしたもの)を作ります」
「それを置いといて、ティーを淹れるときにそこから必要な分だけ切ってね。
今日は、沖縄では『医者泣かせ草』と呼ばれるコヘンルーダとレモングラス、ローズマリーも入れましょう」
「お湯を注いだら出来上がり!
こんな簡単にできるヘルシードリンクって、他にないかもしれないわね。
お腹も空いてきたんじゃない? お昼ご飯にしましょう」
にんじんしりしりーのにんにくサラダ、白和え、ソーキ汁、昆布の佃煮が食卓に並び、なんとも豪華なランチのできあがり。
「野菜たっぷり、ヘルシーランチね。
白和えは野菜の濃い味が効いてておいしいでしょ。ハーブティーもコヘンルーダとローズマリーの香りが良いわよね」
「私たち家族はみんな野菜が大好き。佃煮やソーキ汁のように手間と時間のかかるご飯も良いけれど、下ごしらえ不要な一品料理のレシピを沢山覚えておくと便利よ。
沖縄の野菜を沢山食べれば、暑さの厳しい夏も元気に過ごせますよ」
写真 中井 雅代
2013.07.22
***ネタばれしてます***
かなりおすすめします。
できればすべての人に見てほしいくらい。
リチャード・ジェンキンスは、いわずとしれた名脇役。
主演作はなくても、顔は誰でも知っているのではないでしょうか?
その彼がオスカーノミネートされたときは「主演?」とびっくりしましたが、これはもう素晴らしい出来です。
彼といい、「レスラー」のミッキー・ロークといい素晴らしかったんだけど、そうおもうと当時の受賞が「ミルク」のショーン・ペンって納得いかない(笑)
この映画は、脚本、配役ともに見事です。
何もかもに無気力なウォルター。妻を失ってから、完全にやる気を失っている。
そこで、タレクと出会う(この出会いが強烈)。
彼は、素晴らしく好青年。
ほんと、すごい。こんな人いたら間違いなく恋に落ちるよ、私。
二人の間には友情が芽生える。
タレクには恋人がいてザイナブっていうんだけど、彼女はウォルターには心を開かない感じ。
それは、やはり不法滞在だから人と深くは関わらないっていう理由だと思う。
納得です。
ウォルターはタレクと仲良くなってジャンベを教わる。
そして、その魅力にもハマる。
このあたりが「shall we dance?」に共通するものを感じました。
最初はおぼつかないんだけど、いつも練習しててとっても楽しそう。
私も映画観ながら、自然にリズムを刻んでて。アフリカンドラムっていつも気になってるんだよね。
習いに行きたいです。
タレクが、地下鉄で誤解から逮捕されてしまう。
不法滞在だったので拘束されてしまうんだけど、タレクの場合、小さなころにアメリカに母親と移民としてわたってきて、手続きが完璧でなかったために不法滞在になってしまった。
だから、アメリカでふつうに学校にも通っていて問題なかったんだよね。
そのあたり移民局がからむので、よくわかります。
母親がミシガンからタレクを心配してたずねてくる。
お母さん、若い(笑)
若くて美人で聡明。
この母親だったらタレクがあんなに好青年なのも納得。
学校も休職して、母親モーナに協力して、タレクを釈放するために奔走するウォルター。
無気力だった彼が、感情をむきだしにするシーンもあり。
モーナともいい感じに。
ウォルターは、移民弁護士もやとう。
この弁護士も、ルーツは移民。
親戚も強制送還されたことがあるというが、モーナの 「where are you from?(どこの出身?)」の質問には迷いもなく「Queens(クィーンズ)」と答える。
このシーンはかなり印象的。
どこがルーツであろうと、アメリカで生まれて育った人は、出身はアメリカである。
私はアメリカに住んでいた時はいつもこの質問があり、「フロリダ」と答えていたが「オリジナルはどこなの?」と聞かれたときだけ「日本」と答える。
移民問題はアメリカでは9.11以降かなり厳しいものであり、私自身も、受かった面接をアメリカ国民でないという理由で取り消されたこともある。
理不尽なことがしばしばある。
それがアメリカだと思っている。自由な国というが、移民には全然自由ではない。
拘留されている、タレク。
ここでも、全く予期せぬ出来事が起こる。
いい感じだったモーナとウォルターも決断をしなくてはいけないときがくる。
こんなに愛し合っている人達が引き離されて、しかも悪いことは何もしてない。
悪い事をしてても、お金持ちはなにとがめられないアメリカは、理不尽という言葉だけでは表わされないほど、摩訶不思議だ。
この映画はおとぎ話ではなく、アメリカの現実をきちんと伝えていると思います。
原題の「 THE VISITOR(訪問者) 」はいろんな意味に解釈できる。
移民自体も VISTOR
タレクとザイナブ、モーナがウォルターの家のVISITOR
刑務所の面会をするウォルターも VISTOR
そしてシリアに帰る二人も。
最後の最後まで、強いメッセージ性があり、音楽も素晴らしいです。
是非、どうぞ。
KEE
<ストーリー>
妻に先立たれて以来、心を閉ざして生きてきた大学教授のウォルター(リチャード・ジェンキンス)。出張でニューヨークを訪れた彼は、マンハッタンの別宅で見知らぬ若いカップルに遭遇。彼らはシリアから移住してきたジャンベ奏者のタレク(ハーズ・スレイマン)と彼の恋人でセネガル出身のゼイナブ(ダナイ・グリラ)だと名乗るが……。
<キャスト>
リチャード・ジェンキンス
ヒアム・アッバス
ハーズ・スレイマン
ダナイ・グリラ
マリアン・セルデス
リチャード・カインド
マイケル・カンプスティ
他
☆DVDでどうぞ
2013.07.21
とまと味の沖縄そばと聞くと、うちなんちゅなら思わず「え?」と眉をひそめてしまうかもしれない。
しかし一口食べれば、そのおいしさに眉間がぱっと開くだろう。
トマト味のスープが、沖縄そばにこんなに合うなんて!
ほのかな辛味とコクのあるスープは、一般的な沖縄そばのスープとはまったく異なる方法で作っていると、店主・赤嶺松哉(まつや)さんは言う。
「普通は豚やかつおなどからとった出汁に、塩やしょうゆなどの味付けをします。
しかし、僕は出汁には一切味をつけません。
別に作っているペーストを出汁と混ぜてスープを作るんです。
一般的な沖縄そばの店は、味付きの出汁を寸胴に入れ、開店中は常に温めています。そうすると徐々に酸化が進み、午前と午後とではスープの味が変わってしまうこともあるんですよ。
でも当店では、味つけをしていない出汁を冷蔵庫で保存し、注文を受けてから小鍋に移して火にかけ、オリジナルのペーストと混ぜてスープを作っているんです」
また、そば1杯に対してペーストの量は36ccと細かく定め、複数のオーダーが入っても一度に温めるのは2食分のスープまで。いずれも、一日を通じて味のバランスを変えないためのこだわりだ。
「大盛りや子ども用のそばがないのも同じ理由。
出汁もペーストも麺の太さや密度、1食分の量に合わせて作っているので、スープと麺の量の比率が変わるメニューはご用意してないんです」
すっきりしているのに味わいが奥深い。スープのおいしさの秘密は、出汁+ペーストという独特な作り方と、「舌が敏感なんです」と笑う赤嶺さんの味へのこだわりにあった。
「ごまそば」は白ごまの濃厚な風味が決め手。ペーストを作る際はごまを練ることから始まり、完成まで3~4時間かかる。「東京で初めて食べた担々麺がおいしくて、沖縄そばの麺にも合うんじゃないかな?と」
定番の「そば」も一風変わったビジュアル
メニューには、そば・とまとそば・ごまそばの3種類があるが、出汁はすべて同じで、ペーストで味に変化をつけている。
「レシピは少しずつ改良を重ねて完成させましたが、旬の素材を使って限定メニューを作ることもあります。
例えばとまとそばのペーストに、ドライトマトをミキサーで細かくして入れることもあるんです。原価は高くなりますが、味に深みが出るし色もより赤くなります。
メニューには3種類しか載せていませんが、ペーストのレシピは20種類を超えています。味噌が3種類、トマト味も3種類、黒ごま味、とんこつ味…まだまだ色々あるんですよ」
スープのベースとなる出汁のひき方も、幾度もの改良を経て今の方法にたどりついたと言う。
「今はシンプルに豚肉と玉ねぎでとっています。
以前は鶏ガラ・もみじ(鶏の足)・しょうが・ねぎと様々な食材を入れていました。試行錯誤して色々入れると、確かに複雑な味にはなるんです。でも、それがおいしいかと問われると疑問が残る。
味が複雑になり出汁が濃くなっていくと、舌が麻痺しておいしさが判断できなくなってしまう。
そこで、少しずつ引き算していくことにしたんです。そうやって残った素材が、豚肉と玉ねぎ。
あっさりとしていますが、コクのある出汁になったと思います」
運ばれてきたそばの見た目も、独特で目をひく。
スープに浮かんでいるのはソーキでも三枚肉でもなく、大きなチャーシューだ。
「豚の肩ロースで作っています。
もともと僕はラーメン店で修業していたので、その影響が大きいですね。
今もラーメンの生麺を本土から空輸で取り寄せ、常連さんにだけ裏メニューとしてラーメンを出すこともあるんですよ」
昔から音楽が好きで、高校時代にバンド活動にのめりこんでいた赤嶺さんは、プロのギタリストを目指していたと言う。
「バンドのオーディションに参加し、3次予選まで進みましたが決勝で負けちゃって。バンドはきっぱりと解散、メンバーたちはみな大学進学や就職など新たな道を歩み始めましたが、僕はなかなか夢があきらめきれなかったんです」
歯科技工士をしていた兄を手伝いながら音楽を続けていた赤嶺さんは、次第にジャズへと惹かれていった。
「ジャズには理論があるのですが、それを学ぶために本土で先生につきたいと考えました。当時すでに27歳、結婚して子どももいたので周囲には反対されましたが、妻に背中を押されて本土へ移り住むことにしたんです」
神奈川で働きながら音楽の勉強を続けていると、時に故郷の味を懐かしく思い出すことがあったと言う。
「やっぱり沖縄そばが食べたくなるんですよね。
でも、当時は沖縄料理が食べられる店が本土にはほとんどなくて。しょうがないから沖縄そばに近いラーメンが食べられる店に通うようになりました。
そうしたら、しばらくするうちにラーメンの方にハマっちゃって(笑)。毎週末、色々な店のラーメンを食べましたよ。有名店は制覇したと思います」
やがてラーメン店で働くようになった赤嶺さんは、自分でもスープを作ってみようとチャレンジするようになった。
「アルバイトの身分だったので、作り方やレシピなんて教えてもらえない。だから大体の作り方を見て覚え、休みの日に市場で材料をそろえて自分なりに作ってみるんです。それが、最初のうちはまったく美味しくなくてねぇ(笑)。
試行錯誤を繰り返して少しずつおいしくなっていった、という感じでした」
赤嶺さんはもともと、ある理由から味覚には自信があったと言う。
「両親は昔から、化学調味料を一切使わずに料理していました。母だけでなく父も料理好き。スパイスから作る父のカレーはとてもおいしかったですね。
そういう両親の元で育ったので、味には敏感な方だと思います。化学調味料の入った物を食べると僕は舌がぴりぴりするし、姉はアレルギーが出る。家族みな、ほとんど外食はしないですね。兄も姉も僕より料理上手ですよ」
生まれ持った味覚の鋭さを生かしてオリジナルのスープを完成させた赤嶺さんは、2年ほどラーメン店に勤めたあと、自身の店を開くために沖縄へ戻ることを決意した。その頃にはすでに、音楽への思いを上回るほどラーメンにのめりこんでいたと言う。
「僕は1つのことしかできないタイプなんです。沖縄に帰ったら音楽で食っていくことは難しいし、音楽業界の壁の高さも思い知っていました。オリジナルのスープを使って沖縄そばの店を出そうと、メニューも決めてから沖縄に戻りました」
沖縄に戻ると麺探しを開始、各地の製麺所を回った。
「ペーストに合う麺というのが条件でした。一般的な沖縄そばの麺だと生地の密度が高く硬すぎるので、某製麺所にお願いして特別な麺を卸してもらうことになりました」
那覇に6坪の小さな店を出したが、祖父の家を守るべく2年後に南風原に転居、店も自宅で開くことにした。
「大工の棟梁だった祖父が建てた家は、一般的な沖縄の古民家とは雰囲気が異なり、瓦も使っていないし間取りも一風変わっています。建設当時、うちを見た周囲の人はみな目を丸くしたそうです」
築60年の趣きのある家屋が建っているのは、300年前からある土地。門から続く石畳に使われている石は、首里の石畳のそれと同じものだと言う。
「歴史があるだけでなく、この家で暮らした父やおじ・おばたちにとっては思い出の詰まった場所。人が住まない家はどんどん朽ちていきますから、僕らが住んで守ることになったんです」
南風原のすーじぐゎー(細い道)にある家屋は、庭に生い茂る沢山の木々に囲まれているため、道路から店の様子を伺い知ることはできない。
石畳を進むと現れる雰囲気満点の古民家は、まさに隠れ家。創作沖縄そばを味わう空間としても最高の場所だ。
数年前、赤嶺さんは体調を崩し、1年以上店をしめて休養していた。
体調を整えるためにそれまで大好きだった酒をやめ、2012年12月に店を再開した。
「酒をやめたことで味覚がさらに鋭くなりました。たばこと同じように、それまではアルコールのせいで舌が少し麻痺していたのかもしれません。
禁酒してから味に対して一層敏感になり、スープもよりあっさりした味わいに変えました」
赤嶺さんはとても几帳面なひとだ。
家屋や庭は隅々まで手入れが行き届き、広々としたキッチンも一点のくもりもなく磨き上げられている。
「このひとは潔癖性だから。毎日掃除せずにはいられない性質(たち)なんですよ」と、奥さんはあきらめたように笑う。
その几帳面さが、赤嶺さんの作る沖縄そばにもありありと表れている。
細やかな心配りが各所に発揮されている沖縄そば屋。
味の良さと居心地の良さ、そのどちらにも満足するに違いない。
写真・文 中井 雅代
松そば
南風原町宮平87
098-889-4929
open 火 木 土
11:30ごろ~15:00ごろ
close 月 水 金 日
2013.07.20
2013.07.19
お店にたつ日、休日の日。
着るものを選ぶ際、その日の空の色を見てあれとあれが候補と洋服を思い浮かべる。
次にその日のタスクとの兼ね合い、無条件に着たい服等を順に思い浮かべながら、ちょうど中央にくる洋服をチョイス。
たまに無視して今日は大掃除の日だったのにロング丈のワンピースなんて日もありますけど。
日々、身にまとうお洋服のセレクトはいつも迷うし考えるそんな私ですが、アクセサリー類は別で大体決まっている。
神戸発のブランドHuddleのものだ。
全て地金から「曲げる「叩く」「焼く」「削る」「磨く」といった原始的な技法にこだわり、1点1点ハンドメイドで製作しているHuddle(ハドル)のアクセサリーは、トレジュールでも人気商品の一つ。
毎年1、2回新作を発表するほか、ブライダルや個別オーダーでの対応もされています。
ネックレスにピアス、バングル、リング等、いろいろありますが、今回は届いたばかりのリング類をご紹介。
私自身ほぼいつもつけているのがこちらのリング。
とても気に入っている、まるでパートナーのような自慢のリング達。
大体この3種類のリングを組み合わせてつけています。
向かって左の四角いリングが優秀で、はめたときに隣指への違和感がないのが驚く。
これは実際に試してみないとわからない発見だったりします。
中央の4連リングは男性にも人気です。
角リング
洋服がシンプルで、あまり出すぎない程度に手元に主張を持ちせたいなと考える日。
一番手前の飾りのある、一つでも主役級のリングを中心に、4連のうちのシンプルなシルバーのリング、それに角リングの3本をあわせてバランスを楽しみます。
お店に立つ日も、休日の外出時にも大体中指に、薬指におさまっている。
うっかりつけ忘れるとその日中落ち着かないくらい。
そんなわけで私の手元は大体同じ。
コーヒーを頂く時、パソコンのキーボードをたたくとき、書面に目を通すとき、何かを取ろうと伸ばしたとき等、さまざまシーンの視線の先に、しっくりくるアイテムのあることのなんと落ち着くことよ。
身につけることでいつもの自分でいられるような。
相棒ってこういうことかもしれないな。
普段はあまり意識しない言葉だけど、心地よいものへは自然と手がのびるし、のばしたくなるということを改めて実感させられる。
Huddle Centennial http://www.cente.net
※ハドルはショップ名、センテニアルは社名です。
現在店頭には今回ご紹介しました販売用のリング以外に、センテニアルの新作のアクセサリーサンプルが届いています。
「どんなアクセサリー何だろう」と、興味をもたれた方がいらっしゃいましたら是非お尋ねください。週末まではお店にございます。どうぞお声掛けくださいね。
写真・文 占部 由佳理(tous les jours店主)
tous les jours(トレジュール)
那覇市首里儀保町2-19
098-882-3850
open:水~土
12:00-18:00
(変更あり。毎月の営業日をブログでお知らせしております。)
blog:http://touslesjours.ti-da.net
関連記事:ひとつ先のくらしを提案するtous les jours(トレジュール)