NAKAI

仕事のお守り
ミシマ社編 ¥1300(税)/OMAR BOOKS

 

GWが明けて、また仕事だなあと鬱々とした気分になっている人へぜひご紹介したいのがミシマ社さんの新刊、『仕事のお守り』。

 

白地に金文字で箔押しされ、本物のお守りのような装いをしたコンパクトな佇まい。
働く人のためのお守りとしての本、とは面白いことを考えるなあと表紙を捲ると、巻かれた帯の内側にくすっと笑える仕掛けも。

 

その軽やかな印象とは異なり、中身はしっかりと重みのある言葉がたくさん詰まっている。
目次を見ると一章ごとに、「パワーをもらう―勇気と元気」「不安一掃―厄除け」「仕事をする体力―身体安全」「本番で力が発揮する―集中と脱力」「伝える、受けとる―メディア力」「ひとにやさしく―包容力と温かさ」他等、項目が立てられ、ミシマ社が関わってきた著者の方々の言葉や、古今東西の名著から数々の金言が収められている。

 

この本が手元に届いたその日、夜眠る前に読み始めたらこれがまずかった。
含蓄ある言葉に刺激されて眠気が飛んでしまい眠れなくなってしまった。

 

まず最初のインパクトのある言葉。

 

「社会のためになんか役立たんでよろしゅうございます」

 

今年で83歳になられる在野の思想家・渡辺京二さんという方の言葉。

 

よく、役に立つ人になりなさい、あるいは仕事をしなさい、と言われるけれど、こうきっぱり言い切られると、ちょっと考えてしまう。それってどういうこと?
でもこの渡辺さんの歩んできた道を辿ると納得。

 

渡辺さんはまたこうも言う。「無理に自分を作り変えようとしない」

 

いわゆる自己啓発的な本で似たようなことが書かれているけれど、前者と他著の間には明白な違いがあるのもこの本を読むとよく分かる。

 

言葉は不思議で同じことを言うときでも、誰の口から発せられたかで全然違うものになってしまう。
自らの経験から出てきた言葉には嘘がないから信用できる。
信頼に値することば。
どうせ本を読むならそういう言葉にふれていたい。

 

働く人が何かに行き詰ったときに、その傍らにそっとあるといいような金言たちが集められた本。
内田樹、山田ズーニー、平川克美、山口ミルコ、上阪徹、木村俊介など仕事の達人たちやビジネス書の腕利き書店員の方々、総勢16名による「行きづまったときに効く」エッセイも収録。

 

 
読み終わると、心が楽しいと感じるままに仕事をやっていていいんだ、という安心感に満たされると同時に、また楽しく働こうと明るい気持ちが湧いてきた。

 

新緑の季節に新しい風を吹き込むような本著。
おすすめです!

 

OMAR BOOKS 川端明美

 


OMAR BOOKS(オマーブックス)
北中城村島袋309 1F tel.098-933-2585
open:14:00~20:00/close:月
駐車場有り
blog:http://omar.exblog.jp

 

NAKAI

おとなりや

 

旬の県産野菜をたっぷり使ったタルティーヌ。
沖縄の日差しを浴びてすくすくと育った野菜の、勢いのある風味が楽しめる。
素材にもこだわり、卵や乳製品を使っていないので菜食主義の人々からも人気だ。

 

素材にこだわっているのはタルティーヌだけではない。

 

おとなりや

 

ナポリピッツァのようにふんわりとした生地が特徴的なフォカッチャ。
その生地にも卵や乳製品を使っておらず、エキストラバージンオリーブオイルを練りこんでいる。

 

小麦は北海道産と九州産、黒糖は宮古産、野菜はほとんどが沖縄県産で、そうでなければ九州産か北海道産のものを使う。

 

パンの生地からは、優しい小麦のかおりが漂う。
食感はもっちりとしてやわらかく、決して硬くはない。
「天然酵母を使っている」と知らされていなければ、その事実に気づく人は少ないだろう。
天然酵母を使って焼いたパンの多くから感じられる、独特の酸味もない。

 

「酸味や硬い食感が嫌いなわけではないんです」
と、店主の齊藤さんは言う。

 

「自分用に買うときにはハード系のパンを選ぶこともありますし、酸味のある酵母パンも好きです。
ただ、自分の店ではできるだけクセのないパンを作るように心がけているんです。
その理由は子どもにも食べてほしいから。
天然酵母を使っても、作り方次第で酸味を押さえることはできるんですよ」

 

おとなりや

 

おとなりや

 

おとなりや

 

おとなりや

 

おとなりや
レーズン酵母に自家製ハイビスカスエキスを混ぜて使っている。

 

「当店のパンはすべて天然酵母で焼いていますが、まずはレーズン酵母と粉を混ぜて1日置くんです。
そして新しい粉に種を加えて混ぜ、また1日置く。これを1週間続けます。
発酵が進むと中性から徐々に酸性へと近づいていき、旨味と共に酸味も増していくのですが、その発酵度合いをどれくらいで止めるかによって酸味の程度も変えることができるのです」

 

天然酵母の発酵度合いにまでしっかりこだわる齊藤さんだが、追求しているのは、パンのおいしさだけではない。

 

「心がけているのは、店に並ぶパンを見て『面白い!』と思ってもらえること。
そのためにできるだけ沢山の種類を並べるようにしています。
店のドアを開けた瞬間に色んなパンが目に入ると、それだけでテンションが上がるでしょう? そういうのが結構大事だと思うんですよ。

 

それにパンって毎日のように食べるひともいますし、週に何度も来店くださる方もいます。それなのにラインナップがいつも同じだとつまらないじゃないですか。お客様には味だけでなく、品揃えの豊富さでも喜んで頂きたいんです」

 

おとなりや

 

おとなりや

 

おとなりや

 

おとなりや

 

クロワッサン、サンド、バゲット、デニッシュ、ベーグル、ライ麦パン、クリームパン、フランスパンにフォカッチャ…。
齊藤さんが言う通り、店内には確かに色とりどりの野菜や果物に彩られたパンや、シンプルながら美しい佇まいのパンが所狭しと並び、食べる前から視覚的な幸せに包まれる。

 

また、陳列棚の向こう側にはオープンスタイルのキッチンが設置され、齊藤さんがパンを作る姿を間近に見ることもできる。

 

「味覚だけでなく、五感でパンを味わってほしいという想いからこのスタイルにしました」

 

おとなりや

 

おとなりや

 

齊藤さんは手際よく生地を成形し、その上に新鮮な野菜を乗せていく。やがて大型のオーブンが開き、中からこんがりと焼けたパンが出てくると、香ばしい匂いが店内に立ちこめる。
おとなりやではパンを購入する前から、様々な角度でパンを楽しめるのだ。

 

26歳で店をオープンさせ、2013年で30歳を迎える若き店主・齊藤さんの風貌は、一見するとパン屋というよりスポーツ選手のように見える。

 

「昔はボクサーを目指していました」
という言葉にも、意外性を感じるどころか「やはり」と得心した。

 

おとなりや

 

おとなりや

 

料理好きな両親のもとで育ち、齊藤さん自身も幼いころから日常的に料理を楽しんでいた。

 

「小学生のころからパンやお菓子を作っていました。兄も姉も料理好きだったし、家族みな料理することが当たり前という家だったんです。
作る工程も楽しいし、完成品を両親や友達にあげたときに喜んでもらえるのも嬉しかったんですね」

 

自宅で料理を楽しむ傍ら、齊藤さんはスポーツにも夢中になった。
柔道やラグビーに熱心に取り組み、高校に進学するとボクシングを始めた。

 

「かなり勇ましい部活動をずっとしていましたが、その間もパンは焼いてましたよ(笑)。さすがに友達にあげたりすることは少なくなりましたが、完全に趣味になってました。
高校卒業後はボクサーを目指して宜野湾のジムに通い始めたのですが、生活費を稼ぐため、空いている時間に読谷のパン屋でアルバイトをするようになりました」

 

パン屋でのアルバイトの後にボクシングの練習に励むという生活が2年ほど続いたが、忙しさのあまりそのどちらに専念することも難しくなり、齊藤さんは自身の進路について疑問を抱くようになった。

 

「これで良いのかな? と感じ始めたので、一旦どちらとも距離を置いてみようと考えました。そうすれば本当に大事なことが見えてくるんじゃないかな、と思ったんです」

 

パン屋を辞め、ジムを退会し、齊藤さんはしばらく沖縄を離れてみることにした。20歳のときだった。
沖縄から北海道までを自転車で走破、その後はバックパッカーとして半年ほどアジア諸国をまわった。

 

「帰国後『職探ししないとな』と考えたとき、やたら目についたのがパン屋だったんです。やっぱり自分はパンを作りたいんだと深く実感しました」

 

北海道で修業を始めた齊藤さんは、さまざまな規模やスタイルのパン屋で修業を積んだ。

 

「最初に働いた所がすごく有名なパン屋で、高い技術を備えた職人も沢山いたので、パンの持つ可能性や未来をワーッ!と見せられた感じでした」

 

パン作りに没頭する日々が始まった。

 

23歳で結婚した齊藤さんは、24歳のときに誕生した第一子がきっかけで、パン職人として転機を迎えることになる。

 

おとなりや

 

「息子には小麦、卵、乳製品のアレルギーがあることがわかったんです。
それはつまり、これまで僕が作ってきたパンを食べさせることができないということを意味しました。
このままでは、自分の店を持っても我が子にパンを食べさせてやれない。それがものすごくショックで。

 

そもそも、僕らが子どもの頃にはアレルギーを持っている子というのは少数派でしたが、今では割とよく聞かれるようになりました。それはなぜか? もともとの原因は? 疑問に感じて色々調べて行くうちに、それまで気にしていなかった添加物や農薬のことが気になるようになったんです。

 

息子が生まれるまではずっと、安全性より技術を優先してパン作りを学んでしましたが、パンの作り方も価値観も180度変わりました。
子どもは父親のことをしっかりと見ているだろうし、息子に胸を張って食べさせられるようなちゃんとしたものを作りたいと思うようになったんです」

 

26歳で沖縄に戻り自身の店をオープンさせた齊藤さんは、パンに使うソースや具材もできあいのものは使わず、すべて一から手作りするようになった。

 

「既製品だとどうしても不必要なものが入ってしまいます。『自分の子どもに食べさせられるパン』。それが店で出すパンの基準になりました」

 

素材へのこだわりは強いが、齊藤さんの姿勢にストイックという表現はふさわしくない。

 

「ヴィーガンやベジタリアン対応のパンもありますが、そこまでこだわっていないものもあります。
全員が全員おいしいというパンを作るのは難しいけれど、10人に9人くらいはおいしいと言ってもらえるものを作りたいし、なにより子どもたちに喜んでほしいですから」

 

おとなりや
店では物々交換も行っている。無農薬野菜などを持ち込めば、パンを交換することができる。「こうして取り引きできる農家さんが増えたら、いずれマルシェなども開きたいと思っています」

 

おとなりや

 

齊藤さんの想いはしっかり客に届いていると言えるだろう。
店には子連れ客が多い。
そして、食に対するこだわりを感じさせる人ばかりでなく、ただ純粋に「おいしいパンを買いに来た」という雰囲気の人が多いように感じた。

 

齊藤さんにとって、パンがからだに優しいということは大前提なのではないだろうか。
素材にこだわるのは当然のこと。それを満たした上で9割の人がおいしいと感じるパンを作る、しかも様々な種類で。

 

それはとても難しいことのように思えるし、実際に難しいことなのだろう。
しかし、おとなりやではそれが見事に実現されている。
どれでもいい、おとなりやのパンを1つ食べればそのことを実感するはずだ。

 

写真・文 中井 雅代

 

おとなりや
おとなりや
読谷村字瀬名波633-2
TEL/FAX

 

098-958-6260
open 10:00〜18:30頃まで(売り切れ次第閉店)
close 木・日

 

 

 

 

 

 

 

 

ブログ http://asian1026.blog51.fc2.com

 

 

NAKAI

田芋パイ

 

「田芋パイとじーまーむ豆腐、どちらも私にとって手みやげの定番。ココ! っていうお気に入りの店があるんだ。
田いもパイは中城に工場がある「なかとみ」、ジーマーミ豆腐は浦添に本店がある「トミ家」のが最高においしい!

 

でも、近所のコープやサンエーでも買えるのがありがたい」

 

たーんむ

 

「田いもパイは1個120円。
スーパーでは個包装のものや3個セットのパックも販売してるよ」

 

 

たーんむ

 

「おうちで食べるときは、トースターで3分くらい焼くと揚げたてみたいになるのでおすすめ」

 

たーんむ

 

「ん〜。おいしい!
なかとみの田いもパイは、甘さ控えめの餡がめちゃくちゃおいしい。
沖縄は田いもの産地だけど、きれいな湧き水が出る田んぼでしか育たないんだって。
そのおいしい田いもを使って、なかとみは無添加・手作りにこだわってるんだよ。
手作りだけあって、パイもサクサクで香ばしい。

 

うちは家族みんなここの田いもパイが大好き。
実家にもよく置いてあるし、4歳の息子も一個じゃ足りずにおかわりするほど。

 

誰にあげても喜ばれるから、会社にも差し入れとして持って行ったくらい。
みんな喜んでくれたよー」

 

たーんむ
たーんむ

 

「お庭もきれいで癒されるよ。
値段はスーパーと変わらないんだけど、なかとみファンとしては一度は揚げたてを味わってほしい!」

 

たーんむ

 

「1個から販売してくれるよ」

 

たーんむ

 

「お夕飯にお呼ばれしたときなんかには、トミ家のジーマーミ豆腐がお土産にぴったり。
夕飯の一品にもなるでしょ。
一番の特徴は、ねっとり・もちもちとした食感!」

 

たーんむ

 

「ほら、こんなに粘り気がある!」

 

たーんむ

 

「なめらかでつるつるっとしてておいしいんだよね。
それにタレも絶品。甘さと辛さのバランスがちょうどいいんだ。

 

オーソドックスな白いジーマーミだけじゃなく、他の色もおいしいよ。
黄色はウッチン、紫は紅芋。
あとね、黒い黒糖味もあるんだよ。
タレじゃなくて黒砂糖の粉がついてて、デザート感覚で食べられる。
白3個セットは315円、3色セットは357円、お手頃でしょ。

 

浦添の本店が実家の近くだからよく行くんだけど、そこで買うとスタンプを押してもらえるの。
スタンプがたまったらジーマーミ豆腐がもらえるんだよね。

 

トミ家も手作りにこだわっていて、水には電気分解した還元水を使ってるんだって。
ジーマーミ豆腐作りの工程で一番大変な煮込み作業も、機械じゃなく手で混ぜてるんだよ」

 

たーんむ

 

「ジーマーミ豆腐も田いもパイも、どちらも息子の好物だよ」

 

たーんむ

 

「豆腐を食べたら必ず…」

 

たーんむ

 

「一滴残らずタレも飲み干す!(笑)」

 

たーんむ

 

「毎回、2個はぺろりだね。
実家に帰るときもよく買って帰るし、自宅で夕飯の一品にすることも多い。
考えてみたら、本当にしょっちゅう食べてるな!

 

そういう沖縄の一般家庭の食卓に馴染んでいる食べ物こそ、沖縄土産として相応しいんじゃないかな?」

 

写真 中井雅代

 

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オカシノニワ

 

定員4名、少人数制のお菓子教室「オカシノニワ」では、主宰の山口こず恵先生が作ったものを試食し、自身が作ったケーキは丸ごと持ち帰ることができる。

 

この日作ったのは「抹茶と大納言のスフレロール」。
スフレ仕立てのやわらかなスポンジ生地で、純正生クリームを使用した濃厚クリームをロールし、北海道産の大納言小豆をトッピング。
甘さは控えめ、抹茶の風味が濃厚な大人のケーキだ。

 

「抹茶のほろ苦さが最高!」
「小豆もホクホクですね」

 

と、試食でも大好評。
自身で作ったものを誰にあげるかという話題にも花が咲く。

 

「半分は家族に、半分は主人の実家に持って行こうかな」
「えー! 優しいお嫁さん。私は独り占めしちゃいたい…(笑) でも、今回は職場かな」

 

毎月10日、その月に作るケーキと教室開講日がブログで告知されるやいなや、あっという間に定員に達してしまうことも多いお菓子教室は、山口さんの自宅を開放して行われている。

 

「お菓子作り初心者の方でも、気軽に参加できる教室ですよ」
という言葉に、お菓子作りの経験がほとんどない私でもできるのだろうか? と期待感が高まった。

 

オカシノニワ
お菓子作りを始める前に、15分ほどかけて材料と手順をしっかり確認。工程で気をつけることも細かく伝える。

 

オカシノニワ
オカシノニワ
抹茶風味のクレームシャンティ(生クリームを泡立てたもの)の下準備。あら熱をとったら冷蔵庫に入れ、冷やしておく。

 

オカシノニワ

 

天板に敷く紙を用意する。 
ここで取り出したのが子ども用のらくがき帳だ。

 

「製菓材料品店には専用の紙が売っていますが、100均でも売っているB4サイズのらくがき帳の用紙二枚を重ねて作ることもできます」

 

この時重要なのは紙質で、クッキングシートはあまり適さないと言う。

 

「パウンドケーキやロールケーキを作る時には、余分な水分を吸収してくれる『わら半紙』などが最適。だかららくがき帳がいいんです。
水分を吸わないクッキングシートだと、仕上がりが変わってしまいます」

 

天板に沿って紙を折るときは、1ミリほど内側に折る。

 

「そうすると隙間なく綺麗に天板に入ります」

 

オカシノニワ

 

ロール生地を作る。
ボウルに卵黄と上白糖を合わせて泡立てるのだが、上白糖を使うのにも理由がある。

 

「上白糖だと生地がしっとりと色よく仕上がるんですよ。
きび糖などでも作れますが、仕上がりの色合いはどうしてもくすんでしまいます。

 

卵黄と砂糖を一つのボウルに合わせたら、すぐに手を動かして混ぜ合わせましょう。
砂糖は卵の水分を吸う性質を持っているので、手早く泡立てないと卵黄がダマになって残ることがあるんです。
泡立て器は高速にセットして、一気に泡立てます」

 

 

 

工程だけでなく、なぜそうしなければならないのか理由まで説明するのが山口さん流。
一つ一つの作業の理由が明確なら、初心者が自宅で一人おさらいするときにも、細かな注意点までしっかりと思い出せる。

 

オカシノニワ

 

卵黄と砂糖の泡立て具合の目安は、生地を持ち上げて平仮名の「の」の字を書いたとき、すぐに消えずにしばらく残るようになるまで。

 

「すぐに消えてしまうようでは泡立て方が足りない証拠。再度泡立てましょう」

 

適度に泡立ったら、ここで一手間。
ハンドミキサーに残った生地もしっかりと指でぬぐいとる。
それをボウルの縁につけると汚くなるので、次に使う器材・ゴムべらに移す。

 

「そのゴムべらでさっと全体を混ぜ合わせます。
卵黄は乾燥しやすいのでボウルの内側に飛び散った生地から固まっていくんです。すると良い生地になりません。
全体的に混ぜ合わせてから次の工程に移ります」

 

オカシノニワ

 

卵白と上白糖を合わせ、メレンゲを作る。

 

「卵白は大きく分けると、サラリとした『水様卵白』ともったりとした『濃厚卵白』から成ります。
そのまま砂糖を入れると、水様卵白と混ざりやすく濃厚卵白とは混ざりにくいので、砂糖を入れる前に卵白だけを簡単に泡立て、ほぐしておきましょう。
全体的に泡立ったところで砂糖を加えます」

 

卵白と砂糖が均一に混ざるよう一旦手でかき混ぜてから、泡立て器を使う。

 

「メレンゲは、作るお菓子の種類によって砂糖を入れるタイミングや量が変わりますが、今日は優しくふんわりとしたメレンゲを作ります。

 

泡立て器を持ち上げて横に二度振ったとき、二本のラインが重なるのが目安。
先ほどの卵黄は泡立てすぎてもあまり問題はありませんが、メレンゲは泡立て過ぎると目がつまってしまうので気をつけて」

 

 

泡立て具合も手の感触ではなく、見てわかる目安を教えてくれるのがありがたい。

 

オカシノニワ

 

最後にざっと手でかき混ぜる。

 

「ハンドミキサーだとどうしてもムラができるので、必ず手を使ってかき混ぜて。

 

ここでは、先ほどのようにミキサーについた生地を指でぬぐってはだめ。潰れた気泡を戻しいれてしまいます。
ボウルの縁にトントンと打ち付けて落とすくらいでOK」

 

オカシノニワ
メレンゲに卵黄生地を加えて混ぜ合わせる。「泡をつぶさないようにゴムべらを使って」 

 

オカシノニワ

 

 
ふるっておいた薄力粉と抹茶を入れ、しっかりと混ぜる。

 

「ここが今日のポイントの一つ。中心から外側に向かって手を返すように、リズミカルに混ぜてね。
卵黄の黄色と抹茶の緑が混ざる様子が綺麗でしょう? この瞬間が私好きなの。
粉っぽさがなくなってからさらに80〜100回ほど混ぜます」

 

混ぜ終わりを告げるのは、生地にでてくる「艶」だ。

 

「最初はマットな色合いなんだけど、徐々に薄力粉のグルテンの効果が発揮されて艶が出てくるんです。
今日作る生地は薄力粉の量が少ないので、しっかりと混ぜてください。

 

生地の一カ所を見つめて混ぜると、艶が出てきたのがはっきりとわかりますよ」

 

オカシノニワ
はっきりと見てとれるほど艶が出てくる。

 

オカシノニワ

 

「温めておいたバターと牛乳に、生地の一部を流し入れます。これを『犠牲生地』と呼びます。
しっかり混ぜたらボウルに戻して再度混ぜましょう。
バターと牛乳は底にたまりやすいので、下から混ぜ返すようにして。
これで生地の完成! さぁ、型に流し込みます」

 

オカシノニワ

 

オカシノニワ
真ん中から四つ角に向かってヘラを動かし、型の隅まで生地を行き渡らせる。

 

オカシノニワ
ゴムベラを寝かすようにして表面をならし、全体の厚みをそろえる。

 

オカシノニワ

 

天板を持ち上げ、20センチほどの高さから1〜2度テーブルに落とす。

 

「こうすることで中の空気が抜けるんです」

 

210度に予熱しておいたオーブンで15分焼く。

 

オカシノニワ
15分経ったら天板を引き出し、生地の表面に手を当てる。シュワッとする感じがなければ完成。 

 

オカシノニワ
生地の中の熱をとるために天板を再度持ち上げ、テーブルに1〜2度落とす。立ち上がり部分の用紙ははがしておく 

 

生地のあら熱がとれるのを待つ間、ここまでの工程を受講生が実習する。
最初の説明で一度、山口さんが作りながらもう一度注意点をしっかりと伝えているので、受講生はみなスムーズに工程を進めていく。

 

「初心者向けに開講しているお菓子教室ですので、できるだけ材料や素材をシンプルにし、工程もわかりやすくするよう心がけています」

 

 

オカシノニワ

 

オカシノニワ
「手の返し方はこんな感じ」少人数制なので一人一人に細かく指導することができる。

 

山口さんの教室では、使用する原材料にもこだわっている。

 

「小麦粉・卵・牛乳・バター・生クリームなど、原材料は安心できるものを選んでいます。
またコアントローのようなリキュール類など、普段使わないような材料は最小限に押さえています。
例えばショートケーキのスポンジなどは、生地が焼き上がったら一般的にはシロップを塗布するのですが私は使いません。生地のやわらかさやクリームの味わいを引き立てたいからという理由もありますし、工程を一つ省くことでより気軽に作れるようにするという目的もあります。
材料や工程をシンプルにすることで、素材そのものの味わいが引き立つお菓子になるんです」

 

「手作りに勝るものはない」と断言する山口さんは、幼い頃からお菓子作りが大好きだったという。

 

オカシノニワ

 

「小学生のときにはすでに、お菓子屋さんになりたいと公言していましたね。
母と4人姉妹の女ばかりで育ったので、よく妹と一緒に本を見ながら作っていました。当時使っていた本が今でも残ってますよ。雑誌『non-no』の付録(笑)そういうのを見ながらバナナケーキやチョコケーキなんかを焼き、お友達にあげるのが好きだったんです。喜ぶ顔を見るのが嬉しかったんですね」

 

高校卒業後、沖縄県内の調理師学校へと進学した。

 

「その頃の夢は、『おいしいおやつが作れるお母さんになること』。
でも、当時は製菓の専門学校が県内になかったんです。県外に出ることはできなかったので、西洋料理の授業で洋菓子を作れるかな?と思い、調理師学校への進学を決めました」

 

しかし実際は、お菓子を作る授業は数少なかったと言う。

 

「授業があまり楽しくなくて休みがちでした。不良受講生だったと言えるかもしれません(笑)。
だから、当時の先生に最近ごあいさつにうかがったときはびっくりしていましたよ。『おまえがこの道に進むとは!』って(笑)」

 

学業と平行し、山口さんは県内のホテルで働き出した。

 

オカシノニワ

 

オカシノニワ
受講生の分のスポンジが焼けたら、クレームシャンティの続きを作る。先ほどのように、まずは山口さんが手本を見せる。

 

「学校を卒業したら厨房で…と考えていたのですが、作ることよりも接客の方が楽しくなって。また、調理の世界の厳しさを間近で見ることができ、『自分には無理だ』と。
それで調理をあきらめ、料飲部門というサービスの仕事に就きました」

 

卒業後もそのまま同じホテルで働き、計8〜9年の経験を積んだ。

 

「でも、料飲部門にずっと勤めていると最終的にはマネージメントの仕事になっていくんですよね。経営とか経理の仕事で、表にも出ることが少なくなって。
そこで、『あれ? 私がやりたかった仕事ってこういうのじゃない気がする』と気づいて」

 

他の世界も見てみようとホテルを退職し、広告代理店に就職したのが26歳の時だった。

 

「広告代理店って様々な業種の方と仕事ができるんです。それがすごく楽しかったですね」

 

総務と企画の部署で働き、妊娠・出産を機に退職した。
専業主婦となり育児に専念していたが、娘が二歳のときに転機が訪れた。

 

オカシノニワ
最初に作って冷やしておいた抹茶ペーストに生クリームを加え、固めに混ぜ合わせる

 

オカシノニワ
生地をひっくり返し、端の方からゆっくりと紙をはがす。

 

オカシノニワ
巻きはじめの部分にクリームを乗せて伸ばす。「パレットナイフに人差し指をしっかりそえると伸ばしやすくなります」ナイフについたクリームは、ボウルのふちでこそぎ取って集めると塗りやすくなる。

 

オカシノニワ
生地の半分程度の面積に小豆をのせていく。

 

「自宅を開放してお菓子教室を開いている人がいると聞いて。それが、mon chouchou(モンシュシュ)のあけみさんでした。(関連記事:オーダーメイドのケーキ、一口で魅了される焼き菓子。「大事」が伝わるお菓子店。
それまではお菓子教室ってちょっと敷居が高いというイメージがあったんです。入会金を払って、大人数で受講する感じ。
だから、『個人で教室が開けるんだ!面白い!』とすぐに興味がわきましたし、私もお菓子を作りながら色んな方とお話をするのが好きだったので、こういうカタチだったら私もできるかも、と」

 

本格的に製菓を学ぶために、辻製菓専門学校の通信教育を受け始めた。
大阪と東京での実習を経て、4年前に自宅でのお菓子教室を開講した。

 

オカシノニワ
苦手な人が多いという、ロールケーキの巻きの工程。「今日のビッグイベントですね。手前の生地をぴっと折ります。ここが芯になります」

 

オカシノニワ
左手で紙を押さえ、右手で紙の手前部分の中心を持つ。「ぐるぐるっと、ロールケーキに少し圧をかけながら上に抜ける感じで巻いていきます」

 

オカシノニワ
ひっくり返して「巻き締め」をする。紙の上から定規で押していくと、ロール部分がきゅきゅっと締まっていく。

 

オカシノニワ
端にクリームを塗り、冷蔵庫の中でしばらくなじませる。

 

教室を始めてすぐに、これが自分の求めていた働き方だと実感したと言う。

 

「私が作ったお菓子を食べた人においしいと感じてもらうことが、私にとって最大の喜びではないんです。
それよりも、一緒に作った受講生が『家族においしいと言ってもらった』とか『職場に持って行ったら好評だった』と喜んでもらうほうが嬉しい。そうやって皆さんの笑顔を見られるのが一番の喜びなんです。
自分のお菓子を作るのではなく、皆さんのお菓子作りと、皆さんの周りに笑顔が生まれるのをお手伝いできることが幸せなんです。

 

ホテルで働いていたときはいつも違和感がありました。厨房って客席から遠く離れた奥の方にあるので、調理しているとお客様の様子がほとんど見えないんですよ。それがなんだか寂しくて。
でもこうしてカタチを変えることで、自分の求める調理との関わり方を実現できたように思います」

 

オカシノニワ
中央部分のみ避けて粉砂糖を振る。

 

オカシノニワ
丸口を使ってクリームを絞り出す。「丸みをつけるのがポイントです」

 

オカシノニワ
小豆を乗せ、仕上げにもう一度粉砂糖を振って完成。

 

オカシノニワ

 

また、オカシノニワでは子連れでの受講も受け付けている。

 

「アトリエ内にスペースを設け、小さなお子さんと同じ空間にいながらお菓子作りをすることができます。
小さい子どもがいるから外に出られない、好きなことができないというのは寂しい。育児の時期だからこそ、お菓子作りを楽しんで気晴らししていただきたいという気持ちもあります。
色々とご了承いただかなければならないこともありますが、できるだけご協力したいと考えています」

 

オカシノニワ
お待ちかねの試食タイム。

 

オカシノニワ
バレンタインのテーマだった「チョココーヒーのスティックチーズケーキ」も一緒に。

 

オカシノニワ

 

オカシノニワ
「ん〜、抹茶が濃厚でおいしい!」

 

「うちで作ったケーキがきっかけで、結ばれたご縁もあるんですよ!」
山口さんが嬉しそうに話してくれたのは、オカシノニワで「苺のシャルロット」を作った女性の話。

 

オカシノニワ
「頑張るケーキ」と山口さんが名付ける、少し難易度の高い「苺のシャルロット」

 

その女性は持ち帰り用のケーキを男友達に贈った。すると、そのケーキを食べた男性のご両親が「こんな美味しいケーキをつくれるなんて。ぜひ彼女にしなさい!」と強く勧めたのだそう。
それがきっかけとなって交際がスタート、やがて結婚に至り、次に教室にやってきた時には姓が変わっていたのだと言う。

 

「先生に教わったケーキがきっかけで結婚しました!と報告してくれて。すごく驚きましたし嬉しかったですね。
その日に作った苺のタルトも、『お姑さんに持って行かなきゃ』と嬉しそうに話していました」

 

その女性に限らず、オカシノニワで作られた持ち帰り用のケーキは、受講生にとって大切な人の元へと必ず届けられる。
大好きな人に贈りたくなる、そんなケーキなのだ。

 

子どもの誕生日ケーキを作りたいと、個人レッスンを申し込んだ父親もいたと言う。

 

「お父様手製のケーキだなんて、お子さんはどれだけ喜んだことでしょう。目に浮かびますよね。
どんなケーキを作るときも、愛情に勝る調味料はありません。
大切な方を想ってケーキを作るお手伝いをさせていただきます」 

 

オカシノニワ

 

「今が本当に楽しいし幸せ。
だから、細く長く続けたいです」

 

山口さんは満面の笑みでそう話してくれた。

 

 

お菓子好きな女性たちが集まるのだろうから、教室で作り、試食し、たのしくおしゃべりすることが最大の目的なのだろうと私は考えていた。
実際、それももちろん楽しい。
でも、オカシノニワは教室を出たあとに本当の幸せがやってくる。
家族、友人、同僚、恋人…。
大切な人が、自分の作ったお菓子で笑顔になる瞬間を見られるのだから。

 

さらに自宅でも、山口さんが理由まで明確に説明してくれた工程の一つ一つを思い出し、ケーキを作ってみる。そしてまた、新たな笑顔が生まれる。

 

授業が終わったあとにもに幸せが続く、そんなお菓子教室なのだ。

 

 

オカシノニワ
那覇市首里鳥堀町
(詳しい住所はおたずねください)

 

blog http://kojuru.ti-da.net

 

NAKAI

in our time
アーネスト・ヘミングェイ著 柴田元幸・訳   ヴィレッジブックス ¥1050
 
「鍛金」という言葉があるそうだ。私もつい最近知ったのですが。
金属工芸の専門用語で金属の素材をたたいて形を作ることを言う。
そうすると金属の密が高くなり、硬く、軽く、そして時の経過に強くなるそうだ。
  
ヘミングウェイの文章を読むと、その「鍛金」の結果、生まれたような印象を受ける。
慎重に選ばれた言葉をたたいて、のばして彼が理想とする最もいい形で整えたもの。
余計なものは一切加えず、極限までそぎ落とされた文章というようなことを訳者も
言っている。
 
彼の代表作にあげられる長編『日はまた昇る』『武器よさらば』などで、挫折したことのある人にはぜひ短編を読むことをおすすめしたい。
紹介する本作「in our times」は短編の中でも超短編ともいえるような、ごく短い作品が集められている。
 
主な舞台はヨーロッパ。彼の作品にはスペインの闘牛がモチーフとしてよく出てくる。
どのエピソードも1ページから2ページの枠に収まる量。
脈絡がないようで、なんだか分からないまま読んでいるうちに癖になってしまう。
  
ひとつひとつの場面の鮮やかさが強烈に残る。
カメラのフラッシュをまともに浴びたときに残る残像のようだ。
純度の高い言葉の列は、いくつもの「状況」のコレクションのようでもある。
 
集中して読めば一時間もかからない。きっと読み通して伝わってくるものがきっとあるはず。
結末はどれも宙に放り出され、読む人に委ねられる。その自由さが心地よい。
  
本書はまた装丁も粋な佇まい。
最初のページを開くと落ち着いた風合いの表紙とは打って変わって鮮やかな赤。
表紙カバーを外してもマル。
文字の組み方まで洗練されていて、大人のための良書といってもいい。
訳者の解説を読むと、タイトルの「in our times」が小文字であるのにも意味が込められている。
  
また金工の話に戻るけれど、金属は時間が経つとどうしても酸化して色が変わってくる。
その鈍い色合いもまた捨てがたい魅力がある。
  
時代の荒波をくぐり抜けてきたヘミングウェイの普遍的な作品群。
これらの言葉たちも、同じような輝きを今でも放っている。

OMAR BOOKS 川端明美




OMAR BOOKS(オマーブックス)
北中城村島袋309 1F tel.098-933-2585
open:14:00~20:00/close:月
駐車場有り
blog:http://omar.exblog.jp
 
☆OMAR BOOKS では、5月5日までイベントを行っています
 
『たくら虫の えdeほん展 Vol.1』@OMAR BOOKS
 

 
日時:2013年4月30日(火)~5月5日(日・こどもの日)
 
時間:14:00~20:00
 
場所:OMAR BOOKS
※駐車場が少ないのでなるべく乗り合わせでお願いします

アートユニット「たくら虫」が、オリジナルストーリーの絵本を作りました。
個性的なキャラクターによる怪しくて不思議な世界をお楽しみ下さい!
 
 
 
http://takuramusi.com/edehon2013/
 

NAKAI

オーケストラ!
 
これはおすすめです。
 
とにかく良くできた映画でした。
 
アンドレは、最初掃除のおじさんかと思いきや、実はかつてのカリスマ指揮者。
 
オーケストラ!
 
結構よれよれなんだけど、後半タキシードきるとパリッとするのね。
 
オーケストラ!
 
 
オーケストラの珍道中も笑えるし、アンドレの奥さんのイリーナが抜群にいい。
 
オーケストラ!
 
 
ジャケを演じたメラニー・ロランは、最近いろいろ出てるけど、美しいし、この映画にはぴったり。
 
オーケストラ!
 
私が好きだったのはアンドレの親友のサーシャ。
何かと頼りになるし、優しい。
 
オーケストラ!
 
最後のオーケストラのステージは圧巻。
 
オーケストラ!
 
アンドレとジャケの関係も、想像していた単純なものではなくもっと複雑だった。
このあたりもよかった。

感動しました。しかも笑えるし。

KEE

 

 
<ストーリー>
かつてボリショイ交響楽団の天才指揮者だったアンドレ(アレクセイ・グシュコフ)は、今はさえない劇場清掃員として働いていた。ある日、出演できなくなった楽団の代わりのオーケストラを探しているというFAXを目にした彼は、とんでもないことを思いつく。それは、いまや落ちぶれてしまったかつての仲間を集めて楽団を結成し、コンサートに出場するというものだった。
 
<キャスト>
アレクセイ・グシュコフ
メラニー・ロラン
フランソワ・ベルレアン
ミュウ=ミュウ

 
☆DVDでどうぞ
オーケストラ!
 

NAKAI

soi
 
ぴりりとした辛味はあるものの、素材のあじわいが優しい「やんばる鶏の無農薬ハーブ&チリ炒め目玉焼き添え」。
プレートメニューにはたっぷりのサラダと野菜の副菜2品が付く。
 
「野菜をもりもり食べて頂きたいので、たっぷり使うようにしています。副菜を何にするかは、買い付け先の市場に出ている野菜を見てから決めていますね。
素材はできる限り沖縄産のものを使うようにしていて、それが入手できない場合は九州以南で生産されたものを選んでいます。スパイスはすべてオーガニックです」
 
soi のメニューはどれも、フレッシュな野菜の持つ力強さを感じる。
今帰仁産のしょうがで作ったシロップのソーダ割りも逸品。きりっとしたしょうがの風味が爽やかで、スパイシーな料理との相性も抜群だ。
 
soi
 
沖縄産のハーブとオーガニックスパイスをふんだんに使った「自家製ドライトマトとチキンのココナッツカレー」は、タイ風の味わい。
 
「からだに優しいカレーが好きなので、乳製品や小麦粉を使わないようにしています。そうすると胃に負担がかからないんですよ。
また、タイカレーって一般的には唐辛子や生姜、にんにくなどさまざまな香辛料をベースにペーストを作るのですが、当店ではお子さんやお年寄りでも楽しめるように唐辛子を別にしてペーストを作っています。そうすれば辛さを調節することができますから」
 
具沢山なカレースープの中には、ドライトマト、玉ねぎ、いんげん、人参、茄子、からしな…。風味はタイ風だが、使われているのはどれも身近な野菜ばかりだ。
 
「せっかく沖縄にいるのだし、沖縄にはおいしい野菜や食材がたくさんありますからそれを生かしたくて」
 
soi
 
カフェとしては珍しく、オープンは朝9時と早い。
「モーニング・フォー」と称し、「桜島鶏のフォー」「トムヤムクンのフォー」を準備している。
 
じんわりからだに染みわたるスープは、つるりとしたフォーの麺にマッチ。しっかりと煮込まれた桜島鶏はぷるぷるっとした食感がたまらない。
このままなら子どもでも食べられるし、香辛料やレモンを加えれば本場の味に一層近づく。
 
那覇の朝、壺屋のカフェ、ハーブたっぷりのエスニック料理。
 
なんと魅力的な組み合わせだろう。
 
「ベトナムの一日は屋台で食べるフォーから始まるんです。当店も、ベトナム屋台のように朝ご飯をさっと食べられる場所にしたくて。
僕らが旅行で沖縄を訪れたとき、早く出かけたいのに朝ご飯を食べられる店をなかなか見つけられなくて大変だったこともあり、朝から店を開けています。
また、コーヒーも気軽に飲めるお値段にでご用意していますよ」
 
soi
 
自慢のコーヒーは、栄町の「potohoto」の豆を使っている。(関連記事:コーヒーが苦手だった店主、自家焙煎豆の美味しさの基準は「甘さ」
 
「ホットコーヒーのフレンチプレスは、カップ約2杯分の量が楽しめて300円。せっかくおいしいコーヒーだから、がぶがぶ飲んでほしくてたっぷりお出ししています」
 
朝のうちからおいしいコーヒーをゆっくり堪能できる、個人営業のカフェを見つけるのは難しい。
一日の始まりすっきりと迎えたいひとにも、旅先でゆったりとモーニングコーヒーを味わいたい人にも嬉しいサービスだ。

また、コーヒーや酵素スカッシュ、ミントシロップソーダなどのドリンクだけでなく、食事メニューもすべてテイクアウトすることができる。
 
「天気が良い日はここで買ってそのへんの公園で食べるのも素敵ですよね。
お外で食べるのって気持ちいいですから」
 
近隣ならばデリバリーも可能だと言う。
 
「具体的にどこまでと決まっているわけではありませんが、お気軽にご相談ください」
 
soi
 
soi
 
スイーツメニューも卵、乳製品を使用せずに作っている。
「3種のアイスとショコラケーキのパフェ」は食べごたえ十分だが、ボリュームたっぷりのスイーツを食べたあとに感じやすい胃もたれをまったく感じない。
 
「当店のメニューには卵や乳製品などアレルギー物質を含む食品を極力使わないようにしています。
使用しているものは、その旨をメニューに表記しています」
 
食材にこだわっている理由の一つは、オーナーである尚(たかし)さん、由佳さん夫妻の子ども達がそれぞれアレルギーを持っていることにある。
 
「乳製品と卵のアレルギーがあるんです。最初は小麦もダメで。
なかなか外の食事を食べられないから、徐々に外食が遠のいて自分たちですべて作るようになりました。
私たちはもともとカレーが好きだったのですが、市販のルーだと子どもが食べられないものが色々と入っている。だから、『カレーも自分たちで作ろう!』と」
 
自作のカレーは子ども達に大好評。
すぐに好物の一つになった。
 
「胃への負担が大きい小麦を使わないことで、優しい味わいのカレーができました。
僕らも年とともに胃が弱くなってきたこともあり、子どもと一緒に小麦粉抜きのカレーを食べています(笑)」
 
カレーは昔から好きだったというが、最初からカレーメインのカフェをやりたいと思っていたわけではなかったと言う。
 
soi
「バナナとカカオニブのスムージー」。カカオニブとは、カカオ豆を発酵、乾燥、焙煎後に粉砕したもの。豆の栄養が豊富に含まれている。
 
soi
 
沖縄移住前は東京で暮らしていた尚さん。
学生時代からずっと飲食店でアルバイトをしていたと言う。
 
「最初はバーテンみたいなことから始めて。
仕事が楽しかったので和食をベースにイタリアンなど様々な店で働きました」
 
大学卒業後もしばらくは飲食店に勤め、10年ほどの経験を積んだ。
 
「でも、飲食以外の世界も見た方がいいんじゃないかなと思うようになって。
それに飲食の仕事はすごく楽しいんですけど、肉体労働だし勤務時間も長い。
そういう生活は家庭と両立できないだろうと感じていたので、結婚を機に生活スタイルを変えることにしたんです。
それで思い切って正反対の世界に身を置いてみることにしました」
 
通信系の会社に就職し、サラリーマンとして働き始めた。
その間、昔から好きだった沖縄には幾度となく旅行で訪れた。
 
「毎年のように来ていましたね。『いつか住みたいな』とは思っていたけれど全然具体的ではなくて、遠い未来のこと、老後の夢くらいに思っていました」
 
就職して6年目、思わぬ転機が訪れた。
 
「父が事故で急に亡くなったんです。
当たり前のことかもしれないけれど『人っていつ死ぬかわからない』ということを深く実感しました。
それに、サラリーマンの仕事に対してもずっと疑問は抱き続けていたんです。やりがいもあるし安定もしている。頑張って勤めていれば地位も収入も上がっていくだろうけれど、これが俺の一生やるべき仕事なのかな? と。
そんな矢先に父が亡くなり、『やっぱりやりたいことをやりたい。沖縄行く!お店やる!』と決意しました」
 
一方、妻の由佳さんも7年ほど飲食業界で働いていたが、出産を機に専業主婦となっていた。
 
「私も飲食の仕事が好きでした。接客も好きで人と話すのが楽しかったんです。
でも産後は人と話す機会がめっきり減ってしまって。なんとなく寂しく感じる日々が続いていました。
だから、主人から移住の件を相談されたときは『全然いいよ!』と即答。
たとえ失敗したとしても、夫婦二人で働けばどうにかなると思ったんです」
 
リスクについてはあまり考えなかったという二人。
 
「考え出したらキリがないし、そうやってるといつまでも動けないから」
 
そうして東京から沖縄へ。
2013年に念願の店をオープンさせた。
 
soi
 
店のメニューの決め手になったのはやはり、沖縄の野菜が持つ強い魅力だったと言う。
 
「旅行で沖縄を訪れていたときも子ども達はアレルギーがありましたから、リゾートホテルではなくウィークリーマンションを借り、毎日沖縄の野菜を買い込んで、自分たちで料理を作って食べていました。
旅先でその土地のものを使ってご飯を作るのって楽しいじゃないですか。
小さい子どもがいると、アレルギーのことがなくても外食は気を遣うし」
 
料理をしているうちに、沖縄の野菜に適したメニューが浮かぶようになった。
 
「タイカレーのようなメニューを出すお店はどうかな?と。
沖縄のにんにくや生姜はパワーがあって新鮮。野菜だけではなく沖縄は肉もおいしい。それでカレーにしようと。
でも、特にカレーだけにこだわっているわけではないので、今後もメニューは増やしていきたいと考えています」
 
soi
 
店内には広々とした座敷スペースも完備、おもちゃや絵本なども置かれている。
 
「沖縄に訪れたときに、子連れで気兼ねなく過ごせるカフェを見つけることがなかなかできなかったので、店をやるときにはキッズスペースは絶対作りたかったんです。
だからうち、子ども大歓迎!(笑)
店の奥にはおむつを替えるスペースもありますし、ベッドも置いてあります。
 
旅行者が朝からおいしいご飯を食べられるように。また、お子さん連れでものんびりとお食事を楽しんでいただけるように心がけています。
そして、子どもたちの要望にもできるだけ応えたいですね。
以前、『チャーハン食べたい!』という子が来て、ちょうど店も落ち着いていたので『いいよ、作っちゃうよ』って(笑)」
 
soi
豆乳アイスのコーヒーフロート
 
soi
 
今後はモーニングメニューも強化したいと言う。
「雑炊もやりたいんですよね。なるべくお安い値段でお出しできたらな、と」
 
雑貨販売も予定している。
「雑貨や真鍮のアクセサリー、エプロンやキッズ用のタイパンツなどが並ぶ予定です」
 
 
沖縄食材のトリコになったふたりが始めた店「soi」。
ここでいただけるメニューはどれもエスニックな香りをまといながらも、沖縄で暮らす私たちにとって身近な食材がしっかりと主張していて、その味わいには親近感を抱かずにはいられない。
タイカレーにこれまで縁のなかった人も、soi の味ならすんなりと受けいれ、楽しむことができるだろう。
soi を訪れる人々の年齢層は幅広く、年配の方がもあいの場として使っているのも納得できる。

 
沖縄食材は、エスニック料理とこんなにも相性がいいのだ。
 

写真・文 中井 雅代

 
soi
soi
那覇市壺屋1-7-18
open 9:00~18:00
close 日・月・祝
テイクアウト、配達承ります。
 
twitter https://twitter.com/soi_naha
Facebook http://www.facebook.com/soi.naha
Instagram @soi_naha

 


 

NAKAI

たそかれ珈琲

 

濃いめに淹れられたコーヒーは、一口飲むとほんのりと酸味を感じる。
こくりと喉を通ると、ほどよい苦みが少しだけ口に広がった。

 

店主の久高さんがコーヒーを淹れる際に使うのは布フィルターだ。
これまで様々な淹れ方を試し、最も自分好みの味が出せたのが布フィルターだと言う。

 

「丸みのある味わいになるんです。
でも、コーヒーの味わいを左右しているのはフィルターの種類だけではありません。うちは焙煎器も独特なので、その影響も大きいと思います」

 

たそかれ珈琲

 

久高さんが愛用しているのは手回しの焙煎器。サイズは小さめだと言う。

 

「一度に焙煎できるのは300〜400g程度。1回15分ほどかかり、1日2〜4回ぐるぐる回して焙煎しています」

 

少量しか焙煎できないため、どうしても手間がかかる。
しかしその分、じっくりと豆に手をかけることもできる。

 

「豆の袋を開けた時と焙煎する直前、焙煎後と合計3回ハンドピック(出来のよくない豆を取り除く作業)をしています。大型焙煎器ですと一度に何キロもさばきますから、ここまで細かく豆の状態をチェックするのは難しいと思います」

 

メニューによって、使用する豆の種類も焙煎具合も異なる。

 

「ホットコーヒーに使用している豆はエチオピア産。酸味を残し、華やかな味わいになるよう焙煎しています。
カプチーノにも使うエスプレッソは万人受けするブラジル産の豆で。酸味や苦みが少なく飲みやすいのですが、ミルクに負けないよう、しっかりとコクが出るように焙煎します」

 

メニュー表には、「苦めの珈琲」というストレートなネーミングのものも。

 

「タンザニア産の豆を使用しています。
一般的に深煎りすることは少なく、大抵の方が酸味を残すよう焙煎する豆なのですが、僕は酸味を消すためにぎりぎりまで深煎りします。だから苦みが強い。でも、これがたまらない!とおっしゃるコーヒー好きな方も多いんですよ」

 

淹れ方も、その都度こまかく調整している。

 

たそかれ珈琲

 

「気温や湿度によっても変わりますが、使用するお湯の温度は82〜83度。
当店のコーヒーを飲んだ方から『豆の甘みを感じる』と言っていただくことがよくあるのですが、それにはお湯の温度が大きく関わっています。
熱すぎるお湯で淹れると、苦みや雑味が出やすいんです」

 

使用する豆の量にもこだわりが。

 

「コーヒースプーン一杯分が約10グラムなのですが、僕は一杯のコーヒーを淹れるのに23〜25グラムの豆を使います。
コーヒーは、ギリギリまで抽出してしまうとフィルターに残っているえぐみが出てきてしまう。
ですから、豆を多めに使っておいしいところだけを抽出しているんです」

 

たそかれ珈琲
見事なラテアートを一瞬で完成させた後、一言。「もう一つお作りしても良いですか? お見せしたデザインがあって」

 

たそかれ珈琲
いかにも楽しそうに描いてくれたジョン・レノン。「絵心ないのバレちゃいました?(笑)こんな僕が描くラテアートだから、ちょっとヘンテコなのも面白いかなって」

 

3回も行うハンドピックにしても、手回しで行う焙煎にしても、久高さんはおいしいコーヒーを作るために手間をかけることが何ら苦にならないようだ。
火のついたコンロの上で延々と焙煎器を回し続けるのは、本人をして「夏は地獄」と言わしめるほど大変な作業だが、それさえも「つらくはない」と話す。

 

「手間をかければその分ちゃんとおいしくなる。それが楽しいんですよ。
それに、おいしければおいしいほどお客様は喜んでくださいます。そのときの嬉しさがあるから、全然つらいとは思わないですね」

 

生来のマメな性格が、食事やスイーツのメニューを作る際も反映されている。

 

たそかれ珈琲

 

たそかれ珈琲はコーヒー以外のメニューも豊富で、材料も自家製にこだわって作られている。

 

サンドイッチに用いるパンも、ホシノ天然酵母を使って久高さんが自ら焼いている。

 

「夜に仕込んで朝発酵させています。ですから休みの日でも夜は店に来て、酵母菌の面倒をみているんですよ(笑)」

 

豆のペーストの舌触りに、レタスのシャキッとした食感がよく合う「豆のペーストとトマトのサンドイッチ」。
じっくりと味わうと、豆の優しい風味に様々なスパイスの味わいが混じっているのがわかる。

 

「豆はセロリ・玉ねぎ・ローリエ・クミンと一緒に炊いて香り付けをしています」

 

たそかれ珈琲

 

サンドイッチの脇にそっと添えてあるピクルスにさえ、ローリエ、クミン、クローブ、鷹の爪、りんご酢、はちみつ、きび砂糖といった数々のハーブやスパイス、自然素材の調味料が使われている。

 

ジャムバタートーストやクロックマダムなどに使う、ジャムやあんこ、ハムやソースもすべて手作りだ。

 

あんこを手作り?
店で使うあんこと聞けば無意識に業務用の袋に入ったものを想像してしまい、思わず訊き返してしまった。

 

「ええ、もちろん手作りしています。あんこを炊くのって楽しいですよ」

 

たそかれ珈琲
「自家製あんこバタートースト」。パンの素朴な味わいに、甘さ控えめのあんこがぴったり。

 

たそかれ珈琲

 

また、白砂糖や膨張剤は使わず、無添加を心がけている。

 

「白砂糖はあまり体に良くないと以前から聞いていたので。
膨張剤については最近聞いたんです。聞いてしまったからには使うわけにはいかず…(笑)」
ケーキを膨らませる際は、膨張剤の代わりに泡立てた卵白を使っていると言う。

 

からだへの優しさを重視して作られてはいるものの、チョコケーキはしっとりとしてコクがあり、その味わいは本格的だ。

 

「今まで食べた中でおいしいと感じたものにどうやったら近づけるかなと、色々な素材やレシピを試し、試作を繰り返すんです。あれ入れて、これ入れて、やっぱりこれは引いて…という風に。
そうやって少しずつ理想の味に近づいていく過程も好きで」

 

今の味に満足しきっていないところも久高さんらしい。

 

「常に改良を重ねています。お客様には自分が感動したものだけをお出ししたいので、よりおいしいレシピにたどり着いたらすぐにメニューも変えます」

 

若い頃から飲食の仕事に携わっていたのだろうと思いきや、学生時代は音響について学んでいたと久高さんは話す。

 

たそかれ珈琲
自家製パンの切れ端はおいしいラスクへ。「サンドイッチを作るときに残ってしまう耳がもったいないなーと思って作ってみたら、意外にも人気商品に(笑)」

 

たそかれ珈琲

 

久高さんの実家では、音楽好きな父親が流すジャズがいつも流れていたと言う。

 

「息子たちが音楽をやることを奨励する、ちょっと変わった家でした。普通だったら『バンドなんてしてないで将来のことをしっかり考えろ』とか言いそうなものですが、僕は高校時代バンドでドラムを担当していましたし、2人の兄達もそれぞれみなバンド活動をしていました。

 

高校卒業後は東京にある音響の専門学校へ通うことにしました。演奏側でなくとも、何らかの形で音楽に携わる仕事に就きたかったんです」

 

専門学校に入学してしばらく経った頃、久高さんは妙な違和感を覚えるようになった。それまで無心に聴いていた音楽が、いつの間にか色あせて聴こえるようになっていたのだ。

 

「音楽が仕事になってしまうと分析しながら聴かないといけなくなるんです。それで急につまらなくなって。
そうではなく、僕は純粋に音楽を楽しみたいと思ったんです」

 

音楽を楽しみながら仕事をするにはどうすればいいか? 考えた末に久高さんは、飲食店という「箱」を作り、そこで好きな音楽を好きなだけ聴きながら仕事をすればいいのではないかと思いついた。

 

カフェでアルバイトをしながら、調理師免許とソムリエの資格も取得。
8年間の東京生活を終えて沖縄に戻ったあとは、兄の営むイタリアンレストランでバリスタ兼ソムリエとして働いた。
3年半の経験を積んだ後、久茂地川のほとりに自身の店をオープンさせた。
 

 

たそかれ珈琲

 

「一般的なコーヒーショップ」を想定して入店した人はきっと、店内でしばらく過ごした後に店の持つ意外な特性に気づき、驚くと同時ににんまりしてしまうだろう。
その一つが先述の「食事メニューの豊富さ」だが、他にもある。

 

店内には、プロの録音スタジオや映画館でも使用されている、世界有数のスピーカーブランド「JBL」のスピーカーが設置されている。
音響について専門的に学んでいた久高さんならではのセレクトだ。

 

上質なスピーカーから流れるのはジャズ。久高さんが父親から譲り受けたレコードが、ターンテーブルの上で回っている。
川沿いを走る車の音が気にならないほど、重厚で濃密なサウンドがさりげなく店内に響く。

 

「音楽関係の仕事をなさっているお客様からも『音が上等!』と褒めていただいたことがあります」

 

 

もう一つの意外な特性は、アルコールメニューの豊富さだ。

 

たそかれ珈琲
カルーアリキュールにコーヒー豆を漬け込んで。

 

ソムリエの資格を取得していることからもわかるように、久高さんは無類の酒好きでもある。
店を始める際は、バーにするかコーヒーショップにするかで悩んだほど。

 

「昔、母が喫茶店を営んでいたことがあるんです。
父からは音楽の影響を受け、母からは店の方向性について影響を受けたと言えるかもしれません」

 

人気メニューの一つ「珈琲屋のカルアミルク」に使用するカルーアリキュールには、自家焙煎した珈琲豆を漬け込んでいる。珈琲屋ならではの味わいが楽しめる一品だ。

 

「昼間から飲んでいかれるお客さんもいますよ」

 

ワインについても、メニューには「グラスワイン」としか書かれていないが、種類は豊富にとりそろえている。 
「気になったらぜひお尋ねください。色々とお勧めできると思います」

 

にこやかにそう言う久高さんは、客とのコミュニケーションにも積極的だ。

 

たそかれ珈琲

 

「どんなことでも話しかけて頂けたら嬉しいですね。ご要望にはできるだけお応えしたいですし」

 

要望を受けて、メニューにないものを提供したこともあると言う。

 

「ご年配のお客様に『甘いコーヒーはないの?』と訊かれて。
メニューにはないのですが、店にある材料で作れるモカをお出ししました」

 

食事やつまみのメニューでも、臨機応変に対応している。

 

「たとえばサンドイッチに使う自家製ハムですが、酒のおつまみとして単品でお出しすることもできます。サンドイッチの中身も、苦手なものを引いたり好みのものを足したりと、できるだけご希望に沿いたいと考えています」

 

 

店内奥に設置された本棚には、文庫本がぎっしりとつまっている。
「ご自由に手に取ってご覧ください。コーヒーを味わいながらの読書も大歓迎です」

 

上質なスピーカーから流れるジャズに、大量の本。アルコール類は昼間でもオーダーすることができ、つまみの相談にも乗る。
まるで長居してくださいと言っているようなものでは?

 

「長居というのは店を気に入ってくださった証拠。店主としては嬉しいことです。
『時間を買いにきた』という気分で、ゆっくりくつろいで頂けたら嬉しいです」

 

たそかれ珈琲

 

今後は、店内の白壁を展示スペースとしても活用したいという。

 

「芸大に通う学生さんや卒業生、仕事をしながらアート活動をしている人たちの作品を展示できたらと考えています。周りにもそういう活動をしている友人が多いので、発表の場として無料で貸し出す予定。写真展なんかもいいですよね」

 

コーヒー教室やラテアート教室も開きたいと話す久高さん。
オープン間もない店で、これから新たなアイディアが次々と実現されていくのだろう。

 

たそかれ珈琲

 

紙フィルターと違い、布フィルターでコーヒーを淹れている間は両手が塞がってしまう。
布フィルターはカップに置くことができず、ずっと手で持っていなければならないからだ。

 

「だからコーヒーを淹れている間は他のことが何もできないんですよ」と久高さんは苦笑する。
 

 

しかしこの店で、過ぎ行く時間について気を揉む人はいないだろう。
ジャズに耳を澄ませたり、店内に飾ってあるレコードジャケットのデザインを楽しんだり、久高さんとおしゃべりしたり、窓のを外をぼんやりとながめたりしているうちにあっという間に時は過ぎる。

 

「歩いていたらコーヒーの匂いがするからさ」と言いながら、店に入ってきた人がいたと言う。
その人の気持ちはよくわかる。
歩いていて、ふらりと立寄りたくなる雰囲気の店なのだ。

 

入るときは気軽に。
そして一歩足を踏み入れれば、こだわりのコーヒーをお供に濃密な時間が過ごせる。
そんな珈琲店なのだ。

 

 

たそかれ珈琲
たそかれ珈琲
那覇市牧志1-14-3 1F
open 13:00~21:00
close 毎月10、20、30、31日
mail leisurelyhp@gmail.com 
blog http://d.hatena.ne.jp/kudakayuzo

 

 

NAKAI

げたぱり
立松和平・編 岩波書店 ¥700 (税別)
 
「よく眠った。ぼんやりとよく寝た。寝ている事は、実に快い。」
林芙美子のパリ滞在中の章を開く。四月三日付けの文章はこう始まる。
ここだけではない。
 
今回ご紹介するこの紀行集の表題作「下駄で歩いた巴里」の冒頭も、初めてパリに着いたその日から一週間眠り続ける。林芙美子さんは、よく眠る人だ。
  
外国の憧れの地に、たった一人でいても、日本で生活しているのと同じように彼女は何も変わらない。おそらくどこにいても彼女は彼女のままだろう。
  
この本は、『放浪記』などで知られ昭和を代表する女性作家・林芙美子の国内・外問わず旅した記録を20編が収められた一冊。彼女が旅好きだったということは意外と知られていないのではないだろうか。
当時、まだ外国へ行くのもめずらしかった時代。しかも女性一人で。
 
『放浪記』がベストセラーになったおかげで手にした資金で、念願の旅に出る。
中国からシベリアを経由して渡欧。
パリの街には約8ヶ月も滞在している。この本の中の日記を読むと面白い。
その頃の彼女の生活の様子が事細かに綴られている。
 
巴里のキャフェのコヒーの美味しさ、三日月パンを毎朝食べる様子など。
下駄を履いて、着物姿でパリの街を闊歩する林さんにはきっと好奇の視線が注がれたはず。
 
でもそんなことはおかまいなしに、自分の思うがままに、自由にその生活を楽しむ彼女の姿勢に
憧れる。
彼女の旅には、よくありがちなあまり浮かれた様子が見受けられない。
もちろん、目にするもの、聞こえてくる音、出会う人たちとの交流が生き生きと描かれるのだけれど、同時に冷静な、ストレンジャーとしての自覚が常にあって消えることがない。
だからこそ、彼女の旅の記録には奥行きが感じられる。
  
旅は本来、非日常を楽しむ行為。でも彼女の場合、日常が旅先でも日常のまま続いている。
どこにいてもフラットで生活の基本姿勢が変わらない。それが彼女の魅力だと私は思う。
  
あまり恵まれなかった子ども時代を送った林芙美子。幼いふみこには大人になった自分がパリの街を歩いているなどとは思いもしなかったに違いない。
彼女の作品を読むと、人生はたくさんの「未知」の可能性を秘めている、ということを考える。
 
もしかしたら、同じことの繰返しのような毎日にも、いつだって「未知」のものが隠れている。
そう思うと、今見ている世界がちょっと変わって見えてきませんか?
 

OMAR BOOKS 川端明美




OMAR BOOKS(オマーブックス)
北中城村島袋309 1F tel.098-933-2585
open:14:00~20:00/close:月
駐車場有り
blog:http://omar.exblog.jp
 

NAKAI

舟を編む
 
面白かった。
 
三浦しをん、石井監督ときて、このメンバーだったら間違いないと思っていたけど、思った以上に松田龍平 が良い。
 
舟を編む
 
うまい役者なんだなあ、と感心。
 
おどおど具合が半端じゃない。
 
この人、こんな役もできるのか、という奥行の深さをみせつけられました。
 
記事を書いたりしているのに、私は日本語にまったく自信がない。
たぶん、日本人の平均の国語力をはるかに下回っているのではないか?とすら思う。
 
まず、漢字がかけない。
 
ただ、言語に関して興味はかなりあるので、辞書をつくる仕事なんて憧れる。
今や、言葉はみずものである。
日本語に関しては特にそれを顕著に感じる。
 
長い年月をかけて辞書をつくりあげ、改定に改定を重ねていく。
なんて建設的な職業なんだ。
 
劇中、下宿のおばさんタケさんが「みっちゃんは、若いうちに一生の仕事をみつけただけでも幸せだ」みたいなことをいうんだけど、本当にそう思う。
これに一生をかけたい、と思えるものにめぐりあえるのだろうか?と疑問さえ感じている。
 
宮崎あおいちゃん、かわいいなあ。
かわいいだけじゃなく、なんか大人になったのね、、、としみじみ。
 
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辞書をつくるチーム、みんな素敵。
 
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私は、契約社員の佐々木さん(伊佐山ひろ子)が結構ツボ。
仕事ができる契約社員、とにかくさばける。
いつまでも働いているが、ずっと契約社員なんだろうか・・・・
 
言葉って面白いよね。
 
淡々として面白い、いい映画です。おすすめします。
 
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KEE

 

 
<ストーリー>
玄武書房に勤務する馬締光也(松田龍平)は職場の営業部では変人扱いされていたが、言葉に対する並外れた感性を見込まれ辞書編集部に配属される。新しい辞書「大渡海」の編さんに従事するのは、現代語に強いチャラ男・西岡正志(オダギリジョー)など個性の強いメンツばかり。仲間と共に20数万語に及ぶ言葉の海と格闘するある日、馬締は下宿の大家の孫娘・林香具矢(宮崎あおい)に一目ぼれし……。
 
<キャスト>
馬締光也:松田龍平
林香具矢:宮崎あおい
西岡正志:オダギリジョー
岸辺みどり:黒木華
タケ:渡辺美佐子
三好麗美:池脇千鶴
村越局長:鶴見辰吾
佐々木薫:伊佐山ひろ子
松本千恵:八千草薫
荒木公平:小林薫
松本朋佑:加藤剛
宮本慎一郎:宇野祥平
江川:森岡龍
戸川:又吉直樹
小林:斎藤嘉樹
編集者:波岡一喜
ポスターの女優:麻生久美子
 
<沖縄での上映劇場>
シネマQ
098-951-0011
那覇市おもろまち4-4-9 那覇メインプレイス2F
HP http://www.startheaters.jp/cinemasq
 

NAKAI

いがらしろみ
 
「ろみさんのジャムはね、ジャムっていうよりなんだか果物っぽいの。フレッシュなの。それだけでデザートになるくらい存在感があるの!」
 
いがらしろみさんのスコーン&ジャム教室に参加した女性は、「romi-unie confiture(ロミ・ユニ コンフィチュール)」のおいしいジャムやお菓子が詰まった袋を両手に抱えながら、嬉しそうに話してくれた。
 
「ろみさんレシピってね、ひとつひとつのこだわりにちゃんと理由があるの。だから納得して実践できるんだよね」
 
例えば、ジャム作りに使う砂糖はグラニュー糖。
「グラニュー糖は主張し過ぎないので、果物の甘さがすっきりと引き立つからだよ」
 
入れる砂糖の量はすこし多めだ。
「最近は砂糖控えめなレシピも多いけれど、あまり少なくすると果物の味が引き立たないし、瑞々しさも出ないんだって」
 
長時間弱火で煮詰めるのではなく、強火で15~20分一気に加熱する。
「長時間煮詰めちゃうと果物のフレッシュ感が失われてしまうそう。お話してる間にできちゃったよ」
 
そして何より彼女が興奮して話してくれたのは、ジャムを入れる瓶を煮沸消毒する必要がないということ!
「自分でもよくジャムを作ってるんだけど、容器を煮沸するのが億劫で億劫で…。ろみさん曰く、瓶は綺麗に洗って乾燥させておき、できたてのアツアツジャムを入れれば大丈夫とのこと。蓋をして一分間逆さまにしておけば蓋の部分も殺菌できる。
これ聞いてもう、目の前がぱ〜〜〜っと明るくなっちゃったよ(笑)」
 
いがらしろみ
 
いがらしろみ
 
「おいしくなること」をゴールとして作られたろみさんのお菓子やジャム。
それを口にして笑顔にならない人はきっといないだろう。
できることなら友だちや家族、自分の大切な人と、素敵な場所でその時間を共有したい。そして、みんなの笑顔を写真に残せたなら…。
 
そんな想いをすべて実現してしまう、素敵なイベントが開かれた。
 
みやんち
 
みやんち
 
お菓子研究家・いがらしろみさんが、アフタヌーンティーセットをプロデュース。それを食べるおいしい笑顔を、写真家・中川正子さんが写真におさめるという、なんとも贅沢なイベント。開催場所は東海岸を望む沖縄市のカフェ「みやんち」だ。
 

みやんち
 
今回ろみさんが「おいしい笑顔を生み出すように」と用意したのは、romi-unie confiture のジャム3種類とクロテッドクリーム(イギリスでスコーンとともに食されるクリーム)、ろみさんレシピで作ったスコーン、「みやんち」で提供されているミートカラソバ、絶品の豆乳ドレッシングのやんばる野菜のサラダと盛りだくさんのセット。
 
ジャムは、スコーンとの相性を考えて甘さ控えめにつくられたParis(フランボワーズのジャム キルシュの香り)、Le Var(いちじくのジャム オーガニック)、Bretagne(キャラメルと発酵バターとゲラントの塩)など10種類の中から選べる贅沢さ。
 
「どんな味なんだろう?」「どれもおいしそうで迷う〜!」という声もちらほら。
 
いがらしろみ
 
いがらしろみ
 
そして、販売用にもアニヴェルセール(いちごとフランボワーズ)、コント・ド・プランタン(いちごとミントと黒こしょう)、リュクス(アプリコットとバニラ)など、春の新作ジャムを10種類。
 
ろみさんのジャムは、素材の組み合わせがユニークなことも魅力のひとつ。
いちごとミントと黒こしょうなんて、一体どんな味わいなんだろう?
甘い? ピリ辛? それともスッキリ爽やか系?
想像がふくらむのです。
 
焼き菓子も、バターガレットにショートブレッド、メランジェを(焼き菓子は残りわずか!)。
 
こちらは29日までみやんちにて引き続き販売されるそうなので、まだの方はお早めに。
 
いがらしろみ
 
みやんち
 
家族と一緒においしいものを食べていたら、だれだって笑顔がこぼれてしまう。
そんな瞬間を「心を込め、被写体と心を合わせて」撮影するという中川さんが逃さずに捉える。
中川さんは不思議なくらいにするすると家族の輪の中に入り込んでいって、まるでその一員のように自分も笑顔になって、シャッターを切っていた。
 
みやんち
 
自身も一児の母である中川さんは、子どもたちとの接し方も自然で優しい。
カメラに興味津々な女の子が、撮影の最中にカメラの液晶をのぞき込もうとやって来た。
「ちょっと待っててね」と諭して脇によけて撮るのかと思いきや、ふわりと懐に引き寄せ、女の子を後ろから抱きすくめるようにしながらパシャパシャ。
 
みやんち
 
「写真って被写体だけを写しとるものではないと私は思うんです」と、中川さんは語る。
 
「被写体への思いや、撮るひとの感情、その瞬間に流れていた雰囲気、撮影するまでのプロセスごと私は閉じ込めたい。
だからこそ、本当においしいものを食べて生まれた本当の笑顔と、その時間を閉じ込めたかったんです。
 
おいしくないものを食べても『笑って〜』と言えば笑顔は作れます。でもそれはやっぱり、本当においしいものを食べたときの笑顔とは違うんですよね。
そういう意味でも、ろみちゃんのジャムやお菓子のおかげで素敵な笑顔がたくさん撮れたと思います。
 
それと、写真を口実に家族同士がいつもよりひっつける、っていうのもいいですよね。
小学生ともなるとちょっと反抗心が芽生え始めて『えー、俺はいいよ〜』なんて言う子も出てくるでしょ。本当はそんなことないんだよね、一緒に撮りたいんだよね。こういうイベントだと『しょうがないなー』なんて言いながらもひっついてくれる。そういうのって良いじゃない」
 
みやんち
 
みやんち
 
「今日のこの場所には、笑顔しかありませんでした」
イベントを企画した長岡文子さんのことばが、すべてをものがたっていたように思う。
 
「みやんち」のコーディネーターであり、THE BOOMのマネージャーを長年つとめ音楽業界で活躍している長岡文子さんにとっては、初めて試みる音楽以外のイベント。お菓子と写真という異なるものをひとつのイベントにまとめることができるか、不安もあったそうだ。でもそれは杞憂に終わったようだ。それぞれが見事に融合し、混ざり合い、たくさんの笑顔を生み出したのだから。
 
「みんな笑顔で本当によかったー」と話すろみさんの目にはうっすらと光るものが。それだけ、気持ちのこもったイベントだったに違いない。
 
みやんち
いがらしろみさん、中川正子さん、長岡文子さん(左から)
 
イベント終了後、どこかほっとした表情でおしゃべりをする3人はまるで姉妹のように仲睦まじい。
 
「沖縄にはずっとご縁がなかったんだけど、あやちゃん(長岡さん)のおかげで今年だけで5回も沖縄に来ちゃった(笑) 」
 
と嬉しそうなろみさん。
沖縄のお菓子に対する印象を、次のように続けた。
 
「沖縄ってアメリカナイズされたお菓子が多いでしょう? 市場に並ぶアップルパイの山を見てびっくりしちゃった! 沖縄と言えばサーターアンダーギーというイメージだったから。
個人的には Jimmy(ジミー)のスーパークッキーもおすすめ。あれ、おいしいのよね〜。私にとっては沖縄土産の定番、鎌倉のスタッフへよく買って帰ってるよ」
 
「沖縄の食べ物文化って独特で、すごく素敵だよね。今夜の夕飯は沖縄料理屋さん、押さえてあるよ」
と、長岡さんもにんまり。
 
そんな二人を微笑ましそうに見守っていた中川さんがぽつり。
「この二人のおいしいものに対する熱意はすごいのよ。 昨日だってね、ろみちゃんがわざわざ糸満のカステラかまぼこを買って来て…」
 
「そうそう、私『イナムドゥチ』作ったんですよ、初めて! それがすごくおいしくできちゃって」
と言うろみさんは、すっかり沖縄ライフを満喫している様子。
 
 
 
1月、4月と沖縄でのイベントは大好評のうちに終了、次は夏だ。
 
「沖縄の夏のフルーツを使ったジャムやお菓子を作りたいよね」
と、ろみさん。
 
「それいいね〜。話、詰めていかなきゃ!」
と、長岡さん。
 

ろみさんがうみだす「おいしいもの」が、どんな「しあわせ」のカタチを見せてくれるのか今からとても楽しみだ。
きっとまた、そこにはたくさんの笑顔があふれるのだろう。
次回の開催もお見逃しなく。
 
 
みやんち STUDIO&COFFEE

沖縄県沖縄市与儀1丁目29番22号
TEL:098-923-1382
営業時間:11時~17時(定休日・毎週火・水曜日)
駐車場10台
 

NAKAI

 
 
食べ物を口にする際、できるならこれを使いたいなと思うカトラリーがあります。
特に気にいっているのがフォーク。
美味しく果物やおやつを食べるのに欠かせない一つ。
6、7年前に購入した“SUNAO”と名前がついたカトラリーは、新潟県にある燕振興工業株式会社で製造販売されています。
 
 
SUNAO
果物は朝食に必ずとります。
 
 
「SUNAO」
新潟県にある燕振興工業株式会社で製造販売されています。
「SUNAO(スナオ)」という名前にはまっすぐゆえの、様々な環境や作用を受け入れる強さが込められています。
各アイテムが十分に個々の持ち場で力を発揮できるように、また、日本人の食卓や手の大きさに合うように考案されたカトラリーです。

 
 
SUNAO
 
 
デザインをされている graf の評判やグッドデザイン賞受賞しているということ、それに雑誌やインターネットでたびたび目にする口コミを頼りに、最終的には実物を見て「まずは使ってみないと」と夫婦2人分揃えました。
 
 
早速試してみたい。そうだアイスクリームを食べようと、まずはスプーンを使ってみました。
それまでカトラリーにこだわったことはありませんでしたが、使った瞬間から「あ、これはとてもいいかも」とピンときました。握った際に指が当たる持ち手部分の柔らかさとでも言いますか、手の中でのおさまりがいい。
上等なものだ。とても使いやすいし、口に運んだ時の感触もいい。
これまで使っていたものに持ちかえてみる。途端に違和感がはしる。
これはいい買い物をしたなと台所でほくそ笑んだ記憶があります。
使えば使うほど、どんどん好きになっていきました。
 
 
SUNAO
島にんじんの豆乳ポタージュ。すっかり気に入って食事の一品にこればかり食べています。(ボウル:長峰菜穂子)

 
 
使用感と同時に気になるのが見た目。大抵使いやすさを追求しすぎるとどうしてもデザインがやぼったくなるものですが、SUNAOはとてもシンプル。そぎ落とすことでうまれた美しさを感じます。
 
 
SUNAO
いつでもスタンバイを心がけています。(クロス:fog linen work・ALDIN)
 
 
コンセプトに挙げられているように、ディナーナイフ、フォーク、スプーン、ティースプーン、ケーキフォーク、アイスクリームスプーン、バタースプレーター等、日常で用いられる一通りのカトラリーが私たちの生活に合う大きさへと考えられている点もありがたい。
 
 
SUNAO
(皿:長峰菜穂子 クロス:ALDIN)
 
 
例えば、バタースプレーターはパンにバターをのばす以外にも、ケーキを食べるときのナイフ代わりに使うこともできます。
ディナーナイフを使うにはちょっと仰々しいかな。かといってフォークだけではちょっと頼りない。そういう時に添えても。
小ぶりなので、デザートフォークとのバランスも良くおさまりがいいです。
それにちょっと優雅な気分にもなれますよ。
 
 

 
 
4月。新緑の季節、各々の新しい生活の幕が開けたばかり。
身の回りを整えたり、はたまた環境の変化に追いつくことができず混乱のさなかにいたり。
単調な日、くじけそうになる日、とても嬉しいと感じる日、いろんな毎日があるだろう。
そんないずれの場合においても、食べることをやめないのが私たち。
食事に集中する時に気にいったカトラリーを用いるというささやかな贅沢。
幸福度をあげられるか否かは、自分次第ということだと思う。
 
写真・文 占部 由佳理(tous les jours店主)


 
tous les jours(トレジュール)
那覇市首里儀保町2-19
098-882-3850
open:水~土
12:00-18:00
(変更あり。毎月の営業日をブログでお知らせしております。)
blog:http://touslesjours.ti-da.net


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